UNHCRイラク事務所 保護官 宮内博史 インタビュー

人が好き、そして「人はつながっている」 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)イラク事務所 保護官 宮内博史

公開日 : 2020-02-18

バルダラッシュ難民キャンプ登録センターを訪れた宮内職員「みんな同じ空の下で生きている」と壁に書かれていた

緊張高まる中東イラクで、多くの難民・国内避難民への援助活動に携わる国連職員・宮内博史さん。日本で弁護士として「日本に避難している難民」を6年間支えてきた宮内職員は、「ひとりでも多くの難民を助けたい」という思いで2016年からUNHCRで働いています。

宮内職員はどうして厳しい最前線で人を支え続けるのか。イラクにおけるUNHCR の援助活動、その現場の実情はどうなっているのかなど、宮内職員にインタビューしました。

弁護士から国連職員へ

―― 2015年まで日本で弁護士として活動されていたようですが、その後、2016年から現在、2019年12月に至るまでどうされていたのですか。いつUNHCR職員になられたのでしょうか。

2015年12月まで日本で弁護士登録していました。 2016年に外務省から JPO(注1)としてUNHCRに派遣されることになりました。2016年5月から2018年11月まで 、UNHCRでの最初の2年半はUNHCRマレーシアのクアラルンプール事務所で、難民認定審査を担当していました。

その後2018年11月から1年間、UNHCRイラクのバグダッド事務所で勤務しまして、2019年11月より、イラクのクルディスタン地域の首都エルビルにあるUNHCRイラクのエルビル事務所で働いています。

注1:外務省が実施する派遣制度で、各国際機関で原則2年間、職員として働くことができる。


―― イラクでも難民認定審査を担当なさっているのですか?

難民認定審査は担当していなくて、保護官(protection officer)という仕事になります。

―― 今はどんな活動に携わっておられるのでしょうか。

難民だけでなく、国内避難民や無国籍者などUNHCRイラクの支援対象者(POC=person of concern) 全体を対象に法律・政策面での調査や分析、政策提言などを担当しています。

難民キャンプなど現場に足を運ぶこともありますが、私自身は難民に物資提供やカウンセリングを個別に行っているわけではありません。最近の活動内容の例をいくつかあげますと、

・難民キャンプでヒアリングやグループディスカッションを行い、情報分析を行う。

・難民登録手続の仕組みをリサーチして、改善案を提案する。

・オフィスで他の職員に難民認定審査に関するトレーニングを実施する。

・パートナー団体とのミーティングに参加して情報収集・分析を行う。

このように仕事は多岐にわたっているので、どういう仕事をするのかは本当にそのときどきによって異なります。

 

―― UNHCR職員になられたきっかけを教えていただけますか?

弁護士時代は主に日本における難民保護活動に携わっていました。その活動の重要性や意義は今でも強く思うところです。他方、私自身としては、多くの難民の方々が集住している国や地域に自ら赴き、現地での保護活動にも関わってみたいという思いがあったのが大きかったと思います。

クルディスタン地域とバルダラッシュ難民キャンプ 

クルディスタン地域の首都エルビルの中心にあるエルビル城塞

エルビル城塞の隣にある中央市場(バザール)

―― 現在、宮内さんはクルディスタン地域の首都エルビルにある、UNHCRイラクのエルビル事務所で勤務されていますが、クルディスタン地域の様子について簡単に教えていただけますか。

イラクは共和制で、クルディスタン地域は憲法の後ろ盾のもと、独自の地方政府や議会、軍を保有しているなど、一定の独立的な権限を持っています。

(イラクの首都)バグダッドに住んでいるのは主にアラブ人なのですが、クルディスタン地域はクルド人。外見も言葉も異なります。クルディスタン地域の公用語はクルド語とアラビア語ですが、こちらのクルド人の大半はアラビア語ではなくてクルド語を話していて、人によってはあまりアラビア語が通じない人もいるぐらいです。

クルド人の中には英語を話さない方も多いので、現地の方とコミュニケーションをとるときは、UNHCRやパートナー団体の現地職員にその都度通訳してもらっています。

エルビル事務所に来る前は、バグダッド事務所で勤務していました。バグダッドでは治安上の配慮から事務所の敷地の外に容易に出ることができないため、国内避難民キャンプに赴いたりするのはとても困難でした。でもクルディスタン地域内は、比較的自由に移動することができますし、我々UNHCR職員も普通のアパートに暮らしています。もちろん遠出する上では色々な制限がありますが、例えば市内は普通に車で移動できますね。

