【ナンセン難民賞2020年受賞】性搾取を受けた子どもたちを癒す手助けをするために人生を捧げるコロンビア人女性

マイェーリン・ベルガラ・ペレスは数十年の間、数百人に及ぶ性暴力の若き生存者たちの生活再建を手助けしようと努めてきました。彼らの多くは難民です

公開日 : 2020-10-01

自身が働くホームで、幼い少女と抱き合うマイェーリン・ベルガラ・ペレス

2020年10月1日 ― マイェーリン・ベルガラ・ペレスは枕に電話を置いて眠ります。

 
ベネズエラに接するコロンビアの東側の国境にあるリオアチャで性暴力、性搾取から生き延びたたくさんの子どもたちや10代の青少年ためのホームの管理人として、危機解決のためにいつ自分が呼び出されるのか、彼女には全く分かりません。

 
時には人身売買業者のネットワークによって、性搾取を強いられていた売春宿や飲み屋、街角から救助され、または虐待で歪んだ家族に追い出された、マイェーリンの保護の下の子どもたちは、想像を絶するほどのトラウマを経験してきました。彼らが回復する過程は長く、激動の日々です。

性暴力の呪縛から子どもたちを開放するために

2020年ナンセン難民賞を受賞したマイェーリン、通称「マイェ」

「性暴力は夢見る能力を破壊してしまいます。彼らの笑顔を奪い、彼らを痛みと苦悩、不安で満たします」と、マイェというニックネームで呼ばれる活気に満ちたマイェーリン(45歳)は語ります。「その痛みは重大で、彼らが感じる感情的な虚無感はとても深く、彼らはただ死にたいと考えます。」

 
過去21年間、マイェは子どもたちがその痛みを乗り越え、性暴力の呪縛から自分たちを開放する手助けをすることを人生の使命としてきました。

 
彼女が天職と考えるキャリアを通じて、マイェは32年前の設立以来、彼女が奉仕してきたコロンビアのNGO財団法人レナセールが働きかけてきた子どもたちと10代の青少年約2万2,000人を支援してきました。

 
信仰深いキリスト教徒であるマイェは、数えきれない深夜の電話に応え、救い難く悲惨な数千の話に耳を傾け、数多くの危機を回避し、性搾取や売春の歓楽街を視察する危険性の高い任務を数多くこなしてきました。彼女はたゆまず自分自身の時間と労力を捧げ、休みや家族との大切な行事を顧みず、一晩中寝ることすら何年もずっと放棄しています。

(動画の設定で字幕をオンにしていただければ、日本語字幕が表示されます)

危機にさらされる難民・移民

最近、彼女は隣国ベネズエラで続く政治経済危機から逃れた難民、移民における子どもへの性搾取が急増しているコロンビア北東部の国境地域ラ・グアヒーラに新しい住宅ホーム開設する先鋒を名乗り出ました。最初の1年間を経て、この新しいホームは75人の子どもたちと10代に、安全で健康を促す場所を提供しました。

テディベアを抱きしめるこの少女は、マイェが従事する性暴力の被害に遭った子どもたちのためのホームで暮らしている

非常に弱い立場に置かれた人々のためにある彼女の仕事を称えて、マイェに2020年ナンセン難民賞が与えられます。この賞は、避難を強いられた、または無国籍の人々を長年支援してきた人々を称える、名誉ある年間賞です。

 
「彼女は彼らの北極星です」と、リオアチャのUNHCR保護担当官であるタシャーナ・ヌトゥリは語りました。「マイェはこの子どもたちと彼らの権利を必死に守ります。」

“私はあなたとは絶対に話さない”

財団法人レナセールの建物の壁を使って逆立ちする子どもたち

“リバース(生き返る)財団”と訳される財団法人レナセールによって運営されるバランキージャの住居ホームで“夜間教師”という職務の求人広告に応募した後、マイェはほとんど偶然に、この仕事に就きました。このNGO財団法人は1988年、心理学者ルイズ・ステラ・カーデナスによってボゴタで設立されています。書面上では、その時23歳だったマイェはこの職に就く資格はありませんでした。コロンビアのカリブ海岸出身の農家の4人の子どもの末っ子である彼女は学校を卒業して教員の資格を持っていましたが、大学にはまだ行ってなかったのです。

 
それでも面接はうまくいき、マイェは次の晩、バランキージャにあるこの法人のホームに住むたくさんの子どもたちや10代の監督をする彼女の初めての徹夜シフトについてレポートするように言われました。その時、彼女には分からなかったのですが、彼女はとても愛されていたスタッフの代わりとして雇われ、子どもたちはこの交代をあまり喜んでいなかったのでした。

 
「子どもたちの1人は私に言いました“あなたには対応できないよ”と。そして他の子も“私はあなたとは絶対に話さない”といった感じのことを言いました。基本的には、私が逃げ出して帰ってこさせないことを望んだ厳しい反応でした、とマイェは語りました。しかし、子どもたちの冷たい対応には逆の効果がありました。「彼らの言葉の中にその攻撃性の奥に潜む痛みを理解し、傷ついている彼らの魂を見て、それこそが彼らと私をつないだと考えていますし、私は彼らのリハビリのプロセスの一部となりたいのです。」

 
マイェはその後の7年、20代の事実上すべてを、このホームの徹夜シフトの仕事に費やしました。彼女はすぐに財団法人レナセールに定着し、この団体で最も必要とされるスタッフとなり、耳を傾けるその熱意、忍耐、才能によって、子どもたちと10代の青少年との唯一無二の絆を作り上げたのです。

