暴力から逃れ、チャドに集まるスーダン難民

スーダンの首都ハルツームでの戦闘は、瞬く間に同国のダルフール地域に広がり、数万人が国境を越えてチャドに避難しています

公開日 : 2023-06-08

武装した男たちが家に入って来た時、ハウェヤさんと家族は、スーダンのダルフール西部地域のテンダルティにある自宅で眠りについていました。

チャド、2023年5月24日 ― 「夫に銃弾が当たりました…同時に子どもも流れ弾を受け、私は(夫を)罵倒することを拒んだため、拷問を受けました。」

「彼らに棒で殴られました。今も左耳が効かないので、よく聞こえません。」

ハウェヤさんの夫はその傷が原因で亡くなり、彼女は負傷した息子を背負って、チャドとの国境に向かって徒歩で避難しました。

「他の子どもたちを残して去らなければなりませんでした。私がそこにいられなかったので、他の人たちが連れてきてくれました…私たちはすべてを置いてきたのです。」

ハウェヤさんと4人の子どもたちは、1か月前にハルツームで始まった対立する軍閥間の戦闘が国土の大部分を覆って以来、隣国チャドに逃れたスーダン難民9万人以上に含まれています。

再燃する民族の緊張

特に西ダルフールでは、紛争の影響を受け、既存の民族間・コミュニティ間の緊張が再燃しています。国内避難民のためのキャンプを含む公共施設や人道支援施設に対する略奪や焼き討ち等、民間人に大きな犠牲が出ていることが報告されています。

「テンダルティにはさまざまな民族のコミュニティがあり、彼らは攻撃を恐れています」とブライス・デグラUNHCRチャド上級緊急支援調整官は説明しました。「チャド側の国境でも、ここからそんなに遠くないところに町があると分かっているので、彼らは引き続き不安を感じています。」

難民は、広がる食料不安、気候変動の影響、コミュニティ間の紛争に苦しむ内陸国チャドにおいて、すでに悲惨な状況になっている人道危機を深刻化させています。国連によると、チャドの人口の3分の1以上に当たる690万人が人道支援を必要としているのです。その一方で、今回難民が流入する以前から、チャドは東部のスーダン難民40万人を含む、避難を強いられている人々100万人以上を受け入れていました。

動画:スーダンの危機からチャドに逃れた難民の母子

スーダンでの暴力を逃れてチャドに渡る難民は日々増加しており、その90%は女性と子どもです。多くは野外や木の下で過ごすしか選択肢はなく、国境近くの仮設シェルターで寝る人もいます。

「食料、衣服、シェルターも必要です」とハウェヤさんは語りました。「頭上を覆うものがありません。藁を探しに行こうと思っています。茂みの中で藁を見つけたら、シェルターを作ります。」

新たな到着者を受け入れる地元チャドの人々

UNHCRは、チャド政府やパートナー団体と協力して、新たに到着した人々の登録を行い、チャド東部に空輸した就寝用マット、蚊帳、石けん、調理器具を含む、命を守る援助を提供しています。さらに、UNHCRは、GBV(ジェンダーに基づく暴力)の防止と対応、危険にさらされている子どもの特定、特別なニーズを持つ人々への援助といった保護サービスも提供しています。

また、ファトナ・ハミドさんのような地元チャドの人々は、自らが困難な生活環境にあるにもかかわらず、スーダン難民に門戸を開いています。5人の子がいるこの母親(44歳)は、コーフロンの村の自宅で、ここ数週間で約50人を受け入れた、と語りました。

「彼らを見ていると心が揺さぶられます」

「危険な状況にあるこの人々を受け入れるのは、幸せなことです」と彼女は言いました。「子どもがいる人、病気で来る人が多く、彼らはシェルターを作れません。だから彼らは私の家に来るのです。」

自身もシングルマザーであるファトナさんは、子どもを連れて独りで避難する母親の苦境に共感した、と語りました。また、国境沿いのコミュニティと取引をしているため、到着者の何人かを知っています。

「彼らを見ていると心が揺さぶられます。私たちは貿易商なので、お互いを知っています。私たちは時々スーダンに商品を買いに行くので、彼らはここにある私の家も知っています」と彼女は言いました。

「彼女はいつも私たちに何か食べさせてくれるものを探しています」とハウェヤさんは語りました。「しかし、1~2週間以上の長期にわたって客人であることは、あまりにも酷なことです。この家を出ることを考え始めなければなりません。」

UNHCRと政府は緊急援助に加え、来るべき雨季を前に、難民を国境から約50km離れた既存の難民キャンプへ移転させ始めました。

「今、行動を起こさなければ手遅れになります」

「今、行動を起こさなければ手遅れになります」とデグラ職員は語りました。「あと数週間で雨季がやってきます。もし何の手助けもしなければ、道路は封鎖され、ここにいる難民はみんな動けなくなってしまいます。」

ダルフールの暴力行為で友人や家族を失い、家が焼き払われるのを目の当たりにしたファティムさんは、すぐにスーダンに戻れる希望は持っていません。

「紛争は終わっておらず、和解もありません。人々は故郷に帰ることを恐れています」と彼女は言いました。「将来、帰りたい人が帰れるように、人々の間に理解が生まれるように、神様にお願いします。」

Lalla Sy and Moulid Hujale

原文はこちら(英文)
Sudanese refugees fleeing violence flock to Chad


スーダン緊急事態

難民、国内避難民を含むすべての民間人の命を守り、また、避難を強いられる人々に必要な支援を届けることができるよう、UNHCRはすべての関係機関に呼び掛け、可能な限り迅速にスーダンのあらゆる地域で保護・救援活動を拡大していきます。どうぞ、今すぐご支援ください。

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