UNHCRモザンビーク 本田 翠(ほんだ みどり)生計向上経済包摂担当官補インタビュー

難民の子どもの将来の選択肢を広げたい

公開日 : 2024-05-09

UNHCR (国連難民高等弁務官事務所) の難民援助活動をご支援くださり、ありがとうございます。UNHCRモザンビークで生計向上経済包摂担当官補*1をしております本田翠と申します。

【*1】生計向上経済包摂担当官補:Associate Livelihood and Economic Inclusion Officer

2023年6月よりUNHCRモザンビークのナンプラフィールド事務所で国連ボランティア*2として生計向上経済包摂担当官補の職務で主に難民の「職業訓練」プロジェクトを担当しています。

【*2】国連ボランティア:国連開発計画(UNDP)の下部組織として創設された国連ボランティア計画(UN VOLUNTEERS)は国連の人道支援・開発支援に各国からの人材を派遣しています。<https://unv.or.jp/whatwedo/

今でも忘れられない難民の少女

今から6年ほど前、私はケニアの首都ナイロビに赴任していました。当時UNHCRは難民の若者を対象にした民間企業へのインターンシップを募集しており、私は応募してきた難民の少女に話を聞きに地元NGOのスタッフと共に、ナイロビ市内にあるケニア最大のスラムを訪れました。

スラムに一歩足を踏み入れると、コンクリートのボロボロなアパートが密集していて、あたりには下水のような水が流れていたりごみが回収されていなかったりしていました。広さ2m×4mほどのコンクリートばりのアパートの小さな部屋に少女は継母とひっそりと暮らしていました。トタンの屋根で雨風はしのげますが、暑さ寒さの温度調節は難しかったと思います。

少女は16歳位。コンゴ民主共和国から避難してきたらしく、血のつながりのない継母と避難生活を送っていました。インターンシップに応募したきっかけを質問すると、少女は「母に迷惑かけたくないから働きたい」と涙を流しながら強く訴えました。故郷を離れ、知らない土地で避難生活を送る心細さ。自分の面倒を見てくれている継母にすら迷惑をかけられないという切迫感。この子はどれだけ張り詰めた気持ちで暮らしているのかと胸が痛くなりました。

日本の同年代の大半は高校生活を送り楽しいこともあるでしょう。でも難民の少女の現実は厳しい。息をひそめるように暮らし、一緒に暮らす保護者にも気を遣いながら毎日を過ごしていたあの少女のことが今も忘れられません。

武装集団による暴力や気候変動に苦しむモザンビーク

今赴任しているモザンビークの状況を少し説明させていただきます。

2017年以降、モザンビークは武装集団による暴力が激化し、70万人以上*3が国内で避難しています。またモザンビークは世界でもっとも気候変動の影響を受けている国のひとつで、2023年10月の調査によると2023年のサイクロンでは約18万4000人が避難しました。一方でモザンビークは約2万5000人*4の難民・庇護希望者を受け入れており、そのほとんどが数十年にわたる長期の避難生活を送っています。

【*3】【*4】参考:UNHCR Mozambique Operational Update January & February 2024
https://reporting.unhcr.org/mozambique-operational-update-7988

UNHCRは、武力紛争や自然災害により避難を余儀なくされているモザンビークの国内避難民に対して命を守る緊急支援を行うと同時に、避難生活が長期化している他国からの難民・庇護希望者に対しては自立につながる教育支援・生計支援などを実施しています。

モザンビークにおけるUNHCRの教育支援

ご存じでしょうか。難民の子どものおよそ5人に2人は小学校にすら通えていません。

学校に通うことは難民の子どもにとってターニングポイントとなります。教育は不安定な避難生活の中で正常な生活を送るための第一歩です。学校に行けない子どもは、武装集団への徴用、児童労働、性的搾取、児童婚などに直面するリスクが高くなります。UNHCRは難民の子どもに対する教育支援を重視しており、ここモザンビークでも教育支援に力を入れています。

モザンビークにおけるUNHCRの教育支援で最も大事なことは「いかに国の教育制度に難民の子どもを含めるか」ということ。モザンビークに避難している難民の子どもの大半は祖国に戻る、或いは第三国に定住する機会が殆どありません。当面モザンビークで避難生活を続けるしかないのです。難民の子どもにとってモザンビークの子どもと一緒に教育を受けることは極めて重要です。