 
「私は彼女を養母として見ていました…なぜなら、彼女はいつも必要な時にそこにいてくれたからです」とジェシカ* は言いました。彼女は30歳の事業家で2児の母親であり、仲の悪かった母親が彼女に性搾取を強いた後、バランキージャのホームで13歳から16歳まで生活をしました。「彼女は本当に私たちの言うことを聞いてくれたし、私たちへの対応も特別でした。」

増え続ける隣国ベネズエラからの難民

リオアチャにある財団法人レナセールのホームは、2018年、ベネズエラの国境地域への2か月にわたる偵察任務を経て誕生しました。偵察の中で、このチームは性的に搾取された子どもが数百人いることを確認しました。少なくとも半数はベネズエラからの難民・移民で、その中には家族とコロンビアへ旅した人も、一人で旅した人もいます。そして犯罪組織に人身売買された人もいたのです。

約3,000人の移民が暮らす国境地域ラ・グアヒーラの近郊を訪れるマイェ

「とても苦しい状況でした」とマイェは回想しました。「少女たちの多くは、極限の貧困状態の中で、ストリートで生きなければならない環境によって、性搾取を強いられたのだと、私たちに語りました。」

 
唯一の解決策は、この地域に新しいホームを開設すること、とチームは結論付けました。

 
「新しいホームを開設するには200%の努力が必要だ、と私の上司が言ったのを覚えています。どう考えても、体力的にも、感情的にも、経済的にもしんどいです」とマイェは回想しました。その時、彼女は尋ねました“誰がこのプロジェクトをリードしたい?”そして、私が手を挙げたのです。」

ベネズエラ人の少女の話を聞くマイェ

近年、ベネズエラ人約500万人が、食料・医療不足から逃れ、インフレや蔓延する政情不安から逃れ、故郷の国から避難しています。そのうち推定180万人が隣国コロンビアで保護を求めています。

 
今、約40人の子どもたちが不規則な2階立てのホームで暮らしています。そのホームには共同タイプの2段ベッドもあり、そびえ立つマンゴーの木が2本ある中庭の周囲に建てられています。ホームに暮らす約80%は少女たちであり、その多くはコロンビア-ベネズエラ国境をまたぐ地域にいる先住民族のワユー族かユクパ族です。


“ホーム”で育まれる子どもたちの未来

個別セラピー、グループセッション、教育活動で詰め込まれている厳格な日々のスケジュールによって、子どもたちは秩序と枠組みを与えられる一方、彼らが自身のトラウマに対処するためのスペースと時間も与えられます。数十人以上の専門家で構成されたチームには、教師や心理学者、ソーシャルワーカー、栄養士、弁護士も含まれ、だいたい1年半を費やす彼らの生活再建の手助けをするためにそこにいます。子どもたちは、可能となれば、学業を再開できますし、何年かすれば実り多いキャリアに進みます。

ホームにて、祈りを捧げるマイェ

「私たちには本当にたくさんのサクセスストーリーがあります」とマイェは陽気に語りました。「シェフもデザイナーも看護師も、医者も会計士もいます。」

 
財団法人レナセールと共に性的虐待のホームから子どもたちを守るラ・グアヒーラの家族福祉コロンビア協会の福祉職員であるホセ・デ・ロス・サントスは、彼らは生まれ変わって現れた、と語りました。

 
「彼らが出ていく時、入所した時と同じ子どもではないのです」と彼は言いました。「彼らは人生に新しい目的を持ち、大志と希望、愛情にあふれて出発するのです。それは本当の変化です。」



2020年ナンセン難民賞はマイェーリン・ベルガラ・ペレスへ

ナンセン難民賞はUNHCRによって、10月5日、オンラインの授賞式で授与されます。

 
「私にとって、この賞は少女たちと少年たちへの好機を表しています」とマイェは言いました。そして“性暴力の生存者が人生を変え、彼ら自身、彼らの家族、そして社会にとってポジティブな人生計画を請け負うことが可能だ、それをできるのです”ということを示したい、と付け加えました。

 
「彼らの人生の役に立てて大変光栄に感じます」と彼女は言いました。「彼らは、彼ら自身のストーリーの真の主役です。彼らは多くのことを私たちに教えてくれ、この仕事を続けるよう、私たちに働きかけます。」

 
ナンセン難民賞は、ノルウェーの探検家であり人道支援家、初代の難民高等弁務官でノーベル平和賞受賞者のフリチョフ・ナンセンにちなんだものです。彼は1921年に国際連盟によって任命されました。この賞は、逆境に直面しながらも忍耐と責任の価値を示すことを目的としています。

ホームの子どもたちを海岸へ連れて来たマイェ

* 個人情報保護のため名前を変えています。

 
原文はこちら(英文)
Colombian woman devotes life to helping sexual exploited children heal

 
Jenny Barchfield

10/5、ナンセン難民賞授賞式がオンラインで開催

10月5日(ジュネーブ時間)オンラインでナンセン難民賞の授賞式が開催されました。南米コロンビアの人気シンガー、フアネス等が登場した授賞式の模様は以下の動画よりご覧いただけます。(※英語での放送となります)


UNHCRの女性支援

紛争や避難に巻き込まれる女性や少女たちは、性と性差に基づく暴力(SGBV: sexual and gender-based violence)にさらされる危険が高く、紛争や避難の中、そして避難先で、最も弱い立場に置かれます。女性たちの命と尊厳を守るため、UNHCRの援助活動にご協力ください。

※当協会は認定NPO法人ですので、ご寄付は税控除(税制上の優遇措置)の対象となります。

X

このウェブサイトではサイトの利便性の向上を目的にクッキーを使用します。詳細はプライバシーポリシーをご覧ください。

サイトを閲覧いただく際には、クッキーの使用に同意いただく必要があります。

同意する