―― クルド系のシリア人の方々のイラクへの避難が多いと聞きます。クルディスタン地域への避難が多いのでしょうか。またイラク国内のシリア難民が今必要としている支援はどのようなものでしょうか。

イラクにいるシリア難民の約99%がクルディスタン地域に避難しています。そのため、新たに避難された方々の中には、すでに親戚がクルディスタン地域に避難している方々も少なくありません。親戚がいるというのは避難先を決める上で重要な要素です。

しかしながら、同じクルド人とはいえ、イラクとシリアのクルド人ではクルド語の方言が異なり、意思疎通が難しい場合もあります。また、近頃、目覚ましい発展を遂げているクルディスタン地域ですが、未だに貧困率や失業率も高く、インフラ面の整備も必要です。そのため、多くのシリア難民は生活上の困難に直面しています。

現在のところ、イラク国内のシリア難民の約6割が都市部、約4割が難民キャンプで避難生活を送っています。都市部と難民キャンプでは状況が違いますし、都市部でも置かれている状況は様々なので、必要としている支援は本当に人それぞれです。

上空から見たバルダラッシュ難民キャンプ

バルダラッシュ難民キャンプでUNHCRのパートナー団体から毛布などの緊急支援物資を受け取るシリア難民

―― バルダラッシュ難民キャンプについて教えてください。

バルダラッシュ難民キャンプは、もともとイラク国内の武装勢力から逃れてきたイラクの国内避難民を保護していた避難民キャンプでした。そして昨秋の緊急事態で、急きょシリア難民を受け入れるようになったのです。

場所はエルビル市内から車で2時間ほど離れているドホーク県にありますが、クルディスタン地域とイラク連邦政府地域との境界付近にあります。山沿いの地域なので、周りはどこを見渡しても山です。

ひとつお話ししたいと思うのが、シリア難民の方々がバルダラッシュ難民キャンプまで避難してくるには大変な苦労が必要ということです。シリアの故郷の町からイラクとの国境まで、多くの方々が大変長い距離を移動して逃れてきます。

例えば幼い子どもを連れて、イラクとの国境まで十数時間かけて歩き続けたという女性もおられました。国境を越えてイラク側に入ったところで、UNHCRや国際移住機関(IOM)が協働して難民を保護します。それからバスに乗って、さらに数時間かけてバルダラッシュ難民キャンプまで移動してくるのです。

バルダラッシュ難民キャンプにバスで到着したシリア難民たち

バルダラッシュ難民キャンプに到着してようやく温かいごはんを口にしたシリア難民の家族

―― バルダラッシュ難民キャンプに11月末に行かれたそうですが、現地はどんな様子でしたか。

数千人が続々と到着していた10月の頃と比べると、11月末の時点では新しく到着する難民の数は減っている状況でした。私が訪問したとき、ちょうど約80名のシリア難民がバスで難民キャンプに到着したところでした。バスから降りて来られた皆さんの表情は本当に疲れきっていて、顔もこわばり、不安がにじみ出ていました。持ち物もバッグひとつと少なく、本当に最低限の物しか持ち合わせていない様子でした。

難民の方々は到着したらまず、200人位が入る大きなテントに案内され、そこでマットに座り、UNHCR職員や難民の有志ボランティアの方々が提供する温かいご飯と水を手にされました。ようやくほっとしたのか、皆さんの表情が少し和らぎ、ところどころで笑顔も見られました。おそらく、何日間にもわたる避難から、温かい食事を口にするのも久しぶりなのではないかと思いました。ひとつの温かい食事、ひとつのシェルター、それがどれだけ人々に安心をもたらすか。それを目にして、支援の大切さをあらためて感じました。

避難時の「身分証明書」の大切さ

―― 宮内さんは現在、難民・国内避難民・無国籍者を対象とした法律・政策面での調査・分析、イラク政府への政策提言などをご担当されているということですが、具体的にはどのようなことをやっておられるのでしょうか。

難民に関していえば、イラクにおける国内法を分析し、難民の就労や教育、帰化手続へのアクセスがどの程度保障されているのかを調査したり、現在国会で審議されている新難民法の動向を調査したりしています。

イラクの国内避難民はまた違った状況にあります。イラクでは、シリア難民よりもイラクの国内避難民の方が数も多く、深刻な問題を抱えているとも言えます。国内避難民も本当に様々な事情で故郷へ帰れない方々がたくさんおられます。しかしながら、国内避難民の多くが故郷へ戻るよう様々な圧力を受けており、キャンプからの強制退去や強制帰還が問題となっています。UNHCRはイラク政府に対して、国内避難民の権利を保障し、自発的で持続可能な状況下でのみ帰還が促進されるよう提言を行っています。

―― シリア難民がもしイラクへ避難する際、自分の身分証明書を持って出られなかったら、イラクで自分の身分証明を再度手に入れることはできるでしょうか。

そもそも身分証明書を持っていないと、クルディスタン地域での居住許可書を取得するうえで困難に直面します。

―― 実際、シリア難民は、身分証明書を持たずに避難してきた方が多いですか?それとも身分証明書を持って避難してきている人が多いですか?

