UNHCR・UNWOMEN共同報告書 「アフガニスタン危機アップデート:避難民の女性と女子の現状」

この記事は、UNHCRとUN Womenが作成した報告書「アフガニスタン危機アップデート:避難民の女性と女子の現状」の内容を抜粋したものです。

公開日 : 2022-04-21

2021年8月にアフガニスタン政府がタリバンの支配下に置かれたことで、女性や少女が自国において基本的権利を行使する能力はさらに制限されています。

長年にわたる紛争や最近の政変がもたらした女性の権利の制限により、多くの女性とその家族がアフガニスタン国内または近隣諸国に安全を求め、故郷を追われざるを得なくなっています。

2021年のデータは、難民、国内避難民をはじめアフガニスタンの人道的状況の影響下にある人々の数が増加していることを示しています。彼らの見通しは 帰国するにしても、他の場所に避難するにしても、必ずしも明るいとは言えません。

UNHCR・UNWOMEN共同報告書 「アフガニスタン危機アップデート:避難民の女性と女子の現状」では、国内避難民や海外に逃れたアフガニスタンの女性と女の子たちが直面するニーズ、リスク、障壁を検証しています。

 

 

 

アフガニスタンの女性の多くは家族をともなって避難の旅へ

2021年、アフガニスタンの避難民の総数は、国内でも国境を越えても大幅に増加しました。
新たな国内避難民の人数はタリバンによる占領前の7月に大きなピークを示しました。家族とともに避難する人が多かった一方、多くの家族が避難の途中で離散しました。

2021年のデータによると、国内避難民のうち女性の割合は男性とほぼ同じ21%です。残りの58%を18歳以下の子どもが占めています(図1)。しかし、国外へ避難した人たちの家族構成を見ると、男女差があることがわかります。2021年の間に、パキスタン、イラン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの各国で庇護を求めた約8万人のアフガニスタン人のうち、女性と女児が占める割合は46%と推定されます(図2)。

またデータからは、全体として、男性よりも女性の方が、子どもやその他の扶養家族を連れて国外に避難する傾向が強いということも見て取れます(図3)。

(図3)

2021年に2021年にパキスタンとイランに逃れたアフガニスタン人のほぼ全員が、「暴力と不安」を主な避難の要因と答えています。2 番目に多い要因は「特定の安全上の不安」であり、この回答は女性や少女に突出しています。またイランでは、女性や女子の多くが避難の理由に「差別」と回答しています(図4)。

(図4)

最近のアフガニスタンからの報告では、強制労働など女性や少女の安全に対する脅威が懸念されています。強制結婚、女性デモ参加者への殴打、女性の人権活動家、女性裁判官、女性警察官が標的とされているとの報告もあり、女性や少女の移動と教育の自由が制限されることによって脅威はさらに深刻化しています。

さらに、女性や少女は、親密なパートナーによって行われる暴力のリスクにもさらされています。2021年の危機以前から、アフガニスタンでは女性に対する暴力が蔓延しており、危機以降は状況がさらに悪化していることが予想されています。

難民・避難民の女性には避難生活においても多くの困難が

避難民は、自分自身や家族のためのシェルター探しから、仕事や栄養のある食料の確保まで、さまざまな課題に直面しています。また、近隣諸国で避難生活を送るアフガニスタンの女性と少女は、性と生殖に関するケアを含む基本的な医療支援を受けるのにも多くの困難に直面します。

パキスタンのデータによると、シェルター、生計手段、食料へのアクセスが難民に最も必要な支援として挙げられています(図5)。いずれの支援分野においても、女性のニーズは、男性よりも高い数値を示しています。

さらに、難民の女の子は、社会的規範や貧困により、学校に通うことができないという課題にも直面しています。2019年、パキスタンにおける難民男子の小学校総就学率は92%であったのに対し、難民の女子の就学率は70%にとどまりました。教育の欠如は、難民女性が生計の手段を得て貧困から脱するための障壁となっています。(図5)

(図5)

資金不足と必要書類の不備が国内避難民女性への支援を阻んでいる

同国ではサービスの欠如により、多くの人が極度の貧困に陥る危険性が高まっています。イアフガニスタン保護クラスターが実施した調査では、回答者の63%が、生活支援や保健支援、避難所、そして教育などの支援が利用可能であっても、彼らのコミュニティのメンバーはそれを利用することができないと回答しています。最も多く挙げられた障壁は、サービスの料金を支払うことができない、支援に必要な書類がないなどでした(図6)。

(図6)

特に女性は非正規雇用の可能性が高く、正規の教育を受ける可能性も低いため、サービスを受けることが困難な場合があります。女性の23%が書類の不足を指摘しているのに対し、同じ回答をした男性は10%でした。アフガニスタンの国内避難民の場合、文書がないリスクはさらに高まります。貧困や安全への懸念と相まって、国内避難民の女性や女子にとって、書類の不備はサービス利用を特に困難にしている可能性があります。

避難生活の中で暮らすアフガニスタンの女性と少女は、ホスト・コミュニティとの対立関係、不安定な生活環境、限られた移動の自由、保護と救済メカニズムへの限られたアクセスの結果として、性暴力のリスクが高まっている可能性もあります。

アフガニスタン保護クラスターが実施したグループディスカッションでは、回答した女性のほぼ35%が危険を感じていると報告し、8%が危険を感じる具体的な理由として性暴力のリスクを指摘しました。グループで挙げられた他の理由としては、不安の増大や武装集団の存在などがあります。アフガニスタン国内では、性暴力への公的支援の多くは廃止され、残っている支援を利用するためには法的な書類が必要です。

また、紛争解決のメカニズムが、帰還民や避難民よりも受け入れコミュニティに有利に機能していることを示すデータもあります(受け入れコミュニティ側の回答者の87%が「紛争は解決された」と答えたのに対し、国内避難民で同じ回答は77%でした)。これらのメカニズムを利用する際の主な障壁は費用であることもわかっています。

バダクシャンやヘラートなどの地方では、公的支援の提供者に女性スタッフがいないことが障壁として挙げられていますが、現在アフガニスタンにおける公的サービスに女性事業者が占める割合についてのデータはありません。

2021年12月25日現在、アフガニスタン国内の9つの州では、女性人道支援スタッフに関する(政権側の当局との)協定が部分的にしか結ばれていません。女性スタッフがすべてのセクターで働ける能力を確保した支援団体がある一方で、保健と教育での業務に関する協定しか確保できなかった団体もあります。このため、349万2666人の女性(アフガニスタンの女性と女子の18%以上)が、女性スタッフによる支援を利用できないか、利用が制限されたままになっています。

現在、部分協定の拡大を主張するため、事実上の当局との交渉が行われていますが、ほとんどの場合、口頭での約束にとどまっています。特に保守的なコミュニティでは、ニーズ調査や援助提供のためであっても、女性や少女と話すことが許されているのが(数少ない)女性スタッフのみであることが懸念されます。一方で、女性の人道支援スタッフの活動が認められている場合でも、男性の付き添いを条件としていることが多く、これが女性や女子が特定のニーズを開示することを躊躇させ、調査回答に影響を与えている可能性があります。

 

原文はこちらをご参照ください。(「アフガニスタン危機アップデート:避難民の女性と女子の現状」(英語))

 

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