実際、モザンビーク政府は難民・庇護希望者の子どもがモザンビークの子どもと一緒に教育を受けられるようにしてきました。モザンビークの子どもと同じく授業料も無料*5です。しかし授業料が無料であるにもかかわらず、多くの難民・庇護希望者の子どもは、学校に通うために必要なその他の費用(教材/制服/靴など)が払えなかったり、指導言語の問題などで学校に通えずにいます。

【*5】モザンビークではGrade 1からGrade 9(日本の小学校・中学校相当)まで授業料無料です。

私の勤務するナンプラフィールド事務所が担当しているマラタネ難民居住区とナンプラ市における2022年度の報告書でも、UNHCRの支援対象である難民・庇護希望者では初等・中等教育就学年齢の子ども1万5181人のうち、モザンビークの学校に通えているのは49%(8401人)にとどまりました。

この状況を改善すべく、UNHCRは学校教材の提供、小学生への制服提供、教員研修活動や文化・スポーツ活動の支援、学校の教室建設などのインフラ整備や維持管理も支援しています。

モザンビークでも始まった『即席ネットワーク教室』

そしてUNHCRはモザンビークで2021年から『即席ネットワーク教室』(Instant Network Schools)を開始しました。『即席ネットワーク教室』では授業で先生と生徒の双方がタブレットを活用します。生徒たちはデジタルスキルやデジタルリテラシーを身に着けることができるだけでなく、オンラインで入手できるアプリや教材などで質の高い教育が受けられます。

2022年、モザンビークでは6万747人の生徒が『即席ネットワーク教室』に参加しました。この人数には難民・庇護希望者と共に受け入れコミュニティのモザンビークの子どもも含まれます。

私は現在モザンビークで難民の「職業訓練」プロジェクトを担当していますが『即席ネットワーク教室』で身につくデジタルスキルは将来、就職・起業にすごく役立つと感じます。
『即席ネットワーク教室』は難民の子ども達の将来の選択肢を広げることができる。それが『即席ネットワーク教室』の重要な役割の一つだと思います。

私たちにとっての「希望」

先日嬉しいことがありました。

今までUNHCRが支援して小中学校に通った難民の学生が、職業訓練を受け企業のインターンシップを経験して、その企業に就職したのです。自分の国でなくても自分の願いを叶えられる難民の子どもがいるというのは私たちにとって希望です。

今も難民の学生たちがモザンビークの民間企業で働くインターンシップを実施しているのですが、参加している学生たちはとても楽しそうです。今まで勉強してきたことが実際の仕事の現場で役立つということにみんな喜びを感じています。そうするとその喜びがモチベーションになり、難民の学生がそのあとインターン先に就職する可能性も生まれます。或いは自分で仕事を起業する選択肢も考えられるようになります。

私と同じ「生計支援チーム」に所属する同僚が担当している「石けん作り」プロジェクトでも嬉しいことがありました。マラタネ難民居住区の難民約20名で1年以上「石けん作り」のトレーニングを重ねてきて、最近やっと売り物になるクォリティの石けんが作れるようになったのです。

最初はやる気を失っていたり、なかなか参加してくれない人もいました。それが石けん作りのトレーニングを通して徐々にやる気を取り戻して、「じゃあ石けんはこういうふうにしたら売れるかな」「デザインはこういうのがいいかな」と自分たちで頑張って工夫するようになり、実際少し売ってみたら売れて喜んで。その変化を目の当たりにできたこともすごく嬉しいことでした。

UNHCRの強みのひとつは、難民支援において緊急時の「保護」から最終的な落ち着き先を決める「恒久的解決」まで幅広い支援に関われることだと思っています。難民が苦労しながらも変わっていく様子を見られるのはすごく嬉しいです。難民の成長や自立を見守り、サポートできるのは生計向上官として大きな喜びです。

最後にお伝えしたいのは、日本のご支援者様への感謝の気持ちです。UNHCRにいる日本人として、日本からのご支援は本当に嬉しいです。「日本からの支援だよ」という話になると、モザンビークの皆さんはとてもポジティブな反応をしてくださいます。そのたびにとても誇らしく幸せな気持ちになります。

あらためて日本からUNHCRへのご支援に心より感謝申し上げます。


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