何らかの身分証明書を持って避難してきている人の方が多いと思います。しかし何も持ってきていない人も一定数いるので、そういうケースは私達としても非常に困難なケースになります。


エルビル近郊の難民キャンプ内で授業を受ける8歳のシリア難民ニヴィーンさん、アイリーンさん、アヤさん

 

―― イラクに避難してきたシリア難民の約半数が18歳未満の子ども達だそうですが、学校の証明書を持たずに避難してくる子どももいるのではないでしょうか。

そもそもシリアの子どもがイラクで教育を受けるにあたっては、色々な問題があります。まずは言語の問題に直面しますね。シリアはアラビア語なのですが、クルディスタン地域においては、シリア難民の方々を対象にしたアラビア語の学校が限られているのが現状です。

シリア難民の子どもがクルディスタン地域の学校に編入するにあたっても、シリアでの学校の証明書などを持ってきていれば良いのですが、そういう証明書を持っていない子どもは編入にあたって困難にぶつかることがあります。

―― そのような事態に対して、UNHCRはどのようなサポートを行うのでしょうか。

イラク国内における居住や就労、教育等に関する法的問題については、UNHCRないしUNHCRがパートナーシップを結んでいる団体の弁護士が法的支援を提供しています。その他、キャンプ内での学校の運営、難民の教育への権利を保障するための制度を構築・発展するよう政府へ働きかける等しています。

“危険と隣り合わせ”のイラクで


バルダラッシュ難民キャンプを訪れた宮内職員

―― 宮内さんは日本で弁護士として活動されている際にも、日本の難民対応に対して国際的な基準に基づいた提言をなさっていたこともありました。そのご経験やキャリアと、現在のお仕事内容には共通点がありますね。

法律がメインのツールであるということは前職(注:日本での弁護士活動)と変わりません。国際人権法や国際難民法は国際的なものなので、同じツールを使って仕事をしているという意味では一貫性があるかと思います。そもそも日本で採用されている「難民」の定義は難民条約に基づくものですし、イラクで審議されている新難民法制定へ向けた政策提言においても国際条約に依拠した水準を導入するよう働きかけています。

そのため、日本での経験と、今担当している仕事には共通点が多いと感じています。

―― イラクにおけるUNHCRの支援対象者は、難民より国内避難民の方が多いということで、宮内さんのお仕事も国内避難民に関するお仕事の方が多いのでしょうか。

どちらの方が多いというような明確な割合を出すのは難しいですね。私が働いているUNHCRイラクのエルビル事務所のスタッフの中には、国内避難民を中心に援助活動を行う方、難民及び難民認定申請者を中心に援助活動を行う方と担当が分かれていることもありますが、私はクルディスタン地域だけでなくイラク全土における法律政策面の調査、分析、政策提言を担当しているので、難民・国内避難民双方に関係する仕事を担当しています。支援対象者全体を見ている感じがありますね。

―― 宮内さんは2019年11月からエルビル事務所に移られましたが、エルビル事務所ではどんなことをなさりたいと思っておられるのでしょうか。

(エルビル事務所がある)クルディスタン地域に難民が集住しているのは事実ですし、現在は緊急事態にも直面しています。そのため、これまでの国内避難民保護の活動に加えて、難民保護の活動にも一層力を入れたいと思います。比較的移動の自由があるエルビルに移ったので、キャンプや難民・国内避難民が集住している地域への現地調査等を多く行いたいと思っています。

私としては、可能な限り現地に赴き、難民や国内避難民の方々と話をして、それをふまえた上で政策提言や支援策を考案したいと考えています。実際、レポート等で読む内容と、現地で難民や国内避難民の方々が話されている内容が違うこともありますし、キャンプ等に赴くことによって学ぶこと、発見することが多々あります。

―― 中東地域は情勢が不安定で緊張もあるかと思います。日本のUNHCR支援者から、現地のUNHCR職員の健康状態や生活、ストレス、命の危険などを心配する声も多いです。

