ギリシャのコス島のホテルで仕事と新しい家族を見つけたヤヒヤさん

公開日 : 2023-10-13

コス島(ギリシャ)2023年9月26日 ― ヤヒヤさんがコス島のホテル“ミティス・ブルー・ドームス・リゾート&スパ”に到着するのは朝6時半です。白いユニフォームに身を包み、仕事を開始します。1年半前にヤヒヤさんが安全を求めて初めてギリシャに到着した時、職場で新しい家族を見つけるとは想像もできなかったでしょう。

「ホテルのみんなは最初から私を特別に良くしてくれました。彼らは温かく親切で、敬意を示してくれました。赤の他人だとは決して感じさせませんでした」とヤヒヤさんは語ります。

ヤヒヤさんはイエメン出身ですが、サウジアラビアで生まれ育ちました。そこでの生活は容易ではありませんでした。彼は学校、大学、職場環境において個人的な困難に直面し、立ち去ることを余儀なくされました。イエメンに戻ることは現実的な選択肢ではありませんでした。内戦が続いているからです。

彼はトルコからギリシャへの横断を2度試みました。3度目の挑戦でようやく成功し、ボートでコス島に到着しました。それは2022年3月のことでした。

1か月後、ヤヒヤさんはギリシャ政府から庇護についての前向きな決定を受け、ギリシャでの新しい生活を開始しました。ヤヒヤさんにとって、すぐに仕事を始めることは不可欠でした。彼は幼い頃から自立することを学んでいたのです。

その頃、ヤヒヤさんが暮らしていたコス島の一時滞在サイトでは、難民へ向けた就職フェアが開かれました。このイベントは、UNHCRが移民・庇護省およびその他のパートナー団体と協力して開催されたものです。これは、ヤヒヤさんのような難民が、島のコミュニティの多様な分野からの潜在的な雇用主とつながるための先駆的な取り組みでした。

就職フェアの参加者の中には、当時、コス島のホテルで新しい従業員を積極的に募集していたミティス・ホテルズ・グループの企業も含まれていました。ヤヒヤさんはコンピューター科学の学位を持ち、会計の仕事に就いたことがありました。パン屋でも働きました。観光業界での実務経験はありませんでしたが、それでもブルー・ドームス・リゾート&スパでの仕事のオファーを受けることに躊躇はありませんでした。勤勉なヤハヤさんは、これを本格的な職業の第一歩をギリシャで踏み出すチャンスと捉えたのです。

それ以降、ヤヒヤさんはホテルの清掃サービス部門の一員です。彼は同僚と共に、毎年何千人ものゲストを迎えるリゾートの寝具やタオルの管理を担当しています。彼は今でも、初出勤日と、その時のさまざまな感情を鮮明に覚えています。

難民が取り残されれば、すべての人々に包括的で公平な質の高い教育を、という国連の持続可能な開発目標(SDGs)は達成されません。しかし、学齢期の難民が教育を受けられるようになれば、難民は成長し、個人、受け入れ国、故郷の国々に利益をもたらすことができます。

「すべてが新鮮でした。この場所、人々、この仕事そのものが。ギリシャでの初めての仕事でしたし、興奮でいっぱいでした」と彼は言います。

ヤヒヤさんは元々控えめな性格ですが、仕事の話になると顔を輝かせます。仕事に就く過程で、UNHCRは彼の傍に立ち、必要な書類作成を通訳付きでサポートし、彼の権利と義務について伝えました。同様に重要だったのは、同僚たち、とりわけ上司のカテリーナさんからのサポートでした。彼女は彼を温かくチームに迎え入れ、彼の職務を説明し、銀行や公共サービスに関わる事務手続きを彼が完了させるために、業務外のことまで付き添ってくれたのです。

「この国にいて、ここでの物事の運び方が分かっている私たちにとって、初めてこの国に来る、誰を頼ればいいのか分からない人を助けるのは負担ではありません」とカテリーナさんは語ります。彼女はヤヒヤさんを“とても親切で礼儀正しく、問題を起こさない若者”と評しています。

ヤヒヤさんが働くチームはとても結束が固く、従業員同士が支え合っています。仕事中でも朝食休憩中でも、笑い声や冗談が聞こえてきます。かなりの仕事量にもかかわらず、彼らの最大の関心事は、互いの健康状態を毎日チェックし、必要な時には手を差し伸べることです。

毎日共に働くブルガリアから来たオリアさんは、ヤヒヤさんがチームの重要な一員であると感じられるよう、一層の努力をしています。

「職場で彼の国の言語を話す人がいないからといって、彼を放っておきたくないのです。私はできる限り彼を手助けします。私は彼を、他のチームの人々と分け隔てません。本当に、彼は私たちの仲間なのです」とオリアさんは語ります。

このような受け入れと包括の価値は、ホテルの文化に深く根付いています。ミティス・ブルー・ドームス・リゾート&スパ・ホテルの総支配人ミハリス・アンスラキス氏は、ヤヒヤさんを雇った人物です。彼は、このホテル・グループがいかに多様な国籍の従業員を受け入れ、調和のとれた共存環境を育んでいるかを説明します。

「さまざまな個性や国籍、さまざまな宗教、多くの言語、専門分野を採用し、多様な背景を持つ顧客にも同じように受け入れられる多文化的な環境を創造します」と彼は説明します。

ヤヒヤさんにとって、仕事は収入源であるだけではなく、地元のコミュニティに溶け込む手段でもあります。仕事を通じて定期的に新しい人々と出会い、ギリシャ語を少しずつ上達させています。ホテルの総支配人は、ヤヒヤさんが入社して間もない頃、コミュニケーションをとるためにオンライン翻訳ツールに頼っていたと振り返ります。ヤヒヤさんも今では、日々のやりとりに欠かせないいくつかのフレーズを覚えました。

「それは共同の努力であり、他の人々をありのままに受け入れ、提供すべきことで貢献するのを助け、チームに溶け込ませるのがホテルの文化なのです。母国を離れて自立し、新しい生活を築く人を私たちは支援しなければなりません」とアンスラキス氏は強調します。

ヤヒヤさんは2シーズン続けてホテルに勤務していますが、最初に感じたのと同じ熱意を持ち続けています。しかし、大きな変化もあります。それは、カテリーナさんやオリアさん、そして他の同僚たちが熱心に育てた、高まる献身と帰属意識です。

同僚たちに囲まれたヤヒヤさんはチーム全体を見渡し、心からの感謝を込めてこう振り返ります。「今年は、自分の居場所を見つけたような、今の自分の居場所がここにあるような気がします。経営陣は私たち従業員を家族のように扱ってくれます。それはとても重要なことです。」

UNHCRは国と協力し、専門的なNGOと連携して、ギリシャにおける難民の統合を促進する計画を実施し、彼らの自立を援助しています。これには、統合/雇用サービス、就職フェア、ギリシャ語クラス、職業訓練コースなどが含まれます。

UNHCRの統合プログラムは、アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、デンマーク、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、ベルギー、アイルランドの柔軟な拠出金によって実施されていています。

Maria Kouzinopoulou

原文はこちら(英文)
Yahya finds a job and a new family at a hotel in Kos


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