実践例:小学校における発展的な学習と難民支援活動(山形)

酒田市立松陵小学校6年生の児童の皆さんが、様々な視点の学びやいろいろな出会いを重ねていくなかで難民問題に向き合い、プロミュージシャンの方々、保護者の方々、そして市内の多くの人々とともにとても大きく感動的なチャリティーライブを実現しました。2018年11月27日に開催されたチャリティーライブと、2019年2月9日の出張授業の様子を中心に、6年生がより活発に一層深い学びを実現されていく様子を、酒田市立松陵小学校の津田富明先生からご寄稿いただきましたので、ご紹介いたします。

公開日 : 2019-03-15

こころポカポカ いごこちよい世界にするために

教科:総合+社会科+音楽+体育+道徳+より良く生きるための心の学習
(酒田市立松陵小学校 津田 富明)

~はじめに~
チューリップ学年55名は時空探偵になり、バスという名のタイムマシンに乗って数々の「時空の旅」に出かけた。
それは、過去の歴史から「生き方」を学ぶため、そして、今の自分の生き方を振り返り、より良い「未来の自分の姿」を思い描くためである。
 
~そこにはたくさんの「命の物語」があった~
・私達は時空探偵となり、酒田、山形、東北の歴史について調べてきた。その中で、過去に地震や大火など様々な災害が起ったことを知った。
・修学旅行では、東日本大震災で被害を受けた南三陸町を訪問した。事前学習をして、現地で語り部の方の話を聞いて、南三陸町にはたくさんの「命の物語」があることを知った。
そして、家族や友達を失った悲しみを乗り越え、町を復興し、未来に向かって進む南三陸の人々の姿から、人としての「生き方」を学んだ。
 
~時空の旅は世界へと続く~

松陵小学校 難民 UNHCR

・「時空の旅」を続けてきた子ども達は、次に世界の国々について調べた。
そして、貧困や紛争などで明日もわからない人々がいること、シリアにもたくさんの「命の物語」があることを知った。
・その物語を知り、子ども達の心に「その中の一人でも救えたら。」という思いが高まった。
そこで、子ども達は「時空のフェアリー(妖精)」となり、世界の人々を救うためのアクションを起こすことにした。
 
~11月27日(火) 松陵小の体育館でチャリティーライブを開催~
・この活動で目指す姿
(1)松陵小の学校教育目標、児童会のスローガンは「こころポカポカ いごこちよい松陵小」である。
「人のために自分は何ができるだろうか?」と考え、困っている人のために進んで行動できる人、「思って+やる=思いやり」ができる人になりたい。
(2)今世界で何が起こっているのかと感心を持つ人、異なる文化や習慣を理解し、受け入れようとするグローバルな人になりたい。
(3)様々な友達の個性を認め、受け入れようとする、「身近な友達にもグローバルな人」になりたい。

松陵小学校 難民 UNHCR
松陵小学校 難民 UNHCR 五十嵐美貴
五十嵐美貴さん

・このような私達の思いに共感していただいた二人のプロミュージシャンが、「松陵小の子ども達と一緒に演奏したい。歌いたい。」と、東京から大阪から来校し、私達のライブをサポートして下さった。
〇五十嵐美貴さん‥女性ハードロックバンドの先がけであるSHOW-YAのメンバーで、圧倒的なテクニックを備えるギタリスト。
美貴さんは、ご自身でもチャリティーライブを行い、集めた募金を国連UNHCR協会を通して支援の現場に届けている。
〇大山まきさん‥YouTubeで700万回のアクセスを集める、日本だけでなく世界からも注目されているボーカリスト。
・このお二人の力を借りてチャリティーライブを開催した。

松陵小学校 難民 UNHCR 大山まき
大山まきさん

お二人は初共演であり、また小学生が一緒に演奏するということで、ネットでの反響が大きかった。
ライブの中では、酒田市内在住の海外出身の方々をお招きし、このライブのテーマ曲である「We Are The World」を会場の皆さんの一緒に熱唱した。
・保護者も裏方の手伝いからステージまで大活躍。このライブは、みんなで力を合わせて創り上げたライブである。
・全22曲、90分のライブには500名近くの人が集まった。
その中で、UNHCRの動画や画像を使い、シリアの情勢について紹介した。
・「暖房がなくて、ただ家族で抱き合って、暖めるしかありませんでした。」と話す、難民キャンプにいたジーナさん。このような家族がこの冬やって来る厳しい寒さを乗り越えるために、皆さんの募金でできることを会場を伝えた。

