アルメニアで安全を見出した難民の未来は、依然不透明
アルメニアに逃れてきた難民10万人の多くと同様、カリーヌさんと彼女の親族は今、心への影響、そして生活をどう再建するかという問題と格闘しています
公開日 : 2023-10-25
カリーヌさん(24歳)は第2子 - マネちゃんという名の娘 - を出産したばかりです。彼女はカラバフの町マルタカートにある産科病院に家族が到着し、赤ん坊を家に連れて帰るのを心待ちにしていました。
ヴァルデニス(アルメニア)2023年10月20日 ― 町外れにあるカリーヌさんの家では、親友でもある義理の姉マリアムさんが、新しい家族を迎えるお祝いのために家の飾り付けをし、テーブルを並べていました。義姉の夫ハラクさんと2人の子どもたち、彼女の義理の兄(カリーヌさんの夫)アルチョムさんも一緒でした。
しかし、喜ばしい帰郷は実現しませんでした。身を守るように、という連絡が人々の間で流れ始めたのです。病院では医師たちがカリーヌさんや病棟の母親たちに、新生児を連れて地下に行くように伝えました。
「その時、私が一番恐れたのは、息子が幼稚園にいたことでした」とカリーヌさんは言いました。「私はこう思いました。“息子はどこに…どうなるのだろう?”」
アルチョムさんが幼稚園に駆けつけ、幼い息子を見つけて病院に連れて行く間、マリアムさんと家族は急いで家に帰り、地下室に避難しました。「私たちはすべてを置いてきました…そして逃れました。部屋の飾り付けはまだ終わっていませんでした。どうにか家にあった証書を持って、地下に駆け下りることができました」とマリアムさんは語りました。
国境へ向かう避難の旅
通信が途絶えたため、家族全員は病院で再会することにし、地下に避難して不安な二夜を過ごしました。ついに身の危険を感じた彼らは、故郷を離れてアルメニアとの国境に向かう、苦渋の決断を下しました。逃れようとする家族連れで道路が渋滞し、通常3時間の道のりが40時間以上かかりました。
9月25日未明、疲れ果て空腹に耐えながらコルニゾール村でようやくアルメニアに渡った時、カリーヌさんは自分たちの置かれている現状を思い知らされました。「コルニドゾールに到着した瞬間のことは忘れません。私はいつも映画で、極めて困難な状況に置かれた人々が…援助隊員や車、救助隊に声をかけられる姿を目にしていました。まさか自分も近づいてきた援助隊員に“手を貸しましょうか?”と声をかけられるとは思ってもみませんでした。」
カリーヌさんと家族は、9月末の1週間のうちにカラバフからアルメニアに入国した10万人以上の難民に含まれています。多くの人々が心に傷を負い、疲れ果て、空腹で、心理社会的援助と緊急援助を早急に必要とした状態で到着しました。難民の30%は子どもで、女性や高齢者も大勢います。
現地でのUNHCRの難民支援
UNHCRのチームは、この危機が勃発したその日からアルメニアの国境にとどまり、現地で政府主導の対応を援助しています。当局が新たに到着した難民を登録し、難民の家族のニーズを調査するのを手助けするために、UNHCRは技術的な設備を提供しています。
UNHCRは24時間体制で、パートナー団体のミッション・アルメニアNGOと共に、折り畳み式のベッドやマット、暖かい毛布や枕、寝具、衛生用品、調理器具セット、その他の必需品を難民の家庭に配布しています。新たに到着した人々の多くは人里離れた国境沿いのコミュニティで受け入れられており、初冬の厳しい状況への対処という新たな困難に直面しています。UNHCRと国連およびNGOのパートナー団体は、アルメニアにいる難民の緊急ニーズに応えるため、9700万ドルの資金が必要であることを訴えています。
アルメニアに逃れて
ホテルや民宿、学校等といった臨時の避難所で生活している難民もいる中、カリーヌさんと親族は、アルメニアの家族や友人の家に滞在しています。アルメニアのゲガルクニク県にある、北と東を山々に囲まれ、西にセヴァン湖を臨む平原に囲まれた田舎町ヴァルデニスに住んでいるハラクさんとアルチョムさんの両親の2LDKの家には、15人の大家族が押し寄せています。
兄弟の母親ロメラさんは、子どもたちや彼らの家族と数日間連絡が取れなくなった際の絶望感をこう語りました。「恐ろしい気持ちでした。ずっと泣きながら知らせを祈っていました。子どもたちが無事に到着したことを知った時の安堵感は言葉では言い表せません。」
その安堵感は、ひとつ屋根の下に親戚が大勢いることに対する潜在的な不安に勝ります。「それどころか、私は至福、幸福を感じています。子どもたちがいなかった時、私たちは孤独を感じていたし、家の中が空っぽに感じられていました。今はみんながここにいて一緒にいるから、家は満員です。私はとても幸せでありがたいです。信じてください、私は何も心配していません。今は何にも悩まされていません。」
「このまま長くは住めません」アルメニアからの難民ハラクさん
しかし、カリーヌさんと彼女の若い家族は、生活を根こそぎ奪われたアルメニアにいる多くの難民と同じように、未だにその体験から深い影響を受けています。「一番心に響くのは、息子が毎朝5時に起きてこう言うのです“幼稚園には連れて行かないでしょう?幼稚園には行きたくない”彼は今も怯え、幼稚園に行きたがりません。あらゆることが起った時、彼は一人で取り残されていたからです。」
ハラクさんにとって、現在の状況は一時的な応急処置に過ぎず、将来は不透明なままです。彼と妻のマリアムさんは首都エレバン近郊に小さな家を所有していますが、まだ半分しか完成しておらず、住宅ローンに加えて改修工事をする余裕はありません。
「このまま長くは住めません」と彼は言いました。「今はこれが最優先事項です。今の段階で私にとって最も重要なのは、住む場所を確保すること。そこから、仕事を見つけ、子どもたちを学校や幼稚園に入れ、新しい生活を始めることができるのです。(しかし)私たちは人生をやり直し、子どもたちを育てるための家を持つ必要があります。」
Anahit Hayrapetyan and Melik Benkritly
原文はこちら(英文)
Refugees find safety in Armenia, but the future remains uncertain
アルメニア緊急事態
※当協会は認定NPO法人ですので、ご寄付は寄付金控除(税制上の優遇措置)の対象となります。