ウクライナからの難民の大半は帰還を希望しているが、人道的ニーズは依然として甚大

カロリーナ・リンドホルム・ビリングUNHCRウクライナ代表による声明

公開日 : 2023-07-18

2023年7月7日 ― 7月6日、UNHCRは「ウクライナへの自主帰還に関する新たな見解」を発表しました。自国への帰還は基本的な権利ですが、国際的な武力紛争が続いているため、UNHCRはウクライナへの帰還を積極的には推進していません。難民が個人的に帰国を決断する場合は、十分な情報を得た上で、かつ完全に自発的なものでなくてはなりません。

ロシア連邦がウクライナに全面侵攻した直後の2022年3月にUNHCRが発表した最初の不帰還勧告は、現在も有効です。この勧告では、すべての国に対し、ウクライナから逃れて来たあらゆる国籍の民間人がその国の領土に差別されることなくアクセスできるようにし、ノン・ルフールマンの原則* を確実に尊重するよう求めています。(* 難民は彼らが迫害の危険に直面する国への送還に対する保護を享受する。難民保護の礎石と言われ、難民条約第33条(1)に規定されている)

多くの難民がウクライナを短期訪問していますが、こうしたことが難民の国際的保護の必要性を減じるとUNHCRは考えていません。UNHCRは受け入れ国に対し、ウクライナへの短期訪問に対する柔軟なアプローチを維持するよう促しています。長期的な帰還について十分な情報に基づいた意思決定を促進するのに役立つのです。ウクライナへの訪問が3か月未満の場合、受け入れ国における法的地位や関連する権利が影響を受けるべきではありません。

一方、UNHCRは、ウクライナからの難民と国内避難民の意向と懸念に関する相談を続けており、今回初めて難民と国内避難民(IDP)の両方を含む調査「保留された生活:ウクライナからの難民・国内避難民の意向と展望」の第4版を発表しました【※詳細(英語版)はこちら】。これは、ヨーロッパ全土の難民約3850世帯と、ウクライナの国内避難民約4000世帯への聞き取り調査に基づいています。

帰還を望む難民76%

前回の調査と同様、ウクライナからの難民の76%、ウクライナ国内避難民の82%という絶対的多数が帰還を計画している、または希望しており、約15%が今後3か月以内に帰還する予定です。

帰還への主な障壁は、引き続き安全性と治安状況です。キーウ、ドニプロといった都市へのミサイルやドローンによる空爆、リヴィウでは住宅ビルを直撃し、10人が死亡、40人以上が負傷する中、最前線での激しい戦闘、侵攻と国際的な武力紛争が続いています。国際的な武力紛争が続いているので、帰還は自発的なものであり、強制されたり圧力をかけられたりするものではないことが不可欠です。

調査の中で言及された、帰還を妨げる、あるいは帰還を可能にするその他の主な障壁は、水や電気といった基本的なサービスへのアクセス、生活、住居、教育です。これらは、帰還を決断した人たちが実際に出身地にとどまって復興し、生活を再建することができるようになるために、ウクライナ国内で人道支援や早期復興従事者が取り組む主な分野です。

法的援助と家の修理

意向調査では、ウクライナ北部チェルニヒウ州やハルキウ州といった地域への帰還に対する関心が高いことが分かりました。UNHCRはこれらの地域での家屋の修繕を優先しています。チェルニヒウだけでも、これまでに約1800軒の家屋を修復、2万7000人の法的援助サービスを手助けし、彼らが立ち直り、行政サービスや社会保護サービスを利用できるようにしました。

ハルキウ州では1500世帯が家屋の修繕を、5万人が法的支援とサービスを受けました。ミコライウも帰還の重点エリアであり、UNHCRは2200世帯の家屋の修繕と1万6000人の法的援助を実施。UNHCRは合計で、ウクライナ全土の地域で1万3000軒以上の家屋の修繕を支援し、24万人以上を法律扶助サービスで援助してきました。

甚大なニーズの層

カホウカ・ダム破壊後の洪水の影響を受けた地域への帰還は、特に困難です。7月3日、私は洪水被害を受けたミコライウ州スニフリウカ・フロマダ地区、そしてオレナさんの家を訪れました。この地域がロシア連邦の一時的な軍事支配下にあった9か月間、彼女の家はロシア兵に占領されていました。6月7日から8日にかけてダムが決壊して自宅が浸水した時、彼女はそのトラウマからの回復途上でした。彼女の家の被害は甚大で、すぐに修復できないことは明らかでした。家の基盤まで損傷していたのです。

7月4日、私はケルソン州で最悪の洪水被害を受けた地域のひとつであるビロゼルカ・フロマダを訪れ、70代の女性リウボフさんと会いました。彼女の家は2度にわたって砲撃を受け、彼女の娘は19歳の息子と9歳の娘を残して亡くなりました。ダムが決壊した後、道路と家が地上3.5メートルまで浸水したことを彼女は説明してくれました。彼女の家はまだ建っていましたが、土台が損傷していました。彼女たちのトラウマは計り知れません。彼女の隣にはサーシャさんが住んでいますが、彼女の家も水に覆われ、完全に崩壊していたのです。

これらの地域で私たちが目にするのは、人道的復興ニーズが甚大だということです。戦争、敵対行為、そして洪水によって、人々は幾重もの試練を与えられています。彼らはすでに、近づきつつある冬の前に家を修理することを心配していました。

7月5日にドニプロペトロウシク州ニコポルを訪れた際、ダム破壊の影響の裏側も目の当たりにしました。そこでは水不足が深刻です。かつては何十万人もの人々に水を供給していた貯水池が、今は干上がった土地になっています。灼熱の太陽に照らされ、砂漠のように見えます。反対側、つまり私の方を向いているのは、ザポリージャ原子力発電所でした。ご存知のように、人々はそこでさらに悪いことが起こるかもしれないという恐怖に常に怯えながら暮らしています。

国際的な武力紛争と、それに加えてダムの破壊。人道的ニーズと復興の幾重ものニーズは膨大であり、現在も長期的にも国際社会の継続的な支援が必要です。


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