UNHCRアフガニスタン事務所 シニア緊急対応コーディネーター 森山 毅 職員インタビュー
「避難民にとってUNHCRが『いちばん近い組織』であるように」
公開日 : 2022-03-01
アフガニスタンには国内で避難生活を送る人が約340万人います。その多くは土でできたような質素な住居に住んでいます。屋根があって、かろうじてドアや窓はありますが、冬は防寒も効かず、夏も熱を防ぐものはない、極めて最低限の“家”です。
2021年、アフガニスタンのほぼ全域で戦闘が行われました。武装勢力は民家に侵入して、そこを拠点にゲリラ戦を行いました。そのため避難民が暮らしていた家も数多く破壊されました。
壁や窓が無残に壊された避難民の家をたくさん目にしました。中にはドアが半分になってしまっていた家もありました。
UNHCRは被害を受けた避難民の家に応急処置でビニールシートを配布しています。避難民はそのビニールシートを壊れた部分に当ててなんとか雨風をしのいでいます。3万円、4万円あればしっかり直せるけれど、そのお金はない。ガラスは町で売っているけれど、避難民にはそのガラスが買えない。今、そんな避難民がアフガニスタン中にいます。
そして悲しいことに、それよりもっと厳しい状態にある避難民も本当に大勢いるのです。
皆様は2021年にアフガニスタンで約70万人が新たに避難したのをご存じでしょうか。
アフガニスタンには34の州がありますが、2021年、そのうち33州で戦闘が行われました。
国内の大半が戦場だったのです。命の危険に迫られ避難した約70万人のうち、約8割が女性と子どもでした。
私は今、シニア緊急対応コーディネーターという職務に就いています。
UNHCRアフガニスタン事務所の緊急支援の窓口となって国内外の関係各所とやりとりする仕事です。現場で何が不足しているか、何が課題なのか、どの援助活動を優先すべきか、など物事の優先順位をつけて緊急支援が滞りなく進むようにとりまとめるのが主な仕事です。
アフガニスタン国内のUNHCRの主な緊急支援は以下の3つがあげられます。
- シェルターの提供
- 緊急援助物資の配布
- 現金給付支援
このいずれも大切ですが、私は特に「シェルター」の重要性を感じています。
テントで長いこと避難生活を送っている避難民もたくさんいます。その避難生活は厳しいものです。アフガニスタンは山の多い国です。冬は場所によって最低気温が氷点下20℃になります。一方、砂漠地帯では夏は気温が40℃以上に達する場所もあります。厳しい気候の中、長期にテント生活を送るのは過酷です。
そしてちゃんとしたテントすらまだ得られていない避難民もいるのです。その人たちはまさにギリギリの状態で生活しており、日々命の危険を感じながら過ごしています。
私はしばしば現場に足を運んで避難民から直接話を聞くのですが、「今、何がいちばん大切ですか」と尋ねると、大半の避難民が「食料とシェルター」と答えます。食料の重要性は言わずもがなですが、避難民にとって、厳しい気候から身を守り、身体を休められるシェルターは食料と同じくらい大切なのです。
アフガニスタンでは一部治安が落ち着いてきた地域で帰還する人も出てきました。2021年に新たに国内で避難した約70万人のうち2021年11月時点で16万9000人が帰還しています。UNHCRはその帰還も支援しています。
一方、国内避難民の大半はいまだ先の見えない厳しい避難生活に送っています。アフガニスタンは現在銀行が機能しておらず、国全体が経済危機に瀕しています。避難民の大半は女性と子どもです。職を得ることも困難な状況です。UNHCRの調査や保護活動により、多くの避難民がひどい貧困と食料不足に陥っていることが明らかになっています。
2022年、避難民の生活はさらに厳しい状況になることが危惧されています。苦境を乗り越えられるよう、UNHCRはアフガニスタンの人々を支え続けます。
私はUNHCRの強みは「現場で直接、避難民から話を聞いていること」だと思っています。
避難民にとってUNHCRが「いちばん近い組織」であるように。
これからも避難民の近くでその声に耳を傾けながら、支援を届けていきたいと思います。
UNHCRアフガニスタン事務所
シニア緊急対応コーディネーター
森山 毅