写真で見る:再び記録的な強制避難の年

世界の強制避難の年間増加率が過去最高であることが新たなデータにより明らかになる中、2022年からのUNHCRの一連の写真は、数字の背景にある重要なテーマと緊急事態を浮き彫りにしています

公開日 : 2023-06-19

2023年6月14日 ― 増加の多くはウクライナ戦争によるものです。2022年2月にロシアがウクライナに本格的に侵攻したことで、第二次世界大戦以降に記録された最速の難民の避難が生じました。しかし、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、シリア、ミャンマーを含む世界の他の地域での紛争や情勢不安は、いずれも記録的な増加に寄与しています。一方、干ばつや洪水を含む気候変動に関連した気象災害が頻発し、避難がこれまでにない規模で増加しました。

国際的な国境を越えて避難を余儀なくされた人は半数以下でした。世界全体のうち、58%は自国内で避難を強いられています。国境を越えた人のうち70%は、主に自国に隣接する低・中所得国にとどまりました。

4月にスーダンで新たな紛争が勃発し、世界の多くの地域で暴力、政治的混乱、気候による危機が続き、世界の強制避難の容赦ない増加傾向は2023年になっても衰える気配がありません。

以下は、Global Trendsのレポートのデータの背景にある10の重要なテーマと危機を強調した、2022年のUNHCR写真集です。

ウクライナ危機

2022年2月27日、夫を残してウクライナから避難した若い母親が、生後3か月の赤ちゃんと3歳の幼児を抱いて、ティサベツ国境交差点からハンガリーへ渡ります。新たな強制避難の最大の要因は、ウクライナで続く戦争であり、2022年は570万人が国外へ逃れ、数百万人がウクライナ国内で避難しました。

気候に関連した避難

2022年8月下旬、パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州のカブール川のほとりで、アフガニスタン難民のバハドゥールさん(60歳)が、かつて住んでいた家の残骸の中に立っています。数か月にわたるモンスーン豪雨で川が近くの堤防をあふれ、バハドゥールさんの家は数分で流されてしまいました。2022年にパキスタンで発生した洪水により、約820万人が国内で避難を強いられ、世界的に見ても、災害や気候変動の影響を受けて避難を余儀なくされた人数としては、2022年最多でした。パキスタンの気象局は、気候変動によって、昨年のモンスーン雨とその後の洪水がより深刻になった、と述べています。

国内避難

コンゴ民主共和国イトゥリ州のプレインサボ国内避難地で両親と一緒にいるオデットちゃん(4歳、右)。2022年2月1日に武装集団がキャンプを攻撃し、62人が死亡、数十人が負傷。オデットちゃんはその際に、ナタで頭に傷を負いました。世界的には、ウクライナ、コンゴ民主共和国、エチオピア、ミャンマーでの紛争が牽引して、2022年には紛争による国内避難民の数が18%増の6240万人になりました。

自主帰還

2022年6月、隣国リベリアで10年以上暮らしていた元コートジボワール難民が故郷へ帰還。2002年から2007年、2011年から2012年にかけての2度の内戦により、約34万人のコートジボアール人がアフリカ西部の他地域に安全を求めていましたが、同国が政治的に安定したことにより、過去10年間でほとんどの人々が自発的に故郷へ帰還しました。世界全体では、2022年における難民の帰還数は21%減の33万9000人でしたが、コートジボワールに加え、南スーダン、シリア、カメルーンへ帰還した難民の数が顕著でした。

アフリカ西部と中部の洪水

カメルーン最北端の地域で、家屋の残骸と共に洪水から逃れる家族。2022年10月、アフリカ西部と中部で発生した洪水により、340万人以上が避難を強いられました。ナイジェリアでは過去10年で最悪の洪水に見舞われ、チャドでは豪雨により2つの川が決壊し、非常事態宣言が出されました。ブルキナファソ、マリ、ニジェールといったサヘル中部では、洪水により数百人の命が犠牲となりすでに避難している人も含め、数千人が逃れています。サヘル地域の気温は世界平均の1.5倍の速さで上昇しており、武装集団による攻撃の頻度が増加するなど、この地域の他の問題も悪化させています。

