ウクライナ危機が生み出す新たな人身売買の危険

ウクライナから数百万人の難民が逃れて来る中、支援機関は性的搾取や虐待、人身売買の危険性について警鐘を鳴らしています

公開日 : 2022-04-25

ポーランドのメディカにある国境検問所では、疲れ切ったウクライナからの難民(その多くは子ども連れの女性たち)が、荷物を引きずりながら出国審査から続くゲートに続々と姿を現します。

ジェシュフ(ポーランド)2022年4月13日 ― この先には、新たな到着者に食料、水、衣服、子どもたちのためのおもちゃやお菓子等を提供するボランティアがいる支援テントが並んでいます。ドイツから運んできた小型のグランドピアノで『イマジン』を弾く男性の横を、寄付品を満載したショッピングカートを押すボランティアたちが小走りに通り過ぎていきます。

難民の多くは、次の旅に向かう無料バスの列に加わるため、急いで通り過ぎます。プシェミシル、ルジェズフ、ワルシャワの駅や避難所では、同じようにさまざまなボランティアに出会います。既存の援助機関や民間企業で働く人もいますが、多くはウクライナの戦争から逃れて来た人々のために、少しでも快適さと援助を提供したいという動機からやって来た個別の人々です。

「手伝おうと決意しました。これが人間らしさです」

目立つベストを着た小学校教師のマグダレナ・ロキータさんは、危機が始まって以来、ウクライナ国境から約65キロ離れたジェシュフの駅でボランティアをしています。「組織に所属していません」と彼女は語ります。「午前中は時間が空いたので、手伝おうと決意しました。これが人間らしさです。」

ウクライナでの戦争が始まった最初の数週間、ポーランドやその他の国々に何十万人もの難民が押し寄せた時、マグダレーナさんのようなボランティアが夜通し結集し、新たな到着者を手助けしました。このようなボランティア活動の大規模な盛り上がりは国際的に称賛されていますが、戦争開始から7週間が経過し、人身売買業者や犯罪ネットワークがこれに乗じているのではないかという懸念が高まってきています。

ジリアン・トリッグスUNHCR保護担当高等弁務官補は4月12日の声明で「ウクライナからの難民に対する寛大さと連帯感には胸を打たれますが、各国は略奪者や犯罪ネットワークがこの状況を利用するのを阻止しなければならなりません」と指摘しました。

「私たちは厳戒態勢を敷き、難民の弱みに付け込み、無料の交通手段、宿泊施設、雇用、その他の支援を約束して誘い出そうとする略奪者や犯罪ネットワークの危険性について警告しています」と彼女は付け加えました。

すでに何人のウクライナからの難民が、人身売買や虐待の餌食になっているかを知ることは不可能ですが、ポーランドで性的搾取・虐待防止活動を調整するナディア・アブ・アムルUNHCR職員は、そのリスクは明らかだと言います。

最も明白なのは、ウクライナから逃れてきた人々の女性と子どもの割合は高く、約90%を占めるということです。

3月下旬の時点で、ボランティアを登録し、国境地帯にアクセスするさまざまなグループや人々を監視するシステムがメディカのような国境地点になく、管理体制の欠如、ということも、もう一つの危険性です。

「この巨大なボランティア部隊は、突然の事態に飛び込んで対応し、素晴らしい働きをしましたが、それは諸刃の剣でもあります」と、すべてのボランティアがどこから来たのか、どの程度のトレーニングを受けているのかを知ることは不可能だった、と指摘するアブ・アムル職員は語ります。

また、多くの難民が一刻も早く国境から先へ進みたいと願っていることも、大きなリスクの要因だとアブ・アムル職員は言います。ポーランド政府は、難民のために公共交通機関を無料で利用できるようにしましたが「可能な限り最速で通過しようとする人々が、乗せてくれる人の車に乗る、という証言が多いのです。」

アンジェリーナさん(18歳)は観光経営の勉強をしながら3年前からポーランドに住んでいますが、戦争が始まった時はオデーサの家族を訪ねてウクライナにいました。すでに彼女は2月26日分の帰りの切符を持っていたので、それを使うことにしました。4人用の車両に11人が乗りました。国境に近いポーランドのプシェミシル駅に何とかたどり着いた時、たくさんの支援の申し出に彼女は圧倒されました。

「疲弊していて、IDを聞こうとは思いませんでした」

「最初、ボランティアの人々が荷物を運んでくれたり、食べ物を提供してくれたり、ある人は駅から宿泊先まで送ってくれると言ってくれました。私は疲弊していて、IDを聞こうとは思いませんでした」と彼女は語り、携帯電話の追跡機能を有効にし、友人と位置情報を共有していたことを付け加えました。

その男性は彼女を無事に目的地まで送り届けましたが、このようなシナリオの危険性は明白です。

ジェシュフ駅のボランティア、マグダレナ・ロキータさんは、自分や仲間のボランティアには、乗車を提供する人の身元をチェックする仕組みがある、と語ります。「免許証の写真を撮り、難民が一人で旅をしないように配慮しています」と彼女は言います。「知らないドライバーを見かけたら、書類が揃うまで受け付けないようにしています。」

このような臨機応変なアプローチは素晴らしいが、組織的なシステムに置き換えることが急務、とアブ・アムル職員は言います。UNHCRは、難民の支援や移送を行う団体や個人のボランティアを登録・審査する点検体制の強化を求めています。

また、UNHCRは難民登録を担当する各国当局と協力し、専門スタッフや訓練を受けたボランティアによる追加的な支援を必要としている最もリスクの高い人々を特定するための支援を実施しています。危機の初期に、UNHCRは啓発キャンペーンも開始し、国境の両側にいる難民に、どのように自分を守り、性犯罪や犯罪行為を通報すればよいかという情報を印刷物にして配布しています。

特に弱い立場に置かれた女性や子ども、ジェンダーに基づく暴力(gender-based violence)の経験者、その他の脆弱な難民のための詳しい情報やサービスは、「ブルードット」ヘルプデスクやUNHCRによるウェブのヘルプページからも入手可能です。UNHCRと国連児童基金(UNICEF)はこれまでに、国境付近とワルシャワとクラクフの専用スペース3か所にブルードット・デスクを設置し、そこでは難民はUNHCRの現金給付プログラムに登録しています。

加えて、UNHCRは国際移住機関(IOM)と共に、国境で働くボランティアに対して、不審なものを見かけたらどうするかなど、人身売買のリスクをより認識するための研修を実施しています。このトレーニングのもう一つの構成要素として、援助の見返りに何かを要求することの禁止など、人道的活動における性的搾取や虐待からの保護に関する基本原則のいくつかが網羅されています。

「ボランティアがここに来て、信じがたいほど弱い立場に置かれた人々を相手にする時、そこには大きな力があるのだということを認識してもらうことが、その一端です」とアブ・アムル職員は言います。

「ボランティアの方々の努力は本当に賞賛に値するものであり、その存在をここで有効に活用したいです」と彼女は付け加えます。「私たちがすべてを見ることはできませんが、適切な注意喚起とトレーニングによって、彼らが私たちの目となり耳となってくれるのです。」

【動画】ウクライナ:国境での人身売買の危機から難民を守る

Kristy Siegfried

原文はこちら(英文)
Ukraine crisis creates new trafficking risks


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