シリアを想像して

11歳以下のシリア難民の子どもたち約200万人には、故郷の記憶はほとんどありません。そんな彼らに、自分にとってのシリアを絵に描いてもらいました。

公開日 : 2022-03-17

シリア危機は12年目を迎え、シリアの子どもたちは世代を越えて、母国を見たこともなければ記憶もないまま、隣国の難民として成長しています。

2022年3月15日 ― 過去11年間の紛争と情勢不安の中、シリア人約570万人がトルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプトに安全を求めましたが、その多くはすぐに帰国できる見込みはないと考えています。UNHCRのデータによると、半数近くが子どもで、3分の1は11歳以下であり、彼らは平和な祖国を知りません。

それでも、子どもたちの多くは、見知らぬ故郷に深い絆を感じ、いつか無事に帰れるという希望にこだわっています。親から聞いた話、祖国に残った親族との短い電話での会話、家族の写真やニュース報道から、彼らはシリアのイメージを心に持ち続けています。

この分離された世代が、彼らの人生の多くの側面を定義し続けているこの国をどのように想像しているかを知るために、UNHCRは、各地の若いシリア人を招き、故郷のイメージを描き、その結果について説明してもらいました。

日頃から自己表現と内省のためにアートを活用している教師や訓練を受けたカウンセラーの監修のもとで、子どもたちは母国への思いを語り合い、シリアの未来への希望を明かすことができたのです。

ヨルダン

アーメッド君(8歳)は、両親がシリア南部のダラアにあった自宅から逃れた翌日、国境を越えてわずか数キロメートル先のヨルダンで生まれました。彼の誕生は自分たちが築こうとしていた未来への希望の表れだったと、母親は彼に話します。

アーメッド君は、シリアを“虹がたくさんある場所”と想像しています。「雨の後、太陽が出れば虹が出るという意味です」と彼は説明します。「シリアは美しい国ですよね、最も美しい国です。なぜなら僕たちの国だからです。」

「あなたが思うシリアの姿を描いてください」と言われ、サジダちゃん(8歳)は止まってしまいます。「でも、シリアは破壊されています」と彼女は言います。過去11年間、戦争と破壊のイメージがシリアからの報道を支配しており、多くの子どもたちがそれ以外のものを想像するのに苦労しているのです。

代わりに、サジダちゃんはシリアがなってほしい姿を描くことに専念します。「これは私の家になります。ピンクは私の好きな色だからです。シリアのおじさんの家もピンク色でした。家の隣には海があります。毎日泳ぐことができるし、いつも太陽が輝いています。」

レバノン

シリア人を受け入れている多くの国々では経済が悪化し、難民の子どもたちに壊滅的な影響を及ぼしています。難民の10人に9人が極度の貧困状態にあるレバノンでは、食料難に直面し、家族を支えるために結婚したり、学校を退学したりする子どもたちが増えています。

デリゾール出身のアリ君(11歳)は、2016年に家族と一緒に離れたシリアで、当時遊んでいたおもちゃの車や野菜を届ける父親の車に乗っていたのをおぼろげに覚えています。

動画:想像の故郷を描くシリア難民の子どもたち

(※動画の設定で字幕をオンとしていただければ、日本語字幕が表示されます)

レバノンではベイルート郊外の自動車整備工場で働き、お客さんの車の塗装の手伝いで、家族を養っています。「ここにはおもちゃはありません」とアリ君は言います。「ここでは何もせず、ただ店で働くだけです。」幼い子どもの頃の思い出のオリーブやリンゴの木を見にシリアに帰りたい、と付け加えます。

現在11歳のオマール君は、両親がシリアを離れた時はまだ赤ん坊でしたが、彼らの話や残された親族から聞いた詳細な情報によって、祖国とのつながりを持ち続けています。彼の絵は、レバノンで難民として育った彼に与えられた二重のアイデンティティを反映しています。一方にはシリアの国旗が、もう一方には緑の杉の木があるレバノンの国旗が描かれているのです。「僕はシリアもレバノンも大好きです。ここでは楽しい時間も過ごすことができました」とオマール君は説明します。「だからこの紙を分けたのです。」

トルコ

アレッポで生まれ、2015年に家族でトルコに来たユセフ君(11歳)。シリアの記憶がないと言う彼が描くイメージの1つは、彼が聞いて育った紛争と破壊の報道を反映しています。炎を上げる戦車が武器を撃ち、黒いアスファルトの道路に横たわる人物。

「シリアと言われて思い浮かぶのは、戦争映画で見た戦車のようなものです」とユセフ君は言います。2枚目の絵には明るい虹のコラージュが描かれており、これは未来を表しているとユセフ君は語ります。この画像から、ユセフ君が故郷の出来事を意識しながらも、回復力と希望の感覚を保っていることがわかると、同席した心理学者は言います。

イラク

ディルカズ君(11歳)は、2015年にシリアのデリクから逃れて以来、イラク北部のクルド人地区ドミズ1難民キャンプで両親と暮らしています。「僕は学校に通っていて、4年生です」と彼は言います。「私は良いい生徒です。シリアで医者になり、私の仲間や親戚の間で、患者を治療し貧しい人々の世話をしたいのです。」

彼は、青空の下、木々が点在するなだらかな丘の風景を描きました。「僕は美しいシリアを描きました。木があり、水があり、雲があります」とディルカズ君さんは説明します。「シリアは良い所です。私の祖父が大きな家と羊と鶏を持っています。そこにはたくさんの村があり、緑の風景が広がっています。」

エジプト

ダマスカスのジョバル地区で生まれたイサム君(11歳)は、幼いころ家族と共にエジプトに逃れました。地元の賑やかな市場で父親と一緒にパンや肉を買うために行列をつくったかすかな記憶があります。しかし、彼が描くシリアのイメージは、祖母が語った実家の庭にある桜の木から生まれました。

「昔は、父が屋根に登ってサクランボを摘み、親戚のみんなに配ったそうです」とイサム君は語ります。「彼らは自分たちの庭を持っていて、いとこたちはその中で遊んでいた、と祖母は話してくれましたが、僕は覚えていません。」

Reporting by Lilly Carlisle in Jordan, Paula Barrachina in Lebanon, Cansin Argun in Turkey, Rasheed Hussein Rasheed in Iraq, and Radwa Sharaf in Egypt.

原文はこちら(英文)
Imagining Syria


シリア危機11年 その一歩はいつか、シリア再建への一歩に。

シリア危機が始まってから11年。破壊された故郷で、暮らしを立て直そうと前に踏み出す人たちがいます。シリアの人々に今必要な支援を届けるため、何卒ご協力をお願い申し上げます。

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