喪失と避難の末に慰めをもたらす、修復されたリビアの家
リビア東部の紛争から逃れた帰還民や家族を最も多く受け入れているベンガジでは、再建計画が人々の帰還と生活再建を支援します
公開日 : 2022-05-16
ベンガジ(リビア)2022年4月29日 ― リビア東部の都市ベンガジにある実家の廃墟に4年ぶりに戻ったジャリラさんは、ぽっかりと空いた窓、崩れた壁、灰の山等のかつて自分たちのものだったものよりも、失った大切な人々の思い出が今もこの空虚な場所に満ちていることに打ちひしがれました。
「目にした時にどんな衝撃を受けるか、分かっていませんでした。足を踏み入れた後、3日間は何も食べませんでした。感情的になっていました。家族のことを思い出していたのです」と、この47歳の慈善活動家は説明しました。
生活が引き裂かれる前、ジャリラさんが生まれたベンガジ旧市街のアル・サブリ地区にある大きな家には、1階に彼女と母親、上層階に家族と暮らす2人の兄が住んでいました。噴水と木陰のある中庭を囲んで家族の生活は繰り広げられ、暖かい午後には子どもたちが遊び、大人たちはお茶を飲んでいました。
2011年、リビアの元指導者ムアンマル・カダフィが倒された後の政治的混乱の中で、ベンガジが激しい戦闘に包まれた時、すべては変わりました。かつて約2万2,000世帯が暮らしていたアル・サブリは衝突の矢面に立たされ、ほとんどの住民が避難を余儀なくされました。その結果、爆撃を受けた石塊の山や崩壊した建物、弾痕だらけの建物等の破壊が、今日でもまだ目に留まります。
動画:破壊された故郷リビアへの帰還
リビア全土で16万8000人以上が暴力と政情不安の結果、国内避難民となり、さらに67万3500人がまともな住まいや基本サービスがないことが多い地域に帰還しています。ベンガジは最も被害の大きい地域のひとつで、国内避難民が約3万8000人、帰還民が約19万1000人います。
暴力行為が勃発した時、ジャリラさんと家族は、市内の別の場所に移動して姉のところに滞在しました。これが一時的なものだと思っていたのです。「所有物は何も持たず、ちょうど手に持っているものだけで出発しました。パスポートも、家族の本も、個人の書類もありません」と彼女は語りました。
しかし、暴力行為が広がっていくと一家は街を離れて東へ2時間ほど行った地中海沿岸の町バッタで親類と合流し、そこで18か月を過ごすことになりました。出発して数日後、アル・サブリの隣人から、自宅と家の中のものが火事で焼失したと連絡がありました。
「まるで誰かが死んだと言わんばかりに、私は泣き崩れました」とジャリラさんは思い出します。「そこには、私の人生のすべてが詰まっていたのです。私の持ち物はすべてそこにあり、私の書類は…すべてなくなりました。」
しかし、家を失ったことは、ジャリラさんの苦悩の始まりにすぎませんでした。2016年、一家はベンガジの賃貸住宅に戻りましたが、同年6月に長兄が、その直後に母親が、そしてその5か月後にもう一人の兄が、いずれも心臓発作で亡くなりました。
「母は帰りたいと願いながら苦悶の死を遂げました。長兄も同じです」と彼女は言いました。「母と兄弟を亡くした時、家だけ失くしたのならよかったのにと思いました。」
さらに1年間、市内の別の場所にいる親戚のもとに滞在して避難生活を送った後、2018年、ジャリラさんは安らぎを知る唯一の場所に戻る決断をしました。「私は家族の家に帰る決意をしたのです」と彼女は語りました。
彼女は作業を始め、部屋の瓦礫を片付け、なけなしのお金でレンガやセメントを買い、崩れた壁を作り直したのです。しかし、その規模はあまりにも大きく、いくら頑張っても彼女一人ではどうにもなりませんでした。
支援が届いたのは、UNHCRとパートナー団体のノルウェー難民評議会(NRC)が、市内で最も弱い立場にある人々が自分の家に戻れるよう支援することを目的としたシェルター再建プログラムの一環として、ジャリラさんに連絡した時でした。
査定後、新しい配管と電気システムの取り付け、新しいバスルームの設置、リビングルームの改修、窓とドアの交換、雨漏りの修理のために、チームがやって来ました。
「ここは私の王国です」
ジャリラさんは、ベンガジでこれまでにこのプログラムによる支援を受けた130世帯に含まれており、今年さらに多くの世帯が支援を受ける予定です。UNHCRとパートナー団体は個人宅の改修だけではなく、紛争で被害を受けた学校、診療所、病院の修繕も実施しています。
亡き兄の家族にいつか戻って来てほしい上層階の部屋など、家の大部分はさらに工事が必要ですが、ジャリラさんは自分の家に戻ったことに感激しています。
大切な中庭でお茶を飲みながら、彼女は何年も知らなかった平和な気持ちを語ります。
「ここは私の王国です…とても満足しています」と彼女は言います。「まだ家族が生きているような気がします。彼らの魂がまだここにあるようです。」
* 名前は保護のため変えられています。
Farah Harwida and Mohamed Alalem
原文はこちら(英文)
Repaired Benghazi home brings comfort after loss and displacement
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