避難を強いられるLGBTIQ+の人々の権利の擁護を人生の目的にするコロンビアのトランス女性

マリア・ヴィクトリアさんは、コロンビアのチョコーで、国内避難民のLGBTIQ+の権利を守るために精力的に活動しています

公開日 : 2023-05-29

コロンビア北西部アトラト川のほとりにあるキブドの街を歩くと、アフロ・コロンビア系トランス女性であるマリア・ヴィクトリア・パラシオスさん(36歳)は、近隣住民から挨拶や笑顔、好意を受けます。彼女のカリスマ性と活動家としての役割は、コミュニティでよく知られています。

キブド(コロンビア)、2023年5月17日 ― マリア・ヴィクトリアさんは、幼い頃からリーダーシップを取る傾向があると感じていました。「ある時、“人権擁護者は生まれるのか、作られるのか?”という質問をされましたが、私の答えは“生まれる”でした。」

彼女はコロンビアのチョコーにあるキブドで育ちました。この地域は、長く続くこの国の武力紛争の影響を最も受けている地域の一つで、子どもたちは違法の武装グループに徴用されたり、自宅やコミュニティに監禁されたりすることが頻繁にありました。暴力に囲まれた彼女たちは国内避難のリスクにさらされ続け、うつ病、薬物乱用、さらには自殺の危険も高いのです。

ガイドを閲覧するマリア・ヴィクトリアさん
ラティドス・チョコー・オフィスにて、LGBTIQ+の権利に関する教育や法律に関するガイドを閲覧するマリア・ヴィクトリアさん

そんな中、マリア・ヴィクトリアさんは15歳の頃から、孤独や不安、苛立ちを感じながら困難な時期を過ごしている弱い立場の若者たちに、コミュニティに根ざした応急の心理的援助を施すようになりました。その中には、LGBTIQ+(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・インターセックス・クエスチョニング/クィアといったセクシュアルマイノリティ)コミュニティの人々もいました。保守的な家庭で、本当の自分でいることができずに育ったマリア・ヴィクトリアさんは、彼らの葛藤を理解していました。カウンセリングを通して、彼女は最終的に、拒絶されると分かっていても、自分の性的指向を家族に伝える強さを身につけました。時が経つにつれ、彼女は自分の人生の目的を見つけました。それはチョコーのLGBTIQ+の人々の権利を擁護することだと。

性的指向を標的にされて

コロンビアは世界で2番目に国内避難民の人口が多く、そのうち680万人が今も支援と解決策を必要としています。アフロ・コロンビアや先住民のコミュニティは武力紛争の影響を不当に受けており、避難の危険性がより高い一方、LGBTIQ+のアフロ・コロンビアや先住民は、性的指向を理由に武装集団の標的となる、さらに大きなリスクに直面しています。コミュニティ内で孤立しがちな彼らには、性同一性を放棄するか、家を出るかの2つの選択肢しかありません。

ラティドス・チョコーのオフィス前
マリア・ヴィクトリアさん、キブドのラティドス・チョコー・オフィス前にて

そうしたとしても、新しい土地にたどり着いたからといって、必ずしも平和を見出せるとは限りません。「トランスの人にとって、移転は逆襲、差別、暴力に耐えることを意味することが多いです」とマリア・ヴィクトリアさんは言います。

彼女が2015年に設立した団体ラティドス・チョコー(“チョコーの鼓動”という意味)の目的は、こうした事態を防ぎ、LGBTIQ+コミュニティの権利が保障されるようにすることです。

マリア・ヴィクトリアさんは10年足らずの間に、キブドのトランスの人々が高等教育を受けられるようにし、卒業時には卒業証書に自分のアイデンティティを反映させることができるようにしたのです。また、避難してきたトランスの人々があらゆる公共政策に組み込まれ、保健サービスを受けられるよう、トランスのコミュニティとキブド市との調整役となっています。

「私は必要とされていると感じるのです。だから私はここにいます」

そのすべてを、彼女は敵対的になりがちな文脈の中で成し遂げてきました。「人生のある時期、私はこのプロセスをあきらめたいと思いました。でも、電話がかかってきて“マリア・ヴィクトリア、私には問題がある”と言われると、私は必要とされていると感じるのです。だから私はここにいます。それが私の幸せです。

安全な空間の創造

「マリア・ヴィクトリアは、私たち全員にとって母親のような存在です」と、国内避難民のアフロ・コロンビア系トランス女性であるシャロクさんは合意します。「その役割において、彼女はカウンセリングの件だけではなく、すべてのことで一番です。また、彼女は、私たち全員が集い、悩みを忘れ、コミュニティとして共有することができる安全な空間を創り出しています。」

UNHCRと共に、マリア・ヴィクトリアさんは、国内避難民(そのほとんどが先住民やアフロ・コロンビア人)が多く住むチョコーの遠隔地を訪れ、LGBTIQ+の人々の権利について啓発活動を行っています。警察を含む地元当局を対象に、より包括的な社会へ向けたトレーニングを実施しています。

今年、UNHCRはラティドス・チョコーの積極的な行動や権利擁護の活動を援助し、この地域の他のLGBTIQ+団体とネットワークを強化するために連携しています。

彼女の次のプロジェクトは?ジェンダーに基づく暴力や避難の犠牲となったLGBTIQ+の人々のための安全な家「ラ・カーサ・ローザ(ピンクの家)」を創ることです。そこで彼らは、専門家や多分野にまたがるチームのサポートの下、癒しのプロセスを経ていくのです。

マリア・ヴィクトリアさんの願いは、いつの日か、自分が自分であることを理由に故郷を追われる人がいなくなることです。その日が来るまで、彼らをサポートするため、彼女はたゆまぬ努力を続けていきます。

「私たちは国家に伝えなければなりません“私たちはここにいる、生きている、これが私たちの身に起きていることだ”と」と彼女は語ります。「私たちは自由に動くことができ、性的指向や性同一性を理由に迫害を感じない人間である必要があります。」

Catalina Betancur Sánchez and Ilaria Rapido Ragozzino

原文はこちら(英文)
Colombian trans woman makes advocating for displaced LGBTIQ+ people her life purpose


難民を守る。難民を支える。

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