From the Field ~難民支援の現場から~ With You No. 47より / UNHCR南スーダン・ジュバ事務所 准渉外担当官 小坂順一郎

公開日 : 2022-06-08

南スーダン・ジュバ事務所
小坂 順一郎(こさか じゅんいちろう)

南スーダンのマバン難民キャンプにて

私は子どもの頃から人と同じことをするのが嫌で、「日本人だから」「子どもだから」などとひとくくりにされるのが苦手でした。入団していたボーイスカウトを通して経験した、チームワークや野外活動、「備えよ常に」*という姿勢などは、今のUNHCRの活動に通じるものがあると感じています。 *「いつ何が起こっても対処できるよう準備を怠らないように」というボーイスカウトのモットー
大学に入ったのは、冷戦が終結しソ連が解体した頃でした。「これからは平和な時代になる」と思ったのも束の間、湾岸戦争や、ルワンダ、コソボで内戦や民族浄化が起こりました。緒方貞子さんが国連難民高等弁務官として活躍されていた時で、UNHCRのことを初めて知りました。イギリスへ留学後、UNHCRの職員と話す機会などがあり、縁あって働くことになりました。

駐日事務所では、2006年から主に資金調達、政府機関との調整、NGO等との連携等を担当しました。東日本大震災後には被災地で活動したり、2016年にはウガンダへ緊急対応チームの一員として派遣されたり、東京オリンピックでは難民選手団をサポートするなど様々な経験ができました。駐日事務所で勤務が15年となり、さらに経験値や能力を上げるために、思い切って外に出ることに決めました。現場には、以前は自身が難民だったり、旧ユーゴ危機の際に国内避難民となり、その後UNHCR職員となって緒方さんと一緒に働いたセルビア出身の人や、アフガニスタンで16年間電気技師だった人など、想像もつかないような経歴の職員がいて、「難民支援は仕事というより人生そのもの」という人もいます。そうした環境で視野を広げたい、東京とは真逆の環境で挑戦したいと考えました。

今は南スーダンで、資金調達、ドナー国等への報告書作成、現地視察の調整等を担当しています。南スーダンは2011年に独立した世界で一番新しい国ですが、誕生した瞬間から満身創痍のようなもので、ありとあらゆるものがなく、国の豊かさを健康、教育、所得の側面から評価する人間開発指標では、189カ国中185位であり、5人中4人は貧困層です。 また、3年連続で洪水が続き過去60年で最悪の被害となっており、新型コロナやウクライナ危機の影響により経済は悪化し、人道支援が行きわたらない可能性も出ています。常に国内のどこかで紛争や災害が起こっているような状況で、水や食料、物資、医療など生存に不可欠な支援が必要であると同時に、教育や自立生計支援、インフラ整備、平和的な紛争解決の手段の確立など、必要なことを挙げるときりがありませんが、人々が自分自身の国に「希望」を感じられるような支援も必要だと感じます。

先日コンゴ民主共和国からの難民の女性に会ったのですが、彼女は看護師で、1人で17人もの子どもを育てています。UNHCRなどの支援で借りた農機具で農作物を育て、その収入で自転車を買って貸し出したり、女性グループでパンを作って販売し、得た収入でミシンを買い、制服制作の契約を得るなど、エネルギーあふれる姿には感銘を受けました。 一方で、ウガンダで活動した時のことも忘れられません。南スーダンから毎日2千人以上が続々と国境を越え逃れてくる緊急事態の中、支援の歯車を回すのに精一杯で手厚い支援は難しい状況でした。5年たった今でも「もっとこういう支援ができたのでは」「あの人はどうなったのだろう」と、支援しきれなかった人たちの顔が浮かびます。

UNHCRは、難民がいる場所に必ず職員を派遣し、一緒に考え共に苦境を乗り越える、現場と難民・国内避難民に一番近い国連機関です。
故郷を追われ、住居や財産を失い、今まで頑張って培ってきたものをすべて失った人たちが、再び人間としての尊厳をもって生きて行けるように支援をします。
国境を超えたときは身分証明書もなく何者でもない人たちが、難民登録やカウンセリングを通して名前、家族構成や出身地域が記録され、生活を再建するための物的・人的支援が行われます。あたかも灰色の存在に、少しずつ色が付けくわえられて、再び人間らしい生活が少しでもできるように、UNHCRは、ほかの国連機関、NGO、政府や受け入れコミュニティ、そして難民・国内避難民と力を合わせて活動しています。
命を救う支援から、教育や女性支援、生計支援に至るまで、「人間」に関わることはすべてやる。それがUNHCRの総合力であり強みです。UNHCRを通して、世界で家を追われた人々をご支援いただければありがたいです。

プロフィール

国際基督教大学・大学院卒。UNHCR駐日事務所にて資金調達、アドボカシーとパートナーシップ構築を担当、現在はUNHCR南スーダン・ジュバ事務所にて准渉外担当官。

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