新型コロナウイルスによる経済悪化の影響を大きく受けたシリア難民
本稿はジュネーブの国連欧州本部(パレ・デ・ナシオン)で行われた記者会見におけるアンドレイ・マヘシックUNHCR報道官による報告の要約です
公開日 : 2020-06-26
2020年6月16日 ― UNHCRは今日、新型コロナウイルスの世界的流行による経済の悪化が、中東にいる何十万人ものシリア難民をより一層深刻な状況に陥れ、人道支援の必要性が高まっていると警告しました。
異国の地で生きるための基本的リソースが不足している脆弱な難民の数は、公衆衛生上の緊急事態により劇的に急増しました。シリア近隣国の難民を受け入れたコミュニティも、同様の苦難を経験しています。多くの難民が元々あった乏しい収入を失い、食糧や薬といった最も基本的必需品を切り詰めざるを得なくなっています。
難民世帯ではさらなる借金を負い、もはや家賃を払うこともできません。児童労働や性に基づく暴力、早婚やその他の搾取などを含む、深刻な保護面での危機が迫っています。
今回のパンデミックの始まりから、UNHCRはエジプト、イラク、ヨルダン、レバノン及びトルコにいるさらに20万人近くの難民に緊急現金支給を行ったほか、パンデミックの影響を軽減するためのその他取り組みにも従事しています。この5か国だけで、世界で最も大きな難民集団となる550万人以上のシリア人を受け入れています。UNHCRは、少なくとも10万人以上の難民を一時金で支援しようとしています。
しかしながら、多くの難民は未だにどう対処すべきかわからずにいます。例えばヨルダンでは、UNHCRのプログラムを遂行するための資金が不足しているため、新たに確認された4万9,000人の難民のうちたった1万7,000人の脆弱な家族のみが、緊急現金支援を受けました。UNHCRは、難民を受け入れている地元コミュニティを支援するパートナー団体と共に働いています。この地域のシリア難民10人中9人が、難民キャンプではなく街や村に住んでいます。多くの人が低収入地域に住んでいるのです。受入コミュニティは強い結束力を見せていますが、新型コロナウイルスの世界的流行の影響で苦しい生活を余儀なくされています。
この差し迫った緊急事態以上に、国家システムへの継続的な支援が最優先となっています。難民が新型コロナウイルス感染症に対する国の公共医療対策の対象に含まれ、さらに教育などのその他公共サービスへの長期的アクセスを確保できるように、重要な措置が講じられてきています。
このパンデミック以前でさえ、この地域のシリア難民の大多数は貧困ライン以下の生活を送っていました。現金支給やその他の支援は、最もそれを必要としている人に与えられています。ヨルダンで行われた最近の調査では、新型コロナウイルスの制限解除後に帰還するための安定した仕事があると回答したのは難民の35%にすぎませんでした。
UNHCRはその地域の主要な受入国に対する強く揺るぎない国際的支援を訴えています。2020年のシリア難民対応・回復計画では現在、その必要条件を新型コロナウイルス関連のさらなるニーズを考慮した内容に改訂しています。ウイルス発生の以前から、550億ドルの計画は、その地域で必要な資金のたった20%しか集まっていません。
UNHCRはシリア国内にいる、帰還民、600万人以上の国内避難民となったシリア人、その他の脆弱なグループについて、人道的状況を懸念しています。国連の推定によると、最近の景気後退の前から80%以上のシリア人が貧困ライン以下の生活を送っていました。9年以上続くこの人道危機によって、110万人が人道的支援を必要としている状況に置かれています。急激な経済悪化のため、ここ数か月で状況はいっそう劇的で難しくなっています。
原文はこちら(英文)
Syrian refugees profoundly hit by COVID-19 economic downturn
シリア緊急事態 このままでは支援が続けられない…
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