From the Field ~難民支援の現場から~ With You No. 43より / UNHCRケニア 准リスクマネジメント・コンプライアンス担当官 保護官 藤田 若菜

公開日 : 2020-06-09

UNHCRケニア 准リスクマネジメント・コンプライアンス担当官
藤田 若菜(ふじた わかな)

ケニア・ナイロビ事務所にて

私は2015年から約1年、UNHCR駐日事務所の法務部で日本の難民保護の法制度の整備や裁判官など法曹向けの出版物の翻訳等に携わりました。

難民申請者が国際保護の対象となる難民としての法的立場に該当するかどうかを判断する手続で、日本においては法務省が行っていますが、ケニアではUNHCRと政府が共同で担当しています。2014年頃から難民認定手続は政府に移行され、私は担当の個別審査の他に政府の能力強化も担当し、面接官の研修やモニタリングなどを行いました。
私が担当した難民認定のケースは緊急性が高いものが多く、認定後そのまま第三国定住* までつなぐことがありました。当時緊迫していたのはLGBTIの難民の問題です。主にウガンダ(注:同性愛は違法とされ、激しい迫害や差別が続いてきた)からケニアに数百人のLGBTIの方が逃れてきています。でもケニアも保守的な国なので、ウガンダで危険にさらされケニアに逃れた後でも、危険にさらされている難民の方がいました。私が担当となり、急いで認定手続をしてカナダに第三国定住できることになり、その後カナダから「到着しました」と電話をもらった時には、「安全が確保できて良かった」と安心し、大きなやりがいを感じました。

* 難民が最初に保護を求めた国から、新たに受け入れることに同意した第三国へと移る制度

UNHCRケニア
UNHCRケニアの様子

2018年からリスクマネジメントの部署に移りました。もともとジュネーブ本部にあった機関ですが、ケニアで2016年にUNHCRに関係した不正が見つかり、根本的な制度改善が必要とされ当部署ができました。実はケニアでは警察など様々な所でわいろを渡す習慣が一般的で根強く、難民支援の現場でも不正が見られます。今UNHCRでは、ケニアのようにハイリスクとされる約10か所の事務所にリスクマネジメントの担当者が置かれるようになっています。

私は事務所を運営する上でのリスク対応にあたり、月一度はダダーブ難民キャンプを視察しています。また、ケニア事務所の予算の約半分はパートナーNGOにアウトソースするため、そうした団体での不正を防ぐための対策やモニタリングも行います。「難民の保護」とは離れた仕事ですが、不正を防ぐことで最終的に「難民に必要なサービスをきちんと提供することができる」という点に、今の仕事のやりがいを感じています。

それまでは、難民は不正を通報する場所がなく、通報しても仕返しを受けるなど報告して良いことがありませんでした。でも私たちの部署によりヘルプラインなどの通報制度が整備され、ダダーブ難民キャンプの難民から通報を受けて対応した際、最後にこう言われたのです。「折り返し電話をくれたのも、こうしてきちんと話を聞いてくれたのもあなたが初めてだ」と。私が難民一人一人にできることは限られているので、難民の方に感謝の言葉を言われた時、とてもうれしく思いました。

逆に残念な思いをしたのは、ある難民申請者のケースです。面談の結果、私は認定できると判断したのですが、事務所内で見解が異なり留保となりました。UNHCRは申請者の話の信ぴょう性が51%以上であると判断できれば難民認定できるとしています。滞納件数の多さから、面接を受けられるのは3年ほどかかります。難民は何年も前の逃げてきた事情を説明しなければならず、証拠も入手が難しいことを考慮しなければなりませんが、審査結果が出ない限り、難民は審査状況がわかりません。よって、難民にとっては「UNHCRは何もしてくれない」と受け止められます。こうした内部での見解の違い等により難民が影響を受けることは残念です。

UNHCRは条約から明確に「難民の保護業務がある」と権限を与えられています。私が難 民認定に携わりたかったのは、一個人の法的地位を変えることができる珍しいスキームだからです。国際機関が一個人を保護できる、というのはUNHCRの一番の強みだと思います。 UNHCRは大きい機関なので、一職員としてできる事は限られています。難民保護に関わっている団体はたくさんありますし、他団体にしかない関わり方もあると思いますが、私は強みを持つUNHCRで最善を尽くすことで貢献したいと思っています。 難民保護の分野で UNHCRといえば知らない人はなく、 UNHCRというだけである程度信頼は得られます。私の仕事はその信頼を失わないことだと考えています。不正の問題の影響もあり、難民や支援国からUNHCRへの信頼、さらにはスタッフ同士の信頼も揺らいでいるように感じるので、誰とやりとりする時も信頼関係を重視し、協力を得られるように努めています。

例えば私が担当するダダーブ難民キャンプでは98%近くがソマリア難民です。私のような社会的所属(人種、宗教観など)に共通点がない場合、業務の遂行はより難しい立場に置かれます。心掛けているのはカウンターパートの人と話をする時は、電話やメールでなく、自分からその人の事務所へ行って直接話をすることです。あとUNHCRだからと「上から指示する」ような態度をとらないこと。どんな人も仕事へのプライドがあり、その人しか分からないことがあります。それを尊重し、「私」という個人との信頼関係を築いてもらうのが大事だと思っています。

難民が増える中、各国からの拠出金は逆に減っています。その影響を受けているのは他でもない難民です。個人の皆様からのご支援に心から感謝いたします。そのご寄付をきちんと使い、最大限難民のもとへ届けられるように努力しています。どうぞ今後ともご支援をお願いいたします。

プロフィール

UNHCRケニア 准リスクマネジメント・コンプライアンス担当官。
早稲田大学国際教養学部卒、ウィーン大学国際公法修士課程(LL.M)修了。UNHCR駐日事務所法務部、外務省専門調査員を経て2017年に準難民認定審査官(JPO)としてUNHCRケニア事務所に赴任。2018年より現職。

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