From the Field ~難民支援の現場から~ With You No. 50より / 大竹更 UNHCRウガンダ チャカ事務所 フィールド担当官
公開日 : 2023-10-04
UNHCRウガンダ チャカ事務所
大竹更(おおたけ あらた)

ウガンダのチャカ事務所に赴任して2年目の今年3月、私は隣国ケニアにいました。UNHCRは、世界のどこかで緊急事態が発生した際に、各地からスタッフを集めて対応する体制を整えており、私も緊急対応の要請に応じて普段援助活動に従事しているウガンダのチャカ難民居住地からケニアのカクマ難民キャンプへ向かいました。その時にわかっていたのは、ケニアに数千人規模で難民が逃れてきているということだけで、どのような理由で、どこから人々が逃れてきているのかはまだわかっていませんでした。現地に赴き逃れてきた人たちのお話を伺ってみると、実は大多数の人が、私が赴任しているウガンダ南西部で登録されているコンゴ民主共和国やブルンジ出身の難民だということがわかりました。その背景には、ウガンダでの度重なる食料支援の削減がありました。
ウガンダ全土ではいま、多くの人が受け取る食料支援が2020年の約30%まで減っています。その額は、1人あたり1か月3ドル*ほどのわずかな金額です。こうした背景があり、ケニアに行ったら今よりも支援を受けられるという噂を聞いて、多くの人がケニアに移動したと考えられます。しかしケニアの法律では、すでに別の国で難民登録をしている人はケニアでもう一度登録することはできず、支援を受けることはできません。つまり今回逃れてきた人々の大多数は、ウガンダに戻るほかないのです。二国間では、こうした人々にいかにしてケニアからウガンダへ戻ってもらうかという議論が続いています。ウガンダの資金不足は支援の削減に直結し、難民の方がより苦しい状況に追い込まれ、隣国のケニアにも影響を及ぼしています。
私の赴任しているウガンダ南西部は、同国の西に位置するコンゴ民主共和国からの難民を多く受け入れており、食料支援の削減でもっとも影響を受けている地域です。WFP(国連世界食糧計画)の食料支援はここ2年くらいで徐々に削減され、UNHCRとWFPはどの段階でどれだけの金額を、どのような方を対象にして減らしていくかということを協力して決めていますが、毎回苦渋の選択を迫られています。また支援の削減は食料だけでなくUNHCRの衛生用品の配布でも起きており、難民の方の窮状と密接に関わっています。もともとUNHCRは難民の方に毎月石けんを配り、また10歳~50歳の女性には生理用のナプキンや下着も配っていたのですが、それも昨年ウガンダ全土で削減を余儀なくされ配布できなくなりました。先日も難民の方々とミーティングをしたときに、物資の話が多くでました。「石けんやナプキンをもらえなくなり、衛生的な生活が難しくなっている」と仰っており、食料支援のわずかなお金で衛生用品を買う人もいるそうです。ウガンダでは学校に無料で通うことができますが、給食などそのほかに必要な諸々のお金はカバーされていないので、そうしたお金がなく学校に通うことができない子どもも多くいます。ウガンダの難民に寛容な政策のもとでも、国際社会からの支援なしでは、アフリカ最多の150万人以上の難民を支え続けていくことはできません。UNHCRとしても難民の方の窮状は十分理解しているのですが、予算が足りずどうしても彼らに必要な支援を行きわたらせることができないことは大変もどかしく、困難な状況に直面しています。こうした事態はメディアからの注目度が低く日本で広く報道されることもないかと思います。ウガンダでも多くの難民の方々が困難に直面しながら生活しているということに、一人でも多くの方に関心を持っていただけたら、そう願ってやみません。

ウガンダの難民受け入れ状況
ウガンダは150万人以上の難民を受け入れています。北部では北の国境を接する南スーダンからの難民を多数受け入れており、南西部にはコンゴ民主共和国、ルワンダ、ブルンジから多くの人が逃れています。また、首都カンパラにも数十万人の難民が居住しています。
*1ドル147円(9月14日時点)
対象世帯の大多数が1人あたり1か月3ドル。ごく一部のもっとも脆弱な世帯のみ2020年の食料支援の60%の金額(約5ドル)に留まり、今年7月からはある程度収入のある家庭は完全に支援から除外されるなどより厳しい状況に。
プロフィール
2021年6月よりUNHCRウガンダチャカ事務所でフィールド担当官として勤務。難民・庇護希望者の受け入れ、難民へのサービス提供、ニーズ調査、物資配布およびプロジェクトのモニタリング、ウガンダ政府やパートナー団体との連携を担当。過去には、UNHCRコンゴ民主共和国およびスーダン事務所(プログラム担当)や、UNDP(国連開発計画)、JICA(国際協力機構青年海外協力隊)、NGOなどに勤務。