暴力から逃れたLGBTI一家が避難先のメキシコに落ち着くまで

アナとポーラの10代の娘と息子が犯罪組織に狙われ、一家は命からがら逃げました

公開日 : 2021-05-28

ホンジュラスで家族が暮らしていた貧しい地域で、ポーラの娘が思春期になると、犯罪組織はこの娘を標的にしました。 「娘について奴らは『彼女はもうすぐ体重を測られる』と言うのです」とローラは言い、その言葉は犯罪組織のメンバーが、性的搾取の対象になる若い少女を指す時に使われる言葉だと説明しました。「奴らに『彼女を連れ去る』と言われました。」

メキシコ 2021年5月17日 ― ポーラは、彼女のパートナーで子どもを持つ母でもあるアナと暮らしていました。しばらくして、ギャングは間もなく13歳になるアナの息子のオスカーに注目しました。「ギャングのメンバーに『ポーラ、この街区でドラッグの取引をする…お前の義理の息子が必要だ』と言われました」と、ポーラは話しました。「明日また戻る。」

1980年代にロサンゼルスで始まったマラと呼ばれているギャングは、その後2大陸に渡って犯罪行為を広め、アナとポーラの住む山腹地帯においても暴力で支配していました。ギャングは恐喝し、麻薬や売春組織を動かし、強制的に人員を集めていました。

アナは息子をギャングに渡すつもりはありませんでしたが、拒否することが自分とポーラにとって何を意味するかを知っていました。「私たちは2人とも殺されるとわかっていました」と、彼女は言いました。 彼女たちの唯一の選択肢は逃げることでした。ポーラは自分の財産であるバイクを売りました。2人は子どもたちの出生証明書を集め、一家は安全を求め海外に逃れる計画を立て家から逃げました。

「私たちは2人とも殺されるとわかっていました」

世界中でLGBTIQ+、つまりレスビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックス(男性か女性という二元の概念に必ずしも当てはまらない性的特徴を持って生まれてきた人々)、クィアといわれる多くの人々は、命からがらの避難を強いられています。多くは、自身の性別や性的関心、性自認などが原因の迫害から逃れています。他にも、ポーラ(32歳)やアナ(40歳)のように、故郷で命を脅かすような暴力にさらされているだけではなく、自身の性や性自認が原因で故郷と避難先の両方で特に困難に直面している人もいます。

ホンジュラスやグアテマラ、エルサルバドルなどの犯罪組織によるひどい暴力が横行している地域でも、彼女たちと同じように苦しんでいる人が増えています。新型コロナウイルスの世界的流行と自然災害によって状況はさらに悪化しているため、生活することすらままならないような状況です。

国外に安全を求める旅は危険が伴います。庇護希望者は強盗や性的暴行、誘拐などの被害に遭うほか、川を渡ろうとして溺れたり、交通事故で亡くなる人もいます。ポーラとアナ一家は、グアテマラで強盗被害に遭いました。バス代がなくなってしまったため3日間歩き続け、ついにメキシコ南部にたどり着きました。

「グアテマラを歩いて渡った後、ポーラの足は切り傷だらけで出血していました」と、アナは言いました。

メキシコで彼らは路上やシェルターで寝ましたが、そこでポーラは「お前は男なのか女なのか」と挑発的に声をかけられたりもしました。その事件の数日後、ついに郊外のコミュニティのメキシコ人家族が、水とイグアナを使った煮込み料理を提供し、一家を歓迎してくれました。

「彼らはとてもいい人たちでした。何も持っていないのに家を私たちに開放してくれたのです」と、ポーラは言いました。彼女とアナと子どもたちは、トタン屋根の一部屋の家でこの3か月間を過ごしています。

新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、2020年にメキシコでの庇護申請率が低下した後、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスを中心とした中米から逃れる人々の数が再び増加してきています。2021年の最初の4か月で、メキシコの難民支援委員会(COMAR)が新たに登録した庇護申請件数は3万件を超え、昨年の同じ時期と比べて3分の1近く増加しています。2021年4月には、月間の庇護申請件数が9100件を超え、月間の申請件数として過去最高となりました。

メキシコでは、庇護申請をする理由がジェンダーだけで申請することを認めています。ジェンダーの枠組みにおいて、COMARは、性的指向や性自認を理由に避難した人々をかなり認定していて、そういった人々が保護を受けられる可能性は高いのです。

LGBTQ+の庇護希望者は、祖国で暴力や嫌がらせ、差別などの体験を経て避難することが多いと、UNHCRメキシコのソフィア・カルドナ上席保護官は述べました。

「私たちは何も持っていませんでしたが…一緒にいました」

「ホンジュラスやエルサルバドル、グアテマラでLGBTIQ+の人々は、一般的に同性愛嫌悪(ホモフォビア)や性的嫌悪(トランスフォビア)に直面します。それは教会や政府、そして特に家族から受けることもあります」と、彼女は語りました。「このような差別体験の蓄積は、彼らの生活を耐え難いものにし、避難せざるを得ない状況に追い込みます。」

アナは、ホンジュラスで女の子にキスをしたことで母親から殴られ、学校を退学させられたことなど、自身の暴力的な生い立ちを話しました。 その後、彼女は男友達からレイプされ、望んでいない別の男性と強制的に結婚させられました。

ポーラは家族の圧力にも関わらず、一般的な性別の役割を果たすことを拒否していたと、彼女は話しました。

性や彼らの外見を理由に家族から拒絶され、そして暴力や虐待の対象とされるなど、LGBTIQ+の人々は社会の底辺に追いやられることが多いと、カルドナ上席保護官は話します。

日々を生き抜くため苦しみに直面せざるを得ない中で、アナとポーラは出会いました。

「私たちはお金もないし料理するものもないし、何も持っていなかったけど、一緒にいました」と、アナは言いました。

アナとポーラはメキシコで庇護申請を行い、将来の計画を立てています。UNHCRは、彼女たちの国際法における権利を説明し、シェルターや医療、カウンセリングや現金支援、子どもたちのための学校探しなど、彼女たちがメキシコで滞在するために必要なことを決める支援をしています。

一家はUNHCRから受け取った支援金をメキシコ人のホストファミリーとも分け合っています。彼女たちはいま郊外で、マンゴーの木がある庭で、めんどり、アヒル、豚を飼育しながら平和に暮らせていることに満足しています。

「ここが好きです。村は平和ですし子どもたちは遊べて、誰にも邪魔されません。ドアに鍵をかけなくても出かけられます…子どもたちを育てるには良い場所です」と、アナは語りました。

アナとポーラはメキシコの31州のうち、同性婚を認めている18州の中の一つであるメキシコ市で、結婚式を挙げたいと希望しています。彼女たちは未来に希望を抱いています。

「子どもたちは『僕たちにはお母さんが2人いるんだ』と言ってくれます。彼らは差別しません」と、アナは言いました。

※プライバシー保護のため、名前は仮名を使用し詳細が省略されています。

原文はこちら(英文)
‘I’m not going to hide what I am anymore’


中央アメリカ ― メキシコ難民危機

国境を越え庇護を求めているのは、非常に弱い立場に置かれた人々です。暴力から逃れる人々を、どうぞご支援ください。

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