地元に根づく:ミャンマーの避難民コミュニティの再スタート

ミャンマーのカチン州では、長期に渡って避難を強いられているコミュニティが、生活を再建する機会を得ています

公開日 : 2022-08-23

木とトタンでできた新居を案内するヌダウ・ラ・ロウさん(46歳)、満面の笑みを浮かべています。

ミッチーナ(ミャンマー)2022年7月29日 ― 「どれだけ幸せか、言葉では言い尽くせません。これからは私も子どもたちも楽に暮らせそうです」と彼は言います。

ヌダウ・ラ・ロウさんの一家が引っ越してきたのは2021年12月。彼らは、ミャンマー北東部カチン州の国内避難民が設立したウェインマウ郡の新しい村、マイナ・サット・チャイに移住してきた最初の人々です。2012年以降、カチン独立軍(KIA)とミャンマー軍(MAF)の武力紛争により、ほとんどの人々が避難生活を強いられていました。

“サット・チャイ”とは、現地のカチン族の言葉で“繁栄”を意味します。近隣のキャンプでの苦難の10年の末、より良い未来への希望を込めて、住民たちが名づけました。2018年、この地域の地主から土地を売る申し出があり、キャンプの住人たちは新たな生活を始める機会を得ました。マイナ・サット・チャイは、数十世帯の避難家族が個人の貯蓄や親類からの借り入れで個人用の区画を調達して誕生しました。

「かつて、私たちは10世帯と一緒に長屋で暮らしていました…」

UNHCRの地元パートナー団体であるカルナ社会連帯(KMSS)が移転した各世帯に家を建設し、まもなく工事が開始されました。現在までに33世帯が移住し、近い将来にはさらに65世帯が移住する予定です。

「かつて、私たちは10世帯と一緒に長屋で暮らし、すべてをそこでこなしていました。暑くて騒がしく、狭かったです…プライバシーを確保するのは大変でした」とヌダウ・ラ・ロウさんは語ります。

今、彼の家族は3棟に連なる6000平方フィート(約1800平方メートル)の広々とした2つの区画に、3つの連結した建物を建てて暮らしています。メインの建物は家族のリビングルームとして機能しています。2つの小さな建物は、独立した台所と、彼の妻が雑貨を売るお店としてそれぞれ役立っています。「このお店は私のお気に入りです。村の入口に面していて、今新たに隣人となったかつてのキャンプの住人と出会えるのです」とヌダウ・ラ・ロウさんは言います。

避難する人々にとって、終わらない戦闘と情勢不安のため、元の村々に戻る展望は暗いままです。しかし、カチン州では、キャンプを出てマイナ・サット・チャイのような避難民コミュニティがより統合しやすい地域に移動する機会を見出す例がますます多くなってきています。2021年2月1日にミャンマーが軍部に掌握された後、全土で武力紛争が激化する中、昨年は9万5000人のカチン避難民の人口のうち2300人以上が19か所に移住し、生活を再建しようとしています。

「課題がないわけではないですが、このようなコミュニティ主導による取り組みは、10年の避難を経たコミュニティがより良い未来を築くための重要な第一歩になります」と、州都のミッチーナで、アンドリュー・モクUNHCR事務所長は語りました。

マイナ・サット・チャイさんの実際の未来を守るため、住民たちは重要なインフラの整備を率先して提唱してきました。清潔な水を引いてくるための手動ポンプの井戸を自分たちで作るのみならず、KMSSとUNHCRに支援を求め、コミュニティにトイレも設置しました。また、この村では、電柱と電線が徐々に設置され、電気網への接続が進められています。

「避難した時、私の3人の子どもたちは幼かったです…彼らに最良の未来を与えたいのです」

ヌダウ・ラ・ロウさんは未来に希望を持ち続けています。彼は独学で大工のスキルを学び、家具を作る仕事を始めたいと望んでいます。「現在、キャンプで工房を開いています。マイナ・サット・チャイに電気が通じるようになったら、自分の手で新しい工房を作り、そこからビジネスを伸ばしていくつもりです。」

マイナ・サット・チャイはエーヤワディー川の対岸にあるミッチーナに比較的近く、定住するには魅力的な場所です。この町は教育、ヘルスケア、就業機会の中心地です。

「避難した時、私の3人の子どもたちは幼かったです。そのうち2人はミッチーナの大学に行っています。彼らに最良の未来を与えたいのです。彼らが自分自身を養うだけではなく、私や妻が年老いた時に面倒が見てもらえるように」と彼は言います。

Reuben Lim Wende

原文はこちら(英文)
Going local: A fresh start for displaced communities in Myanmar


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