不安と共に生きる:難民の経験から学べる知恵 ⑤ ~不安な時、お互いを気遣うこと

アレッサンドラ・モレリUNHCRニジェール事務所代表からのメッセージ

公開日 : 2020-07-10

自分自身を助けるためにできる一番良い方法は、他の誰かに手を差し伸べて、助けることかもしれません。
今、この世界に何も負担がない人などいるでしょうか?豊かな国から貧しい国まで、私たちは誰もが新型コロナウイルス感染症の影響を受けています。世界中の多くの人々がそうであるように、あなたも自由に外出しづらい状況にあるのではないでしょうか。大切な人々とも離れ離れの状態にあるかもしれませんね。


言い換えれば、お互いに気遣いあうことで、私たちはこの危機を乗り越えることができるのです。そして、実際に他人に気を配ることは全ての人にとって素晴らしい恩恵をもたらしうるのです。
前回の手紙では、マヤがシリア紛争から逃れてイギリスに渡った後、どうやって人生を切り替えたのかという話をしました。彼女は新しい言葉を自ら学び、学校に入りました。でも、彼女が本当に危機を脱したのは、慈善活動を手伝い始めた時でした。
「それは私のターニングポイントでした。 自分は状況を良くすることができるし、変化を生むことができると感じました。今、私は他の人々にもそうなってもらえるよう試みています」
他の人々に手を差し伸べて支援することは、マヤの人生の土台となりました。
「女性でも難民でも、劣等感を感じている人は誰でも、すべての大変な努力は報われると感じてほしいのです。私がたどった道と同じように」
そして今、私が働くニジェールの難民コミュニティの人々も同様に、お互い助け合うことが自分を助ける最善な方法だということに気づきました。彼らはあなたや私と同じようにコロナウイルスの脅威にさらされています。いえ、さらに深刻かもしれません。彼らの多くは医療設備がほとんどまたは全くないような混み合ったキャンプに住んでいるのですから。


でも、難民は私や私のチームと共に、ニジェールにお返しをしようと決めたのです。
私たちは石けん作りをすることに決めました。私たちが一緒に作った石けんは、今後間違いなくやってくるウイルスを防ぐための生命線になります。コミュニティを通して私たちが共有する防御策なのです。
そしてこれはほんのスタートにすぎません。私たちは、さらにレンガも作ります。難民が感染し、安全な場所での隔離が必要になれば、そのレンガで隔離する場所を作ります。

トゥアレグ難民の女性たち石けんを作るトゥアレグ難民の女性たち(ニジェール)

私と共に働く難民のこの連帯感と思いやりは、謙虚でありながらも私たちを勇気づけます。
こうした難民は、武装した覆面の男たちに自分の目の前で村を焼き払われるなど、全てを失い想像を絶するような苦しみを耐えてきた人々です。そして今、彼らは私たちと同様に新しい脅威に直面しています。新型コロナウイルス感染症です。それでも彼らはお互い助け合うことに全力を注いでいます。近所の人々を守り、コミュニティを再び作り上げることに。
確かに状況は暗いです。でもマヤが私たちに教えてくれたように、また、ここニジェールにいる何千もの難民が日々私に教えてくれているように、突破する道はあります。
マヤはこう語りました。「ごく基礎的な英語しか話せない小さな私ですが、ここで航空工学を学び、シリア難民女性として初のパイロットになることを目指しています。そしてそれを人々と共有したいのです。なぜなら私のやっていることは誰にでもできるし、もっとうまくできることだから。願えば、山さえも動かすことができるのです」
さあ、周りを見回してみて。今すぐにあなたが助けられる人はいますか?いずれにせよ、今の世の中には、動かさなくてはならない山が確かにあります。だから協力しましょう。お互いをケアしあいましょう。頑張りましょう。

あなたと共に、
アレッサンドラ・モレリ
UNHCRニジェール事務所代表

【不安と共に生きる ~難民の経験から学べる知恵 シリーズ】

不安と共に生きる ~難民の経験から学べる知恵 ①~

不安と共に生きる ~難民の経験から学べる知恵 ②~

不安と共に生きる ~難民の経験から学べる知恵 ③~

不安と共に生きる ~難民の経験から学べる知恵 ④~

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