・私達と同じ年の女の子サジャさんの動画「片足を失った少女」を上映し、このような子達を支えるためにも支援が必要だと訴えた。
「みなさんから分けていただいた『思いやり』を集めてシリアに送ります。
『こころポカポカ いごこちよい世界』にするために募金をお願いします。」と。
・酒田市内の会社や個人の方から、たくさんの協賛金、寄付金が寄せられた。
その浄財とライブ会場でいただいた募金と合わせて、総額31万8千円を国連UNHCR協会に送ることができた。

~2月9日(土) 「世界一受けたい授業」~
・国連UNHCR協会の天沼氏と東北公益文科大学の学生5名による実施。
・この授業を授業参観日に合わせたことで、子ども達と共にたくさんの保護者が授業を受けることができた。
・子ども達は、ネットを使い、シリアやUNHCRの活動についての調べ学習を行ってきた。
しかし、生の声で聞くことは心へしみ込み方が違った。
この日、「人とつながりながら学びを深める授業=LIVEな授業」を行うことができた。
・子ども達からの質問に対し、天沼氏はひとつひとつ丁寧に説明して下さった。
お陰で子ども達は、天沼氏から知識だけでなく「生き方」を学ぶことができた。

Q:現地に行って一番つらいと思ったことはどのようなことですか。
Q:支援をする時大切なことはどのようなことですか。
Q:難民の問題はどうすれば解決できるのですか。
Q:天沼さんは小学生の頃どのような子でしたか。世界の国々のことに関心を持っていましたか。
Q:天沼さんはなぜこの仕事を始めたのですか。
Q:今の仕事でやりがいや喜びを感じる時はどのような時ですか。
Q:どうすればUNHCRの職員になれますか。
Q:難民の方々のために、募金以外にぼく達ができることはありますか。
・「このライブをして良かった。」この授業を受けたことで、子ども達だけでなく、一緒にライブを創り上げた保護者も達成感、成就感を高めることができた。

〜授業を受けた保護者の感想より〜
・個人的に国連UNHCR協会の方のお話を聞きたかったので、今回の授業を受けることができてとてもうれしかったです。
本当に「世界一受けたい授業」でした。
中学、高校レベルの内容に子ども達がついてきていることに驚くとともに、感動しました。
ありがとうござました。
 
~終わりに~
この活動を行ったことで、今まで関心が薄かった世界情勢に目を向ける子が増えた。これからの社会に求められる「グローバル」の意味を知ることができた。
また、子ども達がより良い人間関係を作り上げていけるように、身近な友達ともグローバルな心で接することの大切さを教えてきた。
その結果、様々な個性を持つ友達の見方や接し方が少しずつ変わり、友達関係が改善され、新しい関係が広がった。
「大人になったら、世界の人々と手を結びながら、一緒に活動する人になりたい。」と感想に書く児童もいた。
将来、この子達が育てる「思いやり色のチューリップ」が、世界のどこかで、そして、中学、高校、職場、地域の中で花開くことを切に願う。

松陵小学校 難民 UNHCR

おわりに

松陵小学校では、過去の歴史から「生き方」を学ぶことから、さらに広い視野で地域や世界の出来事をとらえ、様々な世界の方々との連携により、他に類を見ないアクティブラーニングを実践されました。
出張授業で対面した皆さんの揺るぎない希望にあふれた瞳の輝きがとても印象的でした。
この学びが未来のさらなるご活躍に繋がりますようお祈りさせていただきますとともに、ご卒業を心よりお祝い申し上げます。
最後になりましたが、素晴らしいチャリティーライブの実施により多くのご支援を届けてくださった松陵小学校の皆様、五十嵐美貴様、大山まき様、そして酒田市の皆様方に深く御礼申し上げますとともに、お忙しいなか、難民支援の輪を広げるために本記事作成にご協力いただきました津田先生に心より御礼申し上げます。
 
 
※「学校・団体の皆様へ」について詳しくはこちら
※「難民についての授業の広場」はこちら
※「出張授業/学習訪問」について詳しくはこちら
※「ご寄付でできること」について詳しくはこちら

X

このウェブサイトではサイトの利便性の向上を目的にクッキーを使用します。詳細はプライバシーポリシーをご覧ください。

サイトを閲覧いただく際には、クッキーの使用に同意いただく必要があります。

同意する