認知されるため、紆余曲折の道に直面する多くのイギリスの無国籍者

近年の進歩にも関わらず、今も世界中で数百万人が隠された国籍の問題に影響されていることが、UNHCRの調査によって明らかになりました

公開日 : 2021-05-06

ロンドン(イギリス)2021年4月29日 ― 70年以上、ベンジャミンさんには多くの人々が当たり前だと思っている何かが足りていません。それは、国籍です。当時は南アフリカの一部だったナミビアに生まれ、誕生時に国籍を取得しませんでした。なぜならその時、両親にはこの国の市民権も永住権もなかったからです。

ポーランドで生まれた彼の母親は第二次世界大戦が終結して強制収容所から解放された後、ヨーロッパから移住しました。最終的に彼の両親は南アフリカに帰化しましたが、ベンジャミンさんはその時までにはもう大人で、初めのうちはナミビアの国民でも南アフリカの国民でもないことに気づいていませんでした。

アパルトヘイト(人種隔離政策)に反対していたベンジャミンさんは、南アフリカで何度も投獄され、1973年にイギリスへ逃れました。一時的に拘束され、庇護申請をしましたが、在留資格がないまま解放されました。数年間、彼はイギリスに資格を規制され、南アフリカに強制送還されることを恐れていました。その頃は、自分が無国籍であることに気づいていませんでした。しかし、次第に、証明書がないことによって生活が困難になっていることに気づきました。彼はあるイギリス人と結婚したかったのに、できなかったのです。

イギリスにいる多くの無国籍者にとって、認知と資格を探求することは長く疲弊する闘いです。運のなさや環境を通じて、自分がどこの国の国民でもないことを知る人がイギリスにはいます。国籍がなければ、基本的なサービスを利用したり、外国に旅行したり、自らを十分に支えていくために、彼らは何年も、場合によっては数十年も苦闘するのです。

「どこかへ属しているという感覚が、本当に欲しいのです」

2013年、イギリスが無国籍認定手続きを導入し、合法的に滞在するルートを提供していることをベンジャミンさんは知りました。彼は最初の申請者の1人でした。2014年、彼は無国籍者として、30か月の在留許可を得ました。2016年に更新され、そして2019年に無国籍者として無期限の在留資格を受けました。彼は遂に結婚することができたのです。

ベンジャミンさんは認知されたことを喜びました。しかし、彼の体験は精神的に疲弊し、代償は高く、いらだたしいものでした。彼は2回の申請をし、司法の再審査では、彼がイギリス人になるための求めは拒否されました。今、彼は70代で健康上の問題もありますが、まだ国籍の欠如を解決することを望んでいます。

「国民になることがどんなことか、想像できません。しかし死ぬ前に、どんなことか、知りたいのです」と彼は言いました。「どこかへ属しているという感覚が、本当に欲しいのです。」

動画:I AM HUMAN ~ 無国籍ということ

(動画の設定で字幕をオンにしていただければ、日本語字幕が表示されます)

イギリスにいる多くの無国籍者は、行政手続きで大きな障害に直面し、長期にわたる不安定な期間を経験する、と「I am Human(私は人間です)」と題したUNHCRの新しい調査(※英語)によって詳細に記されています。

インタビューされた人々は、長い過程と資格の欠如に関する制限による憤りと苦悩について語りました。多くの人は精神面の悪化と、再審査の精度への懸念、証明を得ることの困難、拘束の利用、そして全体のプロセスについて言及しました。

ベンジャミンさんが強調した問題の1つは、公式な証明書がない数年間、自らを支えるため合法的に働くためにシステムに閉じ込められた人々が直面する困難でした。

「20年間、同じ問題をかかえている人々もいます。なぜ彼らは、証明書を待つ間に働くことができる就労許可を発行しないのでしょうか?」と彼は尋ねました。

このイギリスの例は国際問題の縮図です。この問題によって数百万人が社会から隔離され、基本的人権を行使できず、サービスを利用できない状況に置かれるのです。これは一世代だけに終わらない落とし穴であり、多くの子どもが不確実な生を受けるのです。

UNHCRは、無国籍を特定、防止、減少させるための国際的な任務を担っています。2019年末時点で、76か国において420万人の無国籍者がいることをUNHCRは報告しました。しかし、データの不足によりその数はさらに多いと推定されます。

2013年、UNHCRは各国、市民社会、国際団体と共に、無国籍と闘うグローバルな行動計画を立て、2014年、#iBelong(英語)を開始しました。10年以内に無国籍を終わらせるためのキャンペーンです。

進歩はありました。直近では、トルクメニスタンが自国で生まれ出生が登録されたすべての子どもたちを承認する法律を導入しました。そして昨年2020年、コートジボアールは無国籍認定手続きを採用したアフリカ初の国家となりました。

現在、イギリスでは全無国籍者の人数に関する正確な概算はありません。イギリスにおける認定手続きができてから8年経ちますが、その恩恵を受けたのは僅か約180人です。昨年、UNHCRイギリス事務所は、優良事例と共に、在留認定の遅れや認定に関する懸念に焦点を当てた調査を公開しました。

「2歩進んだら、いつも3歩下がります」

イギリスの無国籍者の中には、自分には何の落ち度もないのに公式な資格がなく、行政の見落としや失敗の犠牲となることに気づく人々がいます。

ポールさんはゴア出身のインド国民でした。彼の両親は2人とも、イギリス旧植民地に関連する人々への制限された環境下で国籍が認められる、海外在住のイギリス人でした。その後、彼の父親は完全なイギリス国籍を取得したのです。

ポールさんは2007年、インドでイギリスのパスポートを発行してもらいました。イギリス国籍を取得したと信じ、インドの法律に従ってインド国籍を放棄しました。イギリスのパスポートを受け取った後、ポールさんは父親と合流するためイギリスに旅立ちました。数か月後、イギリス当局は、ポールさんのパスポートが誤って発行されたことを告げました。事実上、彼はイギリス国籍を取得していなかったのです。その後、インド国籍を再取得する申請は、却下されました。

確かに、彼は今、無国籍在留の2度目の申請により5年間の在留資格を取得しました。彼は官僚的な“迷宮”の衝撃を表して、こう語りました。

彼は言いました「2歩進んだら、いつも3歩下がります。」

Matthew Saltmarsh

原文はこちら(英文)
Many stateless in UK face a tortuous road to recognition


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