シリア危機9年:ナリーンのストーリー

公開日 : 2020-03-15

ガスホーラ(イラク)2020年3月15日 ― ナリーンは優雅に、そして自信ありげに伝統的な弦楽器タンブールをかき鳴らします。まるで彼女の体の一部であるかのように、彼女の奏でる音楽を通して世界に彼女のストーリーを伝えます。
 
15歳のナリーンにとって、芸術は現実を反映します。彼女のタンブールは、6か月弱前、彼女がシリアを逃れた時に持ち出せた数少ないものの1つでした。今、彼女は母親とイラクのバルダラッシュ難民キャンプで生活しています。音楽は、彼女と彼女が置いてこなくてはならなかった生活を結びつけます。
 
「故郷にいた時、私はよく母親のために歌っていました。あなたは歌が上手いから、楽器を弾いたら?と母が言ったのです」と彼女は説明します。「タンブールを選んだのは、これがクルドのものだからです。そして、私の故郷カミシリではこの楽器はとても愛されています。私は音楽教室に通い、家で練習していました。」
 
昨年10月、突然、このメロディーは紛争の不協和音によって中断させられました。
 
「爆撃が始まった時、その音は恐怖で、とても大きかったです」とナリーンは語ります。「夕方5時から早朝まで続きました。私たちは眠れませんでした。なぜなら、次は私たちに爆弾があたると思ったのです。」
 
一瞬の静けさが訪れるとすぐに、ナリーンと母親は近隣の村にある叔父の家に逃れました。それでも不安に感じ、彼女たちはイラクとの国境へ急ぎ、国境を越えました。
 
「到着した時、とても怖かったです。撃たれるのではないか、と常に思っていました」と彼女は説明します。「逆に、到着すると安心しました。私たちは皆、受付センターにちゃんと受け入れられました。その夜は受付センターに泊まり、次の日にキャンプへ出発しました。」
ナリーンと母親は、安全を求めてイラクに避難した2万1,000人以上のシリア難民のうちの一部です。UNHCRとパートナー団体は彼女たちを受け入れ、シェルター、食糧、ヘルスケア、毛布、暖かい衣料、その他の緊急援助を提供しました。
 
しかし、テントは家ではありません。ナリーンは自分の部屋、その他の親しみのあった周囲の環境を毎日恋しがっています。
 
「私たちの家は固くした粘土でできていました。部屋が2つと台所があり、庭には樹木茂り、オリーブとブドウの木もあったのです」と彼女は追憶します。
 
この地域一帯で支援を必要としているシリア人の約70%は女性と子どもです。9年という長い紛争の後、ナリーンのような子どもたちは、自分の生活が無期限に保留されているように感じています。
 
「学校にも、英語学習センターにも行きたいです」と彼女は言います。「この戦争がなければ、私は今では進歩して、もっと学べていたでしょう。」
 
彼女のタンブールは、彼女が置いてこなければならなかった生活と彼女が成し遂げたい未来をつなぐ音楽の架け橋です。彼女の今のジレンマに胸が張り裂けるほどふさわしい曲を、彼女は知っています。

 (動画右下の設定で字幕をオンにしていただければ、日本語字幕が表示されます)


「私はこの曲が好きです。小さな女の子について歌っています」とナリーンは説明します。「子どもたちはこの世界に、幸せになるために、そして遊ぶために生まれてきた、とこの歌は語っています。戦争で死ぬためではありません。」

 
「世界のすべての国々へ向けた私の世界へのメッセージは、シリアの戦争を終わらせてということです」と彼女は続けます。「戦争を生き抜くのはつらいことです。子どもたちにとって、戦争時に遊ぶことは、平和な時に遊ぶことと全く異なるのです。」

 
By UNHCR staff

 
原文はこちら(英文)
Syria Crisis Nine Years On: Naleen’s Story


シリア危機 追い込まれる避難民

2019年からシリアの北東部カミシリ周辺と北西部イドリブ周辺で激しい戦闘が起こり、新たに多数の避難民が出る事態となっています。その多くは女性と子どもたちです。UNHCRは現地で緊急援助に全力であたっています。どうぞ、UNHCRの救援活動にご協力ください。

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