第三国定住

1990年、リベリアの内戦を逃れ、コートジボワールで難民となったルーレナ・グボアさん(中央)とその家族。その2年後、彼女と家族は米国に第三国定住しました。現在はソーシャルワーカーとして、また難民支援の第一人者として、難民会議の理事長、米国難民カウンシルの理事を務めています。2022年、第三国に再定住した難民は11万4300人で2021年の2倍になり、新型コロナ以前の数字と同じになりました。第三国定住した難民を最も多く受け入れたのはカナダで4万7600人、次いで米国が2万9000人、オーストラリアが1万7300人でした。

無国籍

タンザニアのキゴマ州にあるニャルグス難民キャンプの家の外で、母親と赤ちゃんの娘と一緒に座るブルンジ難民のエヴァンゲリーナ・ブクルさん(左)。エヴァンゲリーナさんは、UNHCRの主導により、子どもたちを無国籍から守るために、タンザニアの出生証明書を取得しました。2022年に世界で確認された無国籍者の数は、主に登録の改善により、2%増の440万人になりました。世界の半数の国が無国籍者に関するデータを提供していないため、この数字は過小評価されたものです。2022年は、13か国が無国籍者の削減や予防のための法律、政策、手続きを改善しました。

シリア危機

家族とシリアの紛争から逃れ、隣国レバノンで安全を見出したサラちゃん(8歳)と母親のサフィヤさん。前腕がないサラちゃんを支えるのは人工関節です。レバノンの経済危機は、レバノン国民とシリア難民の双方に大きな緊張をもたらしていますが、困難な状況にもかかわらず、娘の前向きな姿勢が希望の源になっているとサフィヤさんは話します。危機ぼっ発から十数年経った今でも、シリアは650万人以上の難民を抱え、世界で最も多くの難民を生み出しています。国際的な保護を必要とする難民等の3分の2以上は、シリア、ウクライナ、アフガニスタン、ミャンマーの、わずか4か国から発生しています。

ベネズエラ情勢

コロンビアのカリにあるバスターミナルの外で、生後17か月の娘ジェリーちゃん(右)が冷たい飲み物を飲んでいる中、パートナーのエンドリ・コルデロ・アビラさん(左)を抱きしめるマリア・フェルナンダ・アルティガスさん。一家は、安定を求めて南米の国々を数年間行き来した後、祖国ベネズエラに戻る途中でした。コロンビアとペルーが人口推計を修正したことにより、難民等、保護を必要とする人に分類されるベネズエラ人の数は、2022年末時点で550万人に増加しました。コロンビアは、250万人の難民や国際的な保護を必要とする人々を受け入れており、そのほとんどがベネズエラ人です。これはアメリカ大陸地域で最も多い数となっています。

“アフリカの角”の干ばつ

2022年10月、ソマリアの干ばつを逃れケニアのダダーブ難民キャンプに来た、3児の母であるハリマ・フセインさん(28歳)。気候変動の影響により、アフリカの角(ソマリア、ケニア、エチオピア等のアフリカ東部の地域)を襲った干ばつは、5年連続で雨季が来ず、過去40年間で最悪の事態となっています。ソマリアでは、干ばつと終わらない情勢不安のために60万7300人が新たに避難を強いられ、さらに状況は悪化しています。ソマリアから難民が流入するケニアやエチオピアの干ばつ被害地域も、地元の受け入れコミュニティでは食料や水の不足に苦しんでいました。

By UNHCR Staff

原文はこちら(英文)
In pictures: Another year of record forced displacement


難民を守る。難民を支える。

紛争、迫害のみならず、気候変動による干ばつや豪雨等の自然災害、食料難等、さまざまな人道危機によって多くの人々が故郷を追われている中、今ほど支援が必要とされる時代はありません。UNHCRは、この状況に対し、世界各地で救援活動を行っていますが、資金が圧倒的に足りない状況が続いています。皆様からのご寄付によって多くの命が助かります。

※当協会は認定NPO法人ですので、ご寄付は寄付金控除(税制上の優遇措置)の対象となります。

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