UNHCRアフガニスタン 貝澤麻衣(かいざわまい)ジェンダー課題担当官インタビュー

「アフガニスタンで可能な支援」を少しでも増やしたい

公開日 : 2024-02-02

アフガニスタンで人道支援を必要としている人は約2920万人

首都カブールでは、多くの女性が道端に座り込んで物乞いをしているのを見かけます。学校に通わず、家族のために働く子ども達もいます。中にはゴミ捨て場で売れそうな金属を探していて、不発弾の爆発で命を落とす子どももいます。そのような人達は皆、「明日食べるもの」にすら事欠くような生活を送っています。

このような状況に加えて、紛争によって国内で避難生活を余儀なくされている国内避難民も、避難先から戻ってきたばかりの帰還民や難民もいます。家族同士のつながりなど社会の中のしっかりしたネットワークが確立されていないこれらの人達にとって、日々の生活は困難の連続です。

私はアフガニスタンの人に向けた啓発セッションで児童婚のリスクについて話すのですが、ある時1人の男性が「自分には子どもが8人いる。食べるものがないときにお金のために娘を1人嫁に出した。その子を手放しても他の子どもを養えるならもうこれしかないんだ」と言うのです。

10歳にもならない幼い娘を手放してもらったお金。それでいったい何日間過ごせるのか尋ねたところ「5日間ぐらい」と。その答えに私は言葉を失いました。このような極端な手段に頼らざるを得ないほど、アフガニスタンには追い詰められている人達がいます。

アフガニスタンの人の為に私は何ができるのか。「アフガニスタンで可能な支援」を少しでも増やしたい。私は日々悩みながら模索し続けています。

UNHCRはアフガニスタンのすべての州で援助活動を行えるように

アフガニスタンで支援を行ってきた日本人と言えば、医師の中村哲さん*1を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。中村さんがジャララバードで帰らぬ人となって4年が経ちました。アフガニスタン人の同僚達は皆、中村さんをアフガニスタンの発展に寄与した素晴らしい人だとすごく尊敬しています。中村さんの銅像には今でもたくさんの人がお花を供えています。本当にアフガニスタンの人々に慕われている方だと実感しました。

【*1】中村 哲さん:医師。医療そして用水路などアフガニスタンやパキスタンの人々のために長年尽力したことで知られる。

UNHCRは現在、アフガニスタンのすべての州(34州)で援助活動を行えるようになりました。これまで人道支援を受けたことのない地域を含めて、最もぜい弱な立場にある人々に広く支援を届けられるようになったのです。支援対象には帰還民・国内避難民だけでなく、受け入れコミュニティのぜい弱な人も含まれます。

一方で、UNHCRが援助活動で直面している大きな課題は「アフガニスタン人の女性職員が働けないこと」です。2022年12月、事実上の当局*2は「NGOのアフガニスタン人の女性職員は働くことはできない」と発表しました。そして2023年4月には国連機関で働くアフガニスタン人の女性職員に対して出勤禁止命令を出しました。UNHCRは女性や少女に対する支援を女性職員によって届けることを重視しているため、この状況はUNHCRの援助活動上の大きな課題となっています。

【*2】事実上の当局:UNHCRはタリバンを「事実上の当局」と呼んでいます。

アフガニスタンの女性や少女を取り巻く状況は非常に厳しく、たとえば女の子は中等教育以上の教育を受けることができません。これは、学び、成長し、やがては地域社会に貢献したいと考えている少女達にとって悲劇的な状況です。

事実上の当局の政策により、アフガニスタンの女性や少女は公園やスポーツジムに行くこともできなくなり、「マフラム」(男性の保護者)の付き添いがなければ長距離移動もできなくなっています。女性の外出にマフラムの付き添いが義務付けられているため、女性だけの世帯は援助を受けられないケースもあり、さらに苦労を強いられています。UNHCRは女性や少女が取り残されないように配慮しながら支援を行っています。

皆様はアフガニスタン女性10人のうち9人が、生涯に少なくとも1回は配偶者など親密なパートナーからの暴力を経験していることをご存じでしょうか。

世界では女性の3人に1人が身体的暴力または性暴力を経験しており、その殆どが親密なパートナーによるものですが、アフガニスタンは女性に対する暴力の割合が極めて高いです。 

【参考】国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)プレスリリース(2021年11月25日発表)<https://unama.unmissions.org/un-calls-solidarity-and-commitment-end-violence-against-women-and-girls-amidst-humanitarian-crises

啓発セッションでアフガニスタンの男性たちから「仕事がなく、いらいらしてつい手をあげてしまった。収入が得られたら女性を殴らないだろう」という話を聞きます。

仕事していたときには全く暴力がなかったという訳ではないでしょう。でも経済的な要因でみんなストレスを感じ、ストレスに対処する方法もなく、身近な女性に対する暴力がエスカレートしてしまう。失業や貧困もアフガニスタンの「ジェンダーに基づく暴力」の大きな要因だと感じます。

しかし理由に関係なく、女性と少女に対する暴力は容認できるものではありません。

これまでの「アフガニスタンにおけるUNHCRの支援」

これまでアフガニスタンにおいてUNHCRは緊急支援を行うと共に、帰還民の多い地域を中心に、日本からの支援も受けて学校、医療施設、コミュニティセンターや女性ビジネスセンターを建設し、コミュニティの再統合、回復力、尊厳を促進するなど、帰還民・国内避難民の支援に注力してきました。

アフガニスタン女性に対するUNHCRの支援と

その後、暴力などに対する保護支援の必要性が高まったことを受け、UNHCRアフガニスタンは2022年1月「ジェンダー課題担当官」と「子どもの保護担当官」という専門職を新設し、保護支援を強化しました。

