レバノンの「ファン・バス」は、子どもたちにストリートの仕事からの休息を提供する

UNHCRとEU(欧州連合)の共同企画によって、子どもたちを仕事から解放し学校に行けるように働きかける広範な活動の一環として、シリア難民などの子どもたちが学んだり遊んだりすることのできる安全な空間が提供されている

公開日 : 2019-04-16

ある午後、レバノンの首都であるベイルート西部の冴えない区域で、鮮やかに彩られたバスがストリートの脇に止まります。忙しい交差点でドライバーにチューインガムやティッシュを売る子どもの集団が、素早く品物を片付けて道端に集まります。彼らは、はやる思いでバスに乗り込もうと待っているのです。
 
ベイルート(レバノン)、2019年2月27日 ― 「僕たちはここに呼ばれて、遊びに来るように言われています」と、12歳のシリア難民であるアベドは語ります。「僕たちは、ここに来るのが好き。」数時間、アベドと彼の友達はストリートでの危険から離れ、遊んだり学んだりする普通の子どもに再び戻る機会を得ます。
 
ファン(楽しい)・バス計画は、UNHCRとEU(欧州連合)が共同で資金を提供し、レバノンのNGOであるマクズミ財団によって実施されています。これは、レバノンのストリートチルドレンが屋外での仕事に費やす時間を減らせるように、彼らに援助と娯楽を提供しています。
「私たちは、ベイルートのすべての区域を回ります。基礎的な読み書きや計算の教室と手芸などの心理・社会的な援助活動を行なっています」と、マクズミ財団のナディン・モウサは説明します。

「僕は、ストリートにいるのが好きじゃない」


2018年に始まったこの計画は、ベイルートで働く子どもたち数100人に広がってきています。彼らの大多数は、現在レバノンに住む約9万5,000人の登録シリア難民です。子どもたちは、普通の幼年期を過ごしたり教育を受けたりする機会を奪われ、貧困に陥った家族を助けるために働くことを強いられています。

 
「僕は、ストリートにいるのが好きじゃない」と、シリアのアレッポ出身の少年アラー(14歳)は言います。「襲われるし、安全ではないと感じる。だけど、ここでは遊んで、絵を描いて、学べる。」
せわしない交差点で水を売るアレッポ出身のシリア難民アラーは、「ファン・バス」の中でアルファベットを学ぶ

「ファン・バス」で、アラーはアルファベットを学んでいます。これは、1日10米ドルほど水のボトルを売ることから歓迎すべき変化を生み出します。「子どもたちは、自己表現できる安全な空間を手にしているのです」と、モウサは言います。「ここでは、彼らが尊重され、大切にされます。彼らはほんの数時間だけでも、子ども時代を過ごすことができるのです。」

ストリートで恒常的に暴力にさらされる子どもたちは、時折攻撃的になりえます。「ファン・バス」のボランティアは、喧嘩をしたり言い争ったりする子どもたちの間の仲裁にしばしば時間をとられますが、最終的にはレッスンやゲームで落ち着きます。

また、この計画は、自分自身をしっかりと守ることができるように、子どもたちに、ストリートで直面する危険についての啓発セッションを提供しています。例えば、アベドは、車に足を轢かれて怪我をしました。その結果、彼は現在ストリートから離れ、毎週のバスでの時間をとても楽しみにしています。

 

 

(動画右下の設定で字幕をオンにしていただければ、日本語字幕が表示されます)

 

「ファン・バス」計画は、「最終的に子どもたちにストリートで働くことを完全にやめさせる」ことを目的とするUNHCRとそのパートナーによる広範なプログラムの一部です、とUNHCRのシリネ・コマチは説明します。

 
この意欲的なプログラムは、子どもたちが働いている家族と向き合い、ストリートから彼らの子どもたちを離れさせようとしています。親は、もう子どもたちが稼ぐお金に頼らないでいられるよう、職を探す手助けとなる職業訓練を受けます。

 
可能であれば、子どもたちは学校に入学します。多くは、授業に出たことが一度もなかったり、教育から数年離れたりしています。

「学校に戻ることができたらいいのに」
バスで働くアウトリーチボランティアの一人と遊ぶ幼いシリア難民

「私たちは、危険についての認識を高めるとともに、もし子どもをストリートから連れ出せたらより良い生活へと導くことができるという考えを親が信じられるように働きかけています。」

このアプローチを通じて、プログラム全体で、過去2年で150人の子どもたちをストリートから連れ出すことに成功しています。レバノンにいるシリア難民の3分の2以上が、就業が限られた貧困ライン以下で暮らしています。彼らは、しばしば家計の収支を合わせるため子どもを働きに出す以外の選択肢を持っていません。

アラーは、彼の父が昨年亡くなった時、4年生を修了したばかりでした。彼は、学校を退学し、道端で働く他の子どもたちに加わりました。「母と弟や妹を助けるために働かなければなりませんでした。学校に戻れたらなあ、だけど今はどうしようもありません」と、彼は言います。

その日のアルファベットの練習を終えた後、アラーは水のボトルを掴み、交差点に戻っていきます。「来週バスに戻るのが待ちきれない」と言いながら。

Dalal Mawad


原文はこちら(英文)

Lebanon’s ‘Fun Bus’ offers kids a respite from street work

 


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