安全面でいえば、危険な地域に赴任するにあたっては、UNHCR職員は必ずセキュリティ・トレーニングを受けるなど、UNHCRは職員の安全を重視して組織として色々な安全策をとっています。一方、個人レベルでの警戒や注意も本当に大事なのは間違いないので、例えば街中を移動するにしても、どういうところに行くのか、どういう移動手段を使うかというのは気を使いますね。

―― 今おられるイラクの状況は前任地のマレーシアと比較しても危険度はかなり高いですよね。

状況は異なりますが、マレーシアでも危険なところには行かない、スリやひったくり等に気を付ける、現地の文化や慣習を重んじるといったレベルでの警戒は怠らないようにしていました。

今イラクでは、セキュリティ担当スタッフが、エルビルの状況やイラク全土の状況を日々アップデートして事務所の職員に報告してくれますので、常にそれを見るようにしています。その報告を見て、イラクが今どういう状況なのか、どこが危ないのかを自分自身で把握するようにしています。日々の警戒、すなわち、日々自分が置かれている状況を確認して、自分の行動をコントロールするのは怠らないことが重要だと思います。

―― ストレスはありませんか?

少し前にバグダッドにいたときは、自由な移動が全くできなくて建物の敷地内に何週間もずっと籠ったきりの生活でした。当初は精神的に大変でしたが、自分のルーティンを確立すれば、有意義な生活ができると感じました。ジムに行ったり、通信での修士号取得へ向けた勉強等に励んだりしていました。今住んでいるエルビルは、自分の住んでいるアパートから職場に移動できますし、モールや市場等に買い物に行ったりもできますので、比較的普通の生活が送れていると思います。ただ、日本からもだいぶ離れていて、ストレスが溜まりやすいので、とにかくよく食べて、運動して、寝る、ということを大事にしています。

日本で弁護士として働いていたときは、がむしゃらに、とにかく走り続けていましたが、今は精神面や身体の健康に気をつけて、休むときはちゃんと休み、栄養や食事にも気をつけるようにしています。オフの時間も、趣味の旅行や山登り、ラグビー等をして、バランスをとるようにしています。

UNHCRの 「身分証明書」再発行プロジェクトに感じた手応え


身分証明書の再発行手続きに訪れたイラクの国内避難民の子ども達

―― 今、イラクで活動する中で、どんなときにやりがいを感じておられますか。

バグダッドにいたとき、イラクの国内避難民に対する援助活動の中で、今の仕事のやりがいを実感したことがありました。

イラクの国内避難民には身分証明書を持ってない方々がたくさんいるのですが、新たに身分証明書を発行してもらうためには、自分達がもともといた本籍地に行って証明書を申請しなければいけません。しかしながら、実際には本籍地に向かう上では、身分証なしでは検問を通過できない、交通費を支払えない、安全面での危険がある等、様々な障壁があります。そのため、本籍地に戻れず、身分証を取得できない方々が多くおられました。

UNHCRは本籍地に行かなくても身分証明書を発行できる方法をイラク政府と交渉してきたのですが、2019年の春先から、イラク政府と協働のプロジェクトによって、政府関係者に国内避難民キャンプに足を運んでもらえるようになりました。

イラクの各県の政府の職員が国内避難民キャンプに赴いて、身分証明書の発行希望のある国内避難民から申請書類を受け取り、後日、身分証明書を国内避難民キャンプまで届けるという、新たな方法での身分証明書の発行を始めたのです。その結果、身分証明書を持たなかった何千人もの国内避難民に新たに身分証明書を発行することができました。


このプロジェクトの実現を通じて、政策面で政府を動かすことによって、多くの人達に支援を届けることができるということを実感し、今の自分の仕事の意義というものを強く感じました。

これまでは、弁護士として、あるいはUNHCRの難民認定審査官として、個別案件への対応が中心でした。今でもその経験が自分自身の基盤であることは間違いないと感じていますが、イラクにきて、政策提言や制度を構築することによって多くの方々の保護に貢献できることを実感できたのは大きな喜びでした。

⇒ UNHCRイラク「身分証明書」再発行プロジェクトの詳細はこちら

―― UNHCRが政府と連携しながら成り立っている国連組織で、政府とパイプがあり、一緒に働くことができる、という点もプラスになったのでしょうか。

本当にそれは国連の強みであり、またやるべきことだと感じています。政府に積極的に働きかけ、難民や国内避難民の保護により資する法律や政策を提案し、制度を構築・改善していく。この点は、UNHCRの広範なネットワークや専門性を活かせる分野でありますし、難民条約の適用を監督する機関としての責務でもあると考えています。

