パンデミックにより深刻化する世界の避難民の飢餓

新型コロナウイルスによるロックダウンの影響で多くの人が職や収入を失い、飢えに苦しむ難民や避難民が増えています

公開日 : 2021-04-20

キンバリー・ビルゲスさんが故郷ベネズエラを去るという苦渋の決断をした時、ベネズエラの深刻な食料不足の影響で彼女は今より15キロも痩せていました。ペルーに避難した後、彼女の体重はすぐに戻りました

2021年3月31日 ― しかしその後、新型コロナウイルスのパンデミックが起きました。キンバリーさんは職を失い、彼女と彼女の夫は育ち盛りの双子の息子達に十分食べさせるため、食事を抜かなければなりませんでした。1日1回のみの食事を数か月続けた後、キンブリーさんは2018年にベネズエラから避難してきた時の体重に再び戻ってしまいました。

「私達は本当に絶望しています」

「何も手立てがないので、どうしようもありません。食器棚は空っぽなのに、移動制限令のため、外に出て就職し食費を稼ぐこともできません」と、キンバリーさんは言いました。2020年3月に新型コロナウイルスの感染がラテンアメリカで致命的に拡大したことにより、彼女はシェフのアシスタントの仕事を失いました。その後、ペルーで1月に行われた2度目のロックダウンの前に一時的に就いていた別の仕事も、解雇されました。

「私達は本当に絶望しています」と、彼女は言いました。

キンバリーさんのような状況は世界中で起きており、新型コロナウイルスによる規制は、世界の数億もの人々を失職させ、数えきれないほどの人々を経済的に困窮させています。不況の中で、避難民には身の回りの物だけを持って避難せざるを得ない方もいるため、特に食料不足や栄養失調などの危険にさらされます。苦しい1年をなんとかかろうじて乗り越えた人々の多くが今、食事を抜いたり、炊き出しに並び、物乞いをしたり、残飯をあさったりするといった困難な状況に陥っています。

国連世界食糧計画(WFP)と国際移住機関(IOM)より最近発表された、世界の飢餓と避難民の密接な関係について調査した報告書では、新型コロナウイルス・パンデミックの影響を「免れた国はない」と記されています。報告書によると、多くの避難民は新型コロナウイルスの経済的な影響が顕著に出る都市部で生活し、この危機において最初に失業することが多いのです。

WFPはパンデミックによる影響で、2020年末までに約2億7000万人が深刻な食料不足に陥る可能性があると推定しています。この数値は、記録的な飢餓に陥った年である2019年に食料不足の影響を受けた1億3500万人の約2倍です。また世界の避難民の約80%は、深刻な栄養失調と食料不足の影響を受けている地域に住んでいるため、パンデミックはすでに絶望的であったこの状況をさらに悪化させています。

ロックダウンにより、アフガン避難民の家族がさらなる飢餓に苦しんでいます

チナー・グルさん(45歳)は、2016年にアフガニスタンのクンドゥーズにある彼女の自宅にロケット弾が命中したことで夫を殺され、5人の子ども達を連れて首都カブールへと避難しました。それ以来、食卓に食事を用意することが困難となっていました。大黒柱の夫がいなくなり、チナーさんは10歳の息子を地元のホテルに行かせ、廃棄する食料を回収させるしかありませんでした。

パンデミックが発生し、新型コロナウイルスの感染防止対策によるロックダウンのためカブールのホテルが閉鎖されるまで、一家はこの食料配給で生き延びました。

「その後、私達は大変なことになりました」と、チナーさんは言いました。「ロックダウンの間、私達は1日1~2回は食事を抜かなければなりませんでした。私は子ども達に水を飲ませ、あとで食べ物をあげるから、と言い聞かせていました。

現在チナーさんの10歳の息子は、家族が暖を取れるように毎日燃やせるゴミを集める一方で、家族は近所の人から提供される差し入れなどの食料に頼っています。近所の人々からの差し入れがない時には「夜は空腹のまま寝ます」と、チナーさんは言いました。

新型コロナウイルスの発生以前から、数十年にもわたる紛争や頻発する自然災害、経済の低迷などにより、何百万人ものアフガニスタン人が食べていけなくなっていました。パンデミックが発生してまもなく、アフガニスタンはすでに世界で最も深刻な食料危機の一つに直面していました。年末には約1690万人、つまりアフガニスタン人口の約42%という驚異的数の人々が、「危機」もしくは「緊急事態」レベルの深刻な食料不安に直面していました。今年は5歳未満の子どもの半数近くが、栄養失調の危険にさらされると推測されています。

これを受けてUNHCRをはじめとする人道支援団体は、2021年に支援を必要とする約1570万人のアフガニスタン人に食料の提供や救命支援を実施することを約束しました。

食料配給の削減により深まる困難

特に新型コロナウイルスによるロックダウンで、小さなビジネスや一時雇用からの収入が枯渇している時にこそ、東アフリカの避難民が飢えに苦しまないように支援することも重要です。しかし、最近の不況により、その地域の300万人の難民を対象とした食料配給が削減されました。UNHCRとWFPは、配給量が半分以下に削減された国もあり、栄養失調や貧血、子どもの発育不良などの問題が頻発する恐れがあると警告しています。

「パンデミックは全ての人に壊滅的な影響を及ぼしていますが、難民への影響は特に顕著です」と、UNHCR東・アフリカの角・大湖地域事務所のクレメンタイン・ヌクウェタ・サラミ地域代表は述べました。「より多くの資金が用意されない限り、子どもも含む何千人もの難民は、十分に食事もできなくなるでしょう。」

「食事は1日2回しかとっていませんでした。今は1日1回です」

ウガンダ北西部にあるリノ難民居住区で暮らす南スーダン出身のビッキー・コンフォートさん(17歳)は、すでにそんな状況にあります。彼女は6人家族で、故郷から避難して以来食料配給に頼ってきました。しかしアフリカで最も多くの難民を受け入れているウガンダで必要な活動資金が7700万ドル不足する中で、WFPは2月に難民約127万人分の食料支援を40%削減しなければなりませんでした。

「食事は1日2回しかとっていませんでした。今は1日1回です」と、ビッキーさんは言いながら、家族の食べる量が減ったことによる健康への影響を話しました。「体重が減ったため私の免疫力は低下しています。食事がまともにとれないため、いつも病気になります。」

UNHCRのヌクウェタ・サラミ地域代表によれば、食事を抜いたり食事量を減らしたりすることにより、難民は高利子のローンを組んだり持ち物を売ったり、子どもを働かせたりするなどの様々な「負の対処法」に頼らざるを得なくなってしまっています。

「絶望して、他に手段がないと感じることがよくあります」と、彼女は言いました。

ウガンダ北西部のインベピ難民居住区に住む南スーダン人の女性バシリカ・ドロさん(26歳)は、飢えを経験したことにより、南スーダンから避難した決断を考え直すようになったと言います。

「このキャンプに避難していなかったらもう少し良い生活ができたかもしれないと、いつも故郷のことを考えてしまいます」と、彼女は語りました。

Reporting by Abdul Basir Wafa in Kabul; Peter Eliru in Uganda's Rhino Camp refugee settlement; and Vincent Kasule in Uganda’s Imvepi refugee settlement.

Jenny Barchfield

原文はこちら(英文)
Pandemic deepens hunger for displaced people the world over


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