気候変動がカメルーン国内の衝突を助長し、数千人が避難

水資源の減少が原因で、牧畜民と漁師の間で争いが起こり、カメルーン国内で、そしてチャドへと、数千人が避難しています

公開日 : 2021-09-30

通常ではカメルーンとチャドの国境となるロゴーン川を、小さな船が交差します。しかし、この3週間で1万1000人のカメルーン人(うち98%が女性と子ども)がチャドへの片道の旅に出ました。

ウンドゥマ(チャド)2021年9月9日 ― カメルーンのはるか北の地域では、チョア・アラブ系牧畜民とムスグム系漁民・農民との間で、過去最悪の命にかかわる衝突が発生したばかりでした。8月10日以降、19の村が放火され、恐怖に怯えた住民によって40の村が捨てられました。少なくとも45人が死亡し、74人が負傷しています。

また、15人が行方不明になっており、ロゴーン川を渡ってチャドに向かおうとして死亡したと思われます。

「まさに目の前で、亡くなった人を見ました」

チョア・アラブ系カメルーン人のジャン=ピエール・セマナさん(52歳)は、妻と6人の子どもを連れて、川のチャド側にある村、ウンドゥマまで無事に渡りました。「戦争によって私はチャドに来ることになりました」と、彼は言いました。「私は逃げなければなりませんでした。避難の途中、まさに目の前で亡くなった人を見ました。」

3,000人の難民が到着したことで、ウンドゥマの人口は2週間で3倍になりました。残りの難民は、ロゴーン川沿いの7つの村に散らばり、避難しています。

UNHCRとそのパートナー団体は基本的な必需品を提供し、温かい食事を提供するためのコミュニティキッチンや4つの共同シェルターを建てましたが、頻繁にどしゃぶりの雨が降る中、多くの難民が未だに木の下で寝泊まりしているため、より多くの食料、水、シェルターが緊急に必要とされています。

先日ウンドゥマを訪れたUNHCRチャドのアイリス・ブロム副代表は、「今は雨季の真っ只中で、難民もホストコミュニティも人口の76%がマラリアに感染しています」と述べました。

またUNHCRは移動診療所を設けて、薬と蚊帳を配布していますが、大雨の影響により、難民が避難している人里離れた村に通じる道路は、ほぼ通行できない状態になっています。

雨が降ると大変ですが、雨が降らないことが、カメルーンからの脱出を促した衝突の根本的な原因です。

気候変動が現実のものとなっているこのサヘル地域では、気温が世界平均の1.5倍の速度で急上昇しており、国連は農地の80%が劣化していると推測しています。ロゴーン川が主要な支流のひとつであるチャド湖の水位は、過去60年で95%も下がっています。

そのため、ムスグム族の漁師や農民は、広大な溝を掘って残った川の水を溜めることで、漁や農作物の栽培を行っています。しかしこの泥の溝は、チョア・アラブ族の遊牧民の牛にとって落とし穴となるのです。何度か牛が溝にはまり、脱出しようとして脚を骨折してしまいました。

このような出来事が、8月10日に発生した衝突のきっかけとなりました。弓や長刀のなたなどの伝統的な武器が使われ、争いは一気にエスカレートしました。

ムスグム族の女性、アミーナ・ムサさん(20歳)は、暴力からの避難を余儀なくされたとき、すでに臨月に入っていました。陣痛が始まったのは避難の旅路の途中でした。

「100メートルごとに休まなければなりませんでした」と、彼女は身を寄せているウンドゥマの地元の家族の家でそう語りました。「ここに来てから2日後、村の助産師が私の出産を手伝ってくれました。」

アミーナさんの夫は逃げ遅れ、チャドに到着してからも夫の消息はつかめていません。

カメルーンは治安部隊を派遣し、武装解除に向けた仲裁を行い、衝突を終結させました。比較的平穏な状況に戻りつつありますが、難民と1万2500人のカメルーン国内避難民の多くはすぐには帰還しないでしょうし、特に家を焼かれた人々はなおさらです。

農民は、作物が育つのに重要な時期である雨季の数週間、作物の手入れをすることが出来ませんでした。それにより、収穫の多くが失われます。

UNHCRとパートナー団体は、カメルーンとチャドの当局による緊急対応を支援していますが、気候変動の影響に対する長期的な解決策を見出すことは、より複雑な難題です。

トランザクアと名づけられた、コンゴ川流域から全長2400kmの運河を通ってチャド湖に水を流す大規模なインフラプロジェクトは、何十年も前から検討されています。しかし、まだ掘り出しは開始されてすらいません。実現しても、チャド湖の主要な支流であるチャリ川のみを補い、ロゴーン川の水位にはあまり影響を及ぼしません。

一方で、気候変動による緊急事態がもたらす人道的影響に対処するための資源は限られています。チャドはすでに51万人、カメルーンは45万人の難民を受け入れていますが、8月1日時点で両国におけるUNHCRの活動は、2021年に必要な活動資金の半分以下しか集まっておらず、深刻な資金不足に陥っています。両国で強制的に避難させられている人々のニーズに応えるためには、追加の支援金が緊急に必要です。

*カメルーンのモイーズ・アメジェ・ペレダイ氏、ヘレン・ゴ・エイダ氏による追加報告

Aristophane Ngargoune

原文はこちら(英文)
Climate change fuels clashes in Cameroon that force thousands to flee


UNHCRの難民支援

紛争や迫害のみならず、気候変動による自然災害や新型コロナウイルス感染症による貧困・食料難等、様々な要因で今も多くの人々が家を追われています。厳しい情勢が進行する中、一人でも多くの命を安全に保護するため、UNHCRは現地で保護活動を続けています。

※当協会は認定NPO法人ですので、ご寄付は税控除(税制上の優遇措置)の対象となります。

X

このウェブサイトではサイトの利便性の向上を目的にクッキーを使用します。詳細はプライバシーポリシーをご覧ください。

サイトを閲覧いただく際には、クッキーの使用に同意いただく必要があります。

同意する