私たちは火災で生きる価値を失うわけにはいきません ― フィリップ・ルクレールUNHCRギリシャ代表
公開日 : 2020-10-02
2020年9月14日 ― ここ数日のレスボス島で起きた悲劇は、再び世界中で報じられています。モリアの難民受入施設はほぼ完全に倒壊し、島に住む地元住民や難民、移民などの全住民が再び試練を受けています。1万2,000人のモリアにいる庇護希望者のうち半数が女性や子どもで、再び野外での生活を強いられています。
2015年以降、100万人の難民と移民が安全を求めエーゲ海を横断し、ヨーロッパへと逃れました。ギリシャの人々は、強制移動には始まりと終わりがあるわけではないことを知っています。それは人々を故郷から追いやる原因、戦争、暴力、自由の欠如、絶対的貧困、自然災害などが存在し続ける限り続くでしょう。それにも関わらず、ヨーロッパの難民受入危機から5年が経ち、地域社会が不均衡な責任を負わされ調和的で長期的な政策がなく、責任分担が制限されている状況では、問題が永続することを皆知っています。そしてこの状況は、不安定な環境下におかれている難民と、見捨てられ行き詰っていると強く感じている地域社会においても、同様に当てはまります。
モリアの火災で危機に瀕しているのは、影響を受けた人々のための重要な支援をどのように至急確保するかだけではありません。すでに現場にいた支援団体は、緊急解決策を見出すための自治体の取り組みを支援するために駆けつけました。その日中に、モリアの同伴者のいない子どもたち400人は本土に移送されました。このような迅速な対応や政治的意思の例に基づいて、私たちは非常に必要とされている変化が起きているのを目の当たりにすることができます。
もちろん、島内の社会に広がる疲労と問題は、現実的で長く続いています。EU加盟国による実質的な支援がより必要とされています。最近の同伴者のない特に脆弱な子どもたちの移動プロジェクトによって、それは実行可能であることが証明されました。しかしまた、受入地域、中央、ヨーロッパレベルでの平穏さと慎重さ、そして解決策を見出す意欲も必要なのです。解決策を、暴力や外国人排斥の声、政治的搾取の中から見出すことはできません。解決策は、責任を分担して変化をもたらす努力をすることで行き詰りが解消され、ようやく見出せるのです。島内の難民受入施設の混雑具合を解消する取り組みを続け、住民の安全や保護、健康を確保する一方で、庇護申請や受入、差別廃止のプロセスもしっかりと確保する必要があります。
私たち全員が影響を受けているパンデミックの中で、数千もの家族が路上で生活し彼らの数少ない所持品を失っている時、問題は彼らを避難させるためのテントをどこに建てるべきかだけではありません。問題となっているのは、世界中の人々を感動させレスボスの人々が長い間誇りにしていた生きる価値や希望、慈愛の精神を、この火災によって私たちが不明瞭にさせてしまうかどうかなのです。
フィリップ・ルクレールUNHCRギリシャ代表
Philippe Leclerc, Representative, UNHCR in Greece
ルクレールUNHCRギリシャ代表による難民キャンプ火災の現地レポート
原文はこちら(英文)
We can’t let the value of life be lost in the ashes
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