逆境における強さ: HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に立ち向かう難民の回復力

公開日 : 2023-08-18

ルワンダ、2023年8月10日 ― 2015年、ブルンジで政治的暴力が勃発した時、オリーヴさん*と子どもたちは故郷を逃れる決心をしました。しかし他の難民とは異なり、オリーヴさんは難民としての困難に加え、さらなる重荷を背負っていました ― 彼女はHIV陽性だったのです。
※ ヒト免疫不全ウイルス。HIV感染により免疫機能が低下して引き起こされるさまざまな病気や症状の総称がAIDS(エイズ/後天性免疫不全症候群)

安全と新たな門出を求めてルワンダに到着したオリーヴさんと子どもたちは、ニャンザ一時滞在センターにしばらくの間避難し、最終的にマハマ・キャンプに落ち着きました。到着して希望がもたらされましたが、オリーヴさんはもうひとつの障壁に直面しました。それは、HIV陽性者への適切な治療です。

ブルンジからルワンダへの避難

オリーヴさんは数年前、ブルンジで出産前の定期検診を受けた際にHIVに感染していることを知りました。彼女がウイルスに感染したと診断されたのは妊娠8か月目のことでした。このウイルスと一生付き合っていくという事実を受け入れるのに、彼女は苦心しました。

「HIV陽性とわかった時、打ちのめされました。私は引きこもり、どうしてウイルスに感染したのか理解することができませんでした。人生の終わりのような気がしました」と彼女は言います。

彼女がルワンダに到着した時、人道支援団体がいくらかの援助を提供しましたが、当初は十分ではありませんでした。特に、定期的な投薬が必要なHIV感染者にとっては。

「ここマハマ・キャンプに着いた時、私は薬を持っていませんでした。私は自分の健康が心配で、いつも薬を求めて医療関係者を追いかけていました」と、この43歳のブルンジ難民は回想します。

HIV陽性の難民として生きていくこと

ブルンジ難民の緊急事態を受け、UNHCRはマハマ・キャンプでHIVと共に暮らす難民を2018年まで援助するための助成金を確保しました。その後、難民は国のシステムに統合されました。

キーレ地域病院と国連合同エイズ計画(UNAIDS)を通じたルワンダ政府の援助を得て、UNHCRは現在、HIV陽性の難民に抗レトロウイルス薬を定期的に援助することができています。また、他の国連機関も、ウイルスと共に生きる難民の回復力を強化するための援助を続けています。

キャンプに到着した最初の6か月間、オリーヴさんは他の人たちと距離を置いていました。HIVに感染していることを知られたくなかったのです。

「抗レトロウイルス薬の服用を始めた時、自分のHIV感染が近所の人に知られるのではないかと心配しました」と彼女は語ります。「保健センターからの帰り道、近所の人たちが私の行先を尋ねてくるたびに、私は“UNHCRの事務所に行った”などと嘘をつき、自分の状態を明かさないようにしていました。抗レトロウイルス薬をすべて飲み終えたら、薬の容器を慎重に処分していました。」

しかし、カウンセリングを受けて不安は消えました。それ以来、オリーヴさんは自分がHIV感染者であることを周囲に公言できるようになりました。

「このまま引きこもっていると、精神的な問題を抱えることになるだろうと思うようになったのです」と彼女は言います。

 

資金難と食料不安

このキャンプに到着した時のことを回想すると、オリーヴさんは、HIV感染者の難民がタンガニーカ・イワシ、ジャガイモ、豆類、ポーリッジ(おかゆ)など、免疫系を強化するための栄養価の高い食品を与えられていたことを思い出します。

「近所の人たちはよく、これらの食料供給をどこで手に入れたのかと尋ねてきました。私は健康上の問題で保健センターからもらったと答えていました。こうして、私は自分の健康状態について、さらに明かすようになったのです」と彼女は付け加えます。

オリーヴさんのような難民は、安定しているHIV陽性患者のための確立されたARV(抗レトロウイルス薬)治療計画に従い、6か月ごとに保健センターで報告するよう招かれています。訪問時には、今後6か月間のARV治療薬の補充、治療順守に関する話し合い、結核を含む日和見感染症の検診、メンタルヘルスや心理社会的サポート、その人が服用している薬の組み合わせによるウイルス量、腎臓機能、肝機能を測定する検査室での点検など、さまざまなサポートを受けることができます。

「以前は必要な食料を買う余裕がありましたが、今は生活費が大幅に上昇しています」

HIV陽性の難民は、積極的な栄養摂取と健康的な食生活をサポートするため、世界食糧計画(WFP)からポーリッジ(おかゆ)の配給も毎月受けています。また、年に一度、栄養評価を受け、バランスの取れた健康的な食事の取り方についての指導を受けている、と彼女は付け加えます。

このような援助にもかかわらず、彼女たちが受けている経済的な援助は、特にウイルスと共に生きる人々の免疫システムを強化するために必要な栄養価の高い食品をすべて購入するには、現状では不十分だと、オリーヴさんは指摘します。

「以前は必要な食料を買う余裕がありましたが、今は生活費が大幅に上昇しています」と彼女は説明します。「HIVと共に生きる難民として、私たちはより弱い立場に置かれるようになっています。私たちが健康と福祉を維持するために格闘していることはご理解いただけると思います。」

逆境における強さ

時が経つにつれ、オリーヴさんは自らに課した隔離生活から抜け出す強さを見出しました。現在、彼女は地域ボランティアとして、仲間の難民の意識を高めるために尽力しています。

「薬を定期的に飲むことで免疫力が高まり、家族の面倒を見ることができるようになりました」と語り、彼女が困っている人々を助けることに全力を注いでいることを指摘しました。

オリーヴさんは、キャンプにいる仲間のHIV陽性の難民に、抗レトロウイルス薬の服薬スケジュールを守ることの重要性を説き、健康な生活を送れるようにしました。また、彼女は自発的なHIV検査の重要性を隣人たちに伝える任務にも乗り出しています。たゆまぬ努力を通じて、彼女はキャンプの他の人々にも、自分の健康を管理し、必要なケアを受けるよう勧めています。

* 名前は保護のため変えられています。

Eric Didier Karinganire

原文はこちら(英文)
Strength in adversity: A refugee's resilience to cope with HIV


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