―― UNHCRが数十年にわたって難民・国内避難民に対する援助活動のノウハウを蓄積してきた団体だという強みもあるかもしれませんね。

UNHCR は長年イラクで支援活動してきていますし、それによって培われてきたイラク政府との信頼関係があります。今UNHCRがイラクで行っている援助活動はその信頼関係の上に成り立っていると思います。

人が好き、そして「人はつながっている」

―― 一方、イラクでの援助活動は、大変なことも多いと思います。今の宮内さんの活動の支えとなっているものは何でしょうか。

シリア東部から身重のお母さんと、3歳の弟と3人で避難してきたオスマンくん(5歳)。ガウィラン難民キャンプにたどり着いた。

イラク自体、政治、経済、社会と、難しい状況ですので、物事が思うように進むとは限りません。治安が不安定なため、難民キャンプに行くにしても、煩雑な手続や検問所での長時間の足止めなど、現場の厳しさも多々あります。しかし、自分の苦しさなどよりもずっと難民・国内避難民の方々の方が苦しい状況に置かれています。

 

元々は公務員や自営業者、会社員などとして働かれ、自立して普通の生活を送られてきた方々が、部屋ひとつのテントやシェルターに何年も住んでいる状況を目の当たりにすると、本当に心が痛みます。また難民キャンプでは子ども達の姿も多く見られますが、故郷を知らずに育っていることを考えると悲しい気持ちになります。


夫と幼い子ども達とシリア北東部からバルダラッシュ難民キャンプに避難してきたパーヴィンさん(24歳)

けれど、そのような苦しい状況に置かれているにも関わらず、難民や国内避難民の中には、逆境を生き抜き、将来を切り拓こうとする方も数多くいらっしゃいます。その姿を見るたびに、私はいつも力と勇気をいただいています。

この仕事を通じて、私は人間の底力を垣間見るとともに、国籍や人種、宗教は違えど、我々は皆つながっているのだということを実感します。それが今の自分を支えている原動力です。


―― 宮内さんの今までのキャリアを拝見しますと、13歳の頃、当時暮らしていたアメリカの学校の授業で知った公民権運動に感動したり、弁護士になって難民を支え続けたりと、人に対する熱い想いを感じます。この人に対する熱い気持ち、優しい目線というのはどこから来ているのでしょうか。


インタビュー等ではきれいに書いていただいているからそう見えるのかもしれません(笑)。ただ、根本にあるのは「人が好き」ということなのかなと思います。自分自身ではそのような人々を「支えている」というより「支えられている」という感覚の方が本当に強いのです。

様々な背景の人間と接していると、いい意味での驚きや発見があって、私はその瞬間瞬間がすごく好きですし、勇気や活力をいただています

世界は広いですが、様々な国や地域、文化の方々と接することを通じ、人間は本質的には共通点が多いこと、我々はつながっていることをより実感するようになりました。難民はどこか遠く離れた国々の方々の問題だと感じる方もおられるかもしれませんが、その難民の方々とどう向き合うかは、我々の社会が人権、ひいては人間とどう向き合うのかと関連すると思っています。

―― 以前から「どのように難民と向き合うかは社会を映し出す鏡」と仰っていますね。

それはまさに今も思うことです。「人が好きだ」ということ、「人はつながっている」という感覚は、難民をはじめ、色々な方々と接することによって強くなってきたと思います。様々な出会いを通じて、そのような実感を持たせてもらえたのは一重に幸運だったと感謝しています。

日本からの支援について

―― 日本からの支援について宮内さんはどう感じておられますか?

日本の方々からの支援はすごくありがたいです。イラクに来てみると、本当に多くの難民・国内避難民の方がおられることを実感します。人数が多いため、一人ひとりにできる支援はどうしても限られてしまうのが現状です。その中で、私たちは、最も支援を必要としている立場の弱い方々から支援をしていくのですが、それは決して、支援の対象からこぼれ落ちた人が支援を必要としていないというわけではありません。難民・国内避難民のみなさん各々が苦しい状況で生活しているのが現状です。

そういう意味で支援はまだまだ足りない状況です。なので、少しのご支援であっても本当にありがたいのです。そのご支援によって、助けられる人は絶対に増えると思っています。

2019年秋~ シリア北東部からイラクへの避難の主な動き

※2019年12月上旬の時点で1万7000人以上が避難

※地図上の境界線や記号は、あくまでも参考であり、国連の見解や許諾を示すものではありません。

【取材】2019年12月10日 SKYPEインタビューにて

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