ニュースレター「With You」45号 特別インタビュー 日本のシリア難民学生・スザンさん
公開日 : 2021-06-09
皆さんは、日本にも多くのシリア難民の方が暮らしていることをご存知でしょうか。
UNHCRの支援を受け、日本の大学院で学ぶスザンさんに話を伺いました。
■ こんにちは!ご自身について教えてください。
シリア出身のスザンと言います。趣味は音楽鑑賞、読書、写真撮影、旅行です。ベジタリアンフード、お寿司も好きです。RHEP(UNHCR難民高等教育プログラム)を通じ、大学院で学んでいます。
■ いつ日本に来ましたか?第一印象は?
2018年です。日本で勉強することは夢の一つでした。私は幼い頃から多くのアニメを見て、日本に魅了されていました。一番好きなアニメは「ジョジョの奇妙な冒険」です。日本について基本的なことは知っていましたが、大変なことの一つはラッシュアワーの満員電車に乗ることですね。日本の自然の美しさはリラックスできて、平和を感じて大好きです。日本の技術、歴史にも興味を持っていました。戦後に復興を遂げたことは、他国にとって良いお手本だと思います。
■ スザンさんはトルコのNGOで働いていたそうですが、どんな活動を行っていましたか?
日用品や医薬品など物資の調達です。シリア難民キャンプ全体のマネジメント、例えば水や電気の供給、輸送、教育プログラムなどにも携わっていました。シリア国内の包囲されていた地域でも活動しました。調達はとても大きな責任があり、難しい仕事です。私は、ただ人々の笑顔を見るだけでうれしい思いになりました。支援をすることで誰かが幸せになるのを見ると、大きな喜びを感じたのです。
■ なぜRHEPに応募しようと思いましたか?
私はシリアで、紛争のために希望通りに教育を修了することができませんでした。大学生の時は、戦闘の中を通学しなければならず、強いストレスを感じてつらかったです。でも、どんなにつらくても単位だけは取ると決めていたのです。なんとか卒業してトルコに移りましたが、教育を続けるのは困難でした。日本にはRHEPというチャンスがあり、日本で修士号を取るという夢が叶うと思いました。今日本の大学院で国際関係を勉強しています。
■ 日本で一番うれしかったことを教えてください。
日本に来て一番うれしかったのは、大学院に合格できたことです。そのために本当に一生懸命勉強しましたから。その後、以前から行きたかった長崎に行きました。リラックスできて驚きに満ちた旅でした平和公園は素晴らしかったです。長崎がどれだけの苦難を経験し、復興したのかを感じることができました。長崎は希望の街であり、私にとって特別な場所で、本当に大好きです。
■ 日本に来る前の生活はどうでしたか?シリアの最も恋しいことは?
日本に来る前はシリアでは紛争のさ中で、その記憶が今も頭に強くこびりついています。家族や友人が一番恋しいです。紛争前のシリアは本当に素晴らしい場所でした。私は自然の中や歴史的な場所を訪れるのが好きでした。シリアの人々は本当にフレンドリーで、訪れる人をできる限り歓待しようと努めます。私のお気に入りの場所はクラック・デ・シュヴァリエ城です。ジブリアニメのお城のモデルになったとも言われています。山の上にそびえるとても美しい場所です。
■ 日本の人にシリアの何を一番知ってほしいですか?
シリアは長い歴史を持ち、ダマスカスは世界で最も古い街です。世界最古の文字や物語「ギルガメシュ叙事詩」も生まれました。世界で最も有名な女神イシュタルはアニメ「Fate」にも登場します。また、パルミラ帝国のゼノビア王女も有名です。多くの有能な人々が暮らし、地中海に面していて四季があり、とても美しい国です。ピスタチオやオリーブオイルなど体に良い食べ物も有名です。平和になったら、ぜひシリアを訪れてほしいです。素晴らしい体験になると思います。
■ このニュースレターのテーマ「立ち直る力」という言葉から、誰を連想しますか?
最近亡くなった私の母です。母は癌を患っていましたが、常にファイターでした。彼女は4度の癌の転移と闘い痛みを抱えていましたが、いつも笑顔を見せてくれました。私たちに常に最善を尽くすよう話し、教育を受けることをサポートしてくれました。どんなことが起こっても、夢を実現するために強くありなさいと教えてくれました。
「レジリエンス」(立ち直る力)という言葉は私にとって、常に私の母を象徴する言葉です。
■ 日本での勉強を終えた後、何をしたいですか?
日本で博士号まで終えたら、難民をサポートする機関で働きたいです。自分が多くの人に支えられてきたように、多くの人を支えたい。一番働きたいのはUNHCRです。

■ 日本の支援者の皆さんへメッセージをお願いします。
皆さんのすべてのご支援に、とても感謝しています。このご支援なしに、私は今こうしてここにいることはできませんでした。私はこの奨学金のおかげで前へ進むことができました。恩返しのために、言葉だけでなく行動で示したいと思っています。
世界には、最善を尽くして社会に貢献したいと願っていても、その手段がなくサポートも得られない難民が多くいます。皆さんの支援はとても重要です。人々の人生を変えることができます。社会の一員としてスキルを身に着け、前へ進むことを可能にします。皆さんのご寄付は、難民が奪われ拒否されている権利を取り戻し、すべての土台となります。
私は今、ご支援のおかげで夢見ていた勉強をすることができ、将来につなげることができます。私はこのご支援を、世界で苦しんでいる人々のために広げたいと思います。こうしたサポートが必要なすべての人に支援が届くことを願っています。
UNHCR難民高等教育プログラム(Refugee Higher Education Program - RHEP)とは
日本に住む日本国籍を持たない難民の方が、奨学金を受けながら日本の大学で就学できるよう支援するプログラム。UNHCR駐日事務所と国連UNHCR協会が運営し、12の大学* がパートナー校となっています。(* 2021年5月現在)
UNHCR難民高等教育プログラム https://rhep-japanforunhcr.org/