UNHCRはアフガニスタンの女性の帰還民や国内避難民に対し、現金給付支援、住居などのシェルター支援、緊急援助物資の提供など命をつなぐ基本的な援助活動を行っています。それに加え、心理社会的支援、経済的自立を可能にするための自宅でも可能な小規模生計プロジェクトへの助成金も実施しています。

UNHCRが実施している女性支援プロジェクトの例を紹介いたします。

ひとつは『助産師養成コース』です。アフガニスタンでは医療は「同性」の医療従事者から受けることになっているため、女性患者を診るのは女性医師のみです。そのため、女性の助産師に対するニーズは高いです。この『助産師養成コース』では、農村部を含む各地域で助産師になるための専門的なトレーニングを女子学生に提供しています。

私が立ち上げた『ウーマンズ・コミュニティセンター』というプロジェクトでは、女性の心理社会的支援を目的としたレクリエーション活動(裁縫、刺繍、ヨガなど)を行っています。この『ウーマンズ・コミュニティセンター』は、女性達が集うための安全な場所を提供しています。これは、女性が公園やスポーツジム、美容院に行くことが禁止されている現在の状況においてとても貴重な場となっています。

UNHCRの大きな強みは「支援対象者との距離が近いこと」

アフガニスタンで感じるUNHCRの大きな強みは「支援対象者との距離が近いこと」です。UNHCRはアフガニスタン国内で首都カブールの国代表事務所の他に、8つの活動拠点を持っています。(サブ事務所=2か所、フィールド事務所とフィールド・ユニット=計6か所)そしてアフガニスタン国内の幅広い専門知識とネットワークを持つ14の現地のパートナー団体*3と連携して援助活動を実施しています。

【*3】パートナー団体:2023年12月現在UNHCRは世界各地のパートナー団体(900団体以上)と協働しています。各地のパートナー団体と協働することにより支援を必要としている人たちの様々なニーズに対して、包括的で効果的な支援を行うことを目指しています。<https://www.unhcr.org/partnerships.htm

2023年10月に西部ヘラート州で立て続けに大地震が起こり、多くの人命、家屋、生活基盤が失われた際にも、被災地に近い場所に活動拠点があるUNHCRは、被災者に緊急避難用のテントや、毛布、石鹸やバケツなどが入った緊急援助物資の配布など、命を救うための支援を迅速に届けることができました。

UNHCRは常に「支援を必要とする人と共に現場にいる」存在であろうとしています。UNHCRの援助活動で最も大切なことは、人々のニーズに耳を傾け「必要な支援を必要な時に」提供できるようにすることです。

緊急事態により深刻な活動資金不足に直面

UNHCRアフガニスタンは現在、2つの緊急事態(ヘラート州の大地震とパキスタンからのアフガニスタン人帰還)のため、深刻な活動資金不足に直面しています。

アフガニスタン周辺国は何十年もアフガン難民を手厚く受け入れており、多くのアフガン難民がイランとパキスタンで避難生活を送っています。2023年10月、パキスタン政府は、2023年11月1日からパキスタンにいる非正規滞在のアフガニスタン人を送還することを目的とした「不法滞在外国人送還計画」を発表しました。

この発表を受けてパキスタンにいるアフガン難民を含む多くのアフガニスタン人がアフガニスタンに帰還しています。UNHCRをはじめとする国連機関は、国境で保護目的のカウンセリングや、命をつなぐための現金給付支援、医療支援を行っています。

帰還者の多くが出身地の村や都市に帰還する一方、避難先の他国で生まれ育ち、アフガニスタンに住んだことがなく、行き場のない人々もいます。このような行き場のない家族は、アフガニスタンで新生活を始めるため大都市に向かう場合があります。

しかし、全くなじみのない土地で生活を再スタートするのは容易なことではありません。避難してきた家族が、立ち直り、安全な居場所を見つけ、子どもたちを学校に通わせ、生計を立てるために、帰還してから少なくとも数週間から数か月の間サポートしなければなりません。

今、アフガニスタンの人々は自分達も苦しいにもかかわらず、帰還民に温かい食事やその他の支援を提供するなど帰還民を迎え入れるため最善を尽くしています。しかし、アフガニスタンの状況は依然として世界でも最も深刻な人道危機のひとつであり、国際社会からの支援が切実に必要です。

「アフガニスタンで可能な支援」を少しでも増やしたい

このような厳しい状況の中、私自身、時には落ち込むこともあります。でも、嬉しい手応えもあります。例えば『ウーマンズ・コミュニティセンター』で出会ったアフガニスタン女性達。仕事にいけない、学校にいけない、家の外に出ることもままならない。女性達のストレスは、どんどん溜まっています。そのような中、このプロジェクトで久しぶりに集まることができた女性達は本当に嬉しそうでした。

私はやっぱりこの仕事が好きです。色々な人に出会って話をきいて、限界があるとしても自分にできる限りのことを叶えたい。「アフガニスタンで可能な支援」を少しでも増やしたい。

カブールではゼロからプロジェクトを始めたのですが、『ウーマンズ・コミュニティセンター』は参加した女性達から「こういう支援は初めて。こういった集まれる場所は今までどこにもなかった」と非常に喜ばれました。アフガニスタンの女性のためになる支援を実現できて、本当に嬉しかったです。

UNHCRアフガニスタンの職員は皆、1人でも2人でも、或いは3人でも4人でも5人でも、目の前の人の生活を少しでも良くしたいと思って活動しているのではないかと思います。UNHCRはこれからもアフガニスタン各地の現場、支援対象者の近くで援助活動を続けてまいります。

あらためてUNHCRへのご支援に心から感謝申し上げます。この機会に、アフガニスタンにご関心をお寄せいただけますなら嬉しく存じます。


アフガニスタン国内 UNHCRの援助活動

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