絵本で子どもたちにインスピレーションを与え続ける元ソマリア人難民
ケニアの難民キャンプで育ったハブソ・モハマドが世界中の子どもたちに伝えたいメッセージは「私たちこそが変化の主人公」
公開日 : 2019-07-04
ワシントンD.C.(アメリカ合衆国)、2019年4月22日 ― でもナスラは気づきます。前向きな変化を起こせるようになる日を待っている必要はないんだと。「変化を起こせる力は私の心の中に前からあったんだ」と彼女は悟ります。「今この瞬間こそが踏み出す時なんだ」と。
ナスラのこの思いは、ソマリアから来た24歳の元難民であるハブソ・モハマド自身の思いです。本の中のナスラの人生はハブソの実際の人生によく似ていて、彼女はこの2つの物語を学校の子どもたちと共有するために、アメリカ各地を回って朗読会を行っています。
ハブソの伝えたいメッセージは明確です。それは、「自分がどこにいても、どんな状況に出くわしても、自分をあきらめたり夢をあきらめたりしないで」ということです。
「彼らは難民になりたくてなったわけではありません」ハブソ自身も多くの障壁を克服しなければなりませんでした。ケニアのダダーブ難民キャンプで育った彼女は、毎日45分歩いて学校に通わなければなりませんでした。それでも彼女は授業を欠席することは決してありませんでした。たとえその日1日を乗り切るための食べ物を買うお金がなかったとしても。
「教育への愛はまさに難民キャンプにいた時に生まれたんです」とハブソは説明します。「どんなに学校が家から遠かったとしても、絶対にこのチャンスを逃したくなかったんです」

ハブソと両親、そして9人のきょうだいは、UNHCRによる照会を経て、2005年に米国に定住することになりました。世界規模の強制退去が増加しているにもかかわらず、今日、第三国定住のチャンスを手にできる難民は数えるほどしかいません。2018年時点で、第三国定住を必要としている難民約120万人のうち、実際にできたのは5万5,692人だけでした。
一家はまず、夏真っ盛りのニューヨークに到着しました。「自分たちが実際にアメリカにいるとは思えませんでした」とハブソは当時を思い出します。「私は、『雪はどこ?』って感じだったんですよ」。ですが最終的に一家はミネソタ州北部に落ち着き、それ以降長年にわたり、彼女は雪を楽しんだり、また「雪に耐える」経験をしました。
10歳のハブソにとって、新しい環境になじむのは容易ではありませんでした。不安や落ち込みを感じることもしばしばでした。「難民キャンプでの記憶がよみがえってきて……」と彼女は言います。ハブソは12歳の時から6年間セラピーに通い、病院にしばらく入院していた時期もありました。
「私はただ、皆と同じようになりたいだけだったんです」と彼女は言います。ですが、彼女のいたコミュニティでは心の健康について発言することは恥ずかしいこととされていました。
ハブソは、自分自身の話をすることで、難民や心の健康に関する既成概念に挑戦したいと思っています。
「私たちは(難民を)重荷と捉えるべきではありません」と彼女は言います。「彼らが別の人生を歩めるように、可能な限りあらゆるチャンスを与えるべきです。彼らは難民になりたくてなったわけではないのですから。」
「自分をあきらめたり、夢をあきらめたりしないでください」
ハブソは絵本の枠を超えて活動を行っています。彼女は、ソーシャルメディアや電子メールで子どもたちの質問に直接答えたり、子どもたちを励ましたりサポートする活動にも力を入れています。
朗読会の際、ハブソは毎回本の主人公のナスラに合わせてスカーフの上から白い水玉模様の赤いバンダナを結んでいます。
7ページ目になるとハブソは声を止め、大きな声で文字を読んでくださいと子どもたちに言いました。そこには「私たちこそが変化の主人公」とありました。
朗読が終わると、ハブソの人生についてもっと知りたいと思った子どもたちから、難民キャンプの家は何でできていたの? 難民キャンプに住んでいた時に一番大変だったことは何? アメリカで一番好きなことは何?といった質問が飛び交いました。
朗読会が終わった後、幼いブリジットは涙をこらえながら恥ずかしそうにハブソに近づきました。何と言っていいのかわからない様子を見せながら、彼女はただハブソをぎゅっと抱きしめました。
Marta Martinez and Arielle Moncure
原文はこちら(英文)
Former Somali refugee inspires children with illustrated book
難民を守る。難民を支える。
※当協会は認定NPO法人ですので、ご寄付は税控除(税制上の優遇措置)の対象となります。