戦争が始まり1か月、ウクライナの人口の約4分の1が避難

本稿はジュネーブの国連欧州本部(パレ・デ・ナシオン)で行われた記者会見における、カロリーナ・リンドホルム・ビリングUNHCRウクライナ代表によるリヴィウから報告の要約です

公開日 : 2022-03-30

2022年3月25日 ― この1か月で、ウクライナではすべてが変わりました。戦争のほんの2週間前、私は国連開発計画(UNDP)のウクライナ代表と共にウクライナ東部で1週間過ごし、アウディーカとポパスナにある障がいを持つ子どもたちと高齢者のためのコミュニティセンターを訪問し、開所式を行っていました。ウクライナ東部の地元当局やコミュニティと協力して人道支援/開発パートナー団体が8年以上かけて設立・修繕を手伝ったその他多くの民家や社会的施設と同じように、これらのセンターは今、瓦礫と化している可能性が高いです。

この1か月でこれらの開発は逆戻りし、私たちは8年前よりもさらに後退してしまったのです。今、私たちは刻々と広がっている大規模な人道的危機の現実に直面しています。

その状況の深刻さは言い尽くせません。

一夜にして生活は破壊され、家族は引き裂かれました。1か月で1000万人以上が家や所有物を残し、生きるために逃れることを余儀なくされました。650万人以上がウクライナ国内で避難し、370万人が国外への脱出を強いられました。この数字は日々増え続けています。治安リスクの高まり、橋や道路の破壊、安全な場所や宿泊施設に関する情報やリソース不足のため、被害を受けている地域に取り残され、避難できない人々が、約1300万人いると推定されています。

現在、ウクライナでは何百万人もの人々が絶え間ない恐怖の中で暮らしています。無差別の砲撃と激しい爆撃によって人々は日夜何時間も壕の中に避難することを余儀なくされています。

ドニプロ、ヴィーンヌィツャ、ウージュホロド、チェルニウツィ、リヴィウ、そしてドネツク、ルハンスクの非政府支配地域に新設された事務所で今働いているUNHCRウクライナの同僚たちも同様です。多くの国内スタッフは自らが国内避難民になりました。2014年以来2度目または3度目の国内避難となった人もいます。それでも、彼らは活動を止めません。他の避難を強いられている人々を助けようとする彼らの献身を目にして、感動を覚えました。

現在、国内の職員は154名、緊急派遣されている者も数名おり、対応力を強化し続けています。皆が日夜働いています。地元コミュニティ、ボランティア、自治体、そして当局が、人道支援対応を主導しています。この戦争が始まったまさにその時から、私たちが目にした現地の努力は本当に素晴らしいものです。そして私たちの目標は国や地域の能力を強化し、補完することであり、これは人道危機が拡大するにつれ、ますます必要となっています。

UNHCRはウクライナで、国連危機調整官主導のもと、機関間の連携による人道支援対応の中で活動しています。戦争から逃れる人々を迅速に救済するために、保護、シェルター、現金および現物給付の分野に重点を置いています。流動的な状況で先が読めない中、逃れて来る人々が安定を見出し、より安全な場所に落ち着けるよう支援しています。

UNHCRチームとパートナーの地元NGOは、国境地点、一時滞在/受付センターに配備されています。また、早急の保護アドバイスや救援物資を提供するため、砲撃に直接被害を受けた地域にも手を差し伸べています。

戦闘の被害を受けた地域の1000世帯以上に緊急シェルターキットが配布され、被害を受けた家々を修復し、風雨から身を守ることができるようになりました。ウクライナ中部と西部の受付センターには、マットレス、毛布、調理器具等の物資が届き、国内避難民の収容規模を拡大することができました。この支援により、少なくとも8万5000人が仮の住まいを見つけることができるようになります。今週だけでもUNHCRは非食料物資2万箱を、被害を受けた人々や受入センターに届けました。もちろん、これだけではすべてのニーズに応えることはできませんが、私たちはあらゆる機会をとらえて、支援を必要としている人々に手を差し伸べようとしています。避難所のニーズは甚大なため、国内避難民を受け入れている地域の地元当局と共に、受付/集合センターとして改修・再利用する建物を特定しています。これは当面のシェルターを提供するだけではありません。中長期的には、数百万人とは言わないまでも、数十万人の国内避難民が住宅支援を必要とすることは明らかなのです。

先週、ヴィーンヌィツャで、UNHCRが支援する受付センターの1つに滞在している、障がいを持つ20歳の娘さんの母親に会いました。キエフ郊外にある彼女たちのアパートは攻撃されたのです。彼女たちがこのセンターからすぐいつでも出られる訳ではないことが私には明白でした。彼女たちは、私が同じ受付センターで話をした弱い立場に置かれている他の家族と同様に、数か月から数年間、集合センターや公営住宅に滞在する必要があります。

私たちのチームは、ウクライナ西部だけではなく、中部や東部でも可能な限り、保護、避難所、支援プログラムを提供し、宿泊施設や重要なサービスを利用できるように取り組んでいます。私たちはリヴィウ州とザハルパティア州で多目的現金プログラムを展開し始め、これまでに数千人を登録しました。今後数日中にウクライナ中部と東部の6つの州で、さらに登録が行われる予定です。全体として、私たちは少なくとも避難を強いられる人々36万人に基本的なニーズを満たすための支援を提供することを目標としています。

ビリングUNHCRウクライナ代表
カロリーナ・リンドホルム・ビリングUNHCRウクライナ代表

それと同時に、機関間の連携による人道支援の輸送の一環として、マリウポリやハルキウ等といった甚大な被害を受けている地域に命を守る援助を提供する努力を続けます。UNHCRは人道支援通知システムに基づき、先週スーミに入った最初の輸送隊に加わりました。

しかし、人々、家族、コミュニティが、保護、避難所、支援、そして保健、教育、社会的保護といった基本的なサービスへのアクセスを、数十年とは言わないまでも、何年も必要とすることは明白です。この戦争の影響は、壊滅的で広範囲に及んでいます。

最も効果的な人道的救済は、この戦争を止めることです。それまでの間、私たちは被害を受けたすべての人々を支援するために、できる限りの努力を続けていかなければなりません。

原文はこちら(英文)
A month since the start of the war, almost a quarter of Ukraine's population are displaced


ウクライナ緊急:避難を強いられる家族に人道支援が急務です

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