不安と共に生きる ~難民の経験から学べる知恵 ②~

アレッサンドラ・モレリUNHCRニジェール事務所代表からのメッセージ

公開日 : 2020-06-05

危機において、子どもたちは新たな現実に放り出されたように感じます
UNHCRでの最初の仕事でクロアチアにいた時、私はボスニアの紛争から逃れてきた2万5000人の人々と直面していました。この人々は皆、数日前までいつもと変わらない日常を生きていました。そして、その生活が突然なくなってしまったのです。

戦争であれ現在のパンデミックであれ、危機は家族全体に影響を及ぼします
親はもう働きに行くことができません。家族は、狭く制限の多い空間でなんとか生きていくしかありません。遊んだり学校に行ったりしていた子どもたちは、突然全てが変わってしまったように感じます。

マヤ・ガザルの故郷シリア・ダマスカスに紛争が起きた時、彼女にも同じことが起こりました。

「紛争が起きる前、私は他の子どもと同じようにただ自分の人生を生きていました。自分たちが明日生きるか死ぬかというようなことなど考えることもなく、ただ自分たちの人生を生きていたのです。私たちはそれが当たり前だと思っていました。ある日それが無くなってしまうなんて、考えもしませんでした」

紛争が起きて、全てが変わってしまいました。コロナウイルスによって、多くの子どもたちにとっての全てが変わってしまったように
「学校に行くのも安全ではなく、私たちは常に危険にさらされていました。両親が出かけると、また会えるかどうかもわかりませんでした。私はただ楽しい日々を過ごす子どもだったはずでした。紛争が全てを引き裂いたのです」

危機の影響を受けた子どもたちの対応をする時、彼らは親と同じ悩みや不安にぶつかっています。彼らは親の不安や恐怖を吸いこんでしまうのです。それが、UNHCRで私たちがメンタルヘルスケアを支援の中心に置いている理由です。

このいろんなことに制限のある厳しい状況を子どもたちと共有しているならば、あなたにもできる簡単な方法があります。

1.新しい習慣をつくる
UNHCRは、数年前に実施したキャンペーンを通して、人々が活動する感覚を取り戻すために習慣がとても良い方法であることに気づきました。そして多くの親たちが言うように、習慣は子どもたちにとって特に大切です。だから、戦争や暴力、今ならコロナウイルスによってそれまでの習慣が壊れてしまった時、子どもたちが順応するためには新しい仕組みや習慣が本当に役に立つのです。

紛争に直面していても、マヤの両親は彼女に習慣をつくるようにしました。そしてそれが全てを変えたのです。

「私の両親は本当は不安だったにもかかわらず、私たちが学校に行き、良い教育を受け、なんとか普通の生活を送れるようにしてくれました」

もし外出を自粛しなければならないのであれば、安全で安心できる習慣をつくるために、子どもの日常にどのような仕組みが考えられるでしょうか?

2.子どもたちの思いに耳を傾けるように努める
不確実な世の中では、子どもたちは困難で新しい感情に対応します。 だから、子どもたちに気持ちを話してもらったり、彼らが感じていることはどんな感情であっても普通なことだしよくわかるよ、と伝えることはとても大事なのです。

これもマヤにとっては貴重なレッスンでした。

「乗り越えようとしている課題に対して弱気になるべきではありません。もがいていいのです。大丈夫と感じなくてもいいのです。悲しんだり、泣いたりしてもいいのです」

あなたの子どもたちに、どんなふうに感じてもかまわないし、一人でそれをなんとかしなくてもいいということを伝えましょう。

マヤ・ガザルマヤにとって、単独飛行はプライベートパイロットの免許を取るためのステップの1つ

3.子どもたちは立ち直りが早い
このような時が子どもたちにとって大変な時だというのは間違いありません。でも、あなたが親や保護者なら、安心してほしいのです。私は子どもたちの中にある素晴らしいレジリエンス(回復力)に気づきました。実は、彼らの適応力は大人よりも強いことがほとんどです。

マヤはそのことを自分自身で発見しました。逆境を通して、彼女は内面の強さを見つけたのです。

「私たちは慣れなくてはいけませんでした。なぜならそれは、そういう状況なんだからどうしようもないでしょ?という感じだったから。私たちは生きなくてはなりませんでした。私たちはずっとパニック状態ではいられません。適応して、生きて、前に進まなければならなかったのです」

この言葉にはすばらしい知恵があると思います。もしあなたがこの困難な時に子どもたちの面倒を見ているのなら、彼らとあなた自身の生活を続けなければならないことを覚えておいてください。あなたの愛情深い本能にしたがってください。共に、あなたは強くなるでしょう。

あなたと共に、
アレッサンドラ・モレリ
UNHCRニジェール事務所代表

【不安と共に生きる ~難民の経験から学べる知恵 シリーズ】

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