実践例:高等学校における難民問題への取り組み(名古屋)
公開日 : 2018-11-28
その活動の中で、ヨルダンにある難民キャンプへの物資の支援を行われたり、難民支援を訴える番組制作に取り組んだりされ、またUNHCR難民映画祭2018にもご参加いただきました。
この活動について、名古屋経済大学市邨高等学校の松野至先生からご寄稿いただきましたので、ご紹介いたします。
物的な難民支援から心の難民支援へ
(名古屋経済大学市邨高等学校 社会科 松野 至)

〜授業の学びを文化祭の取り組みに〜
本校の公民科では、ICT※を活用した主権者教育に力を入れています。難民問題をはじめとする時事問題を題材に、考え方の多様性、ひいては文化の多様性を学ぶ取り組みを行い、その中で、深い学びを実現し、社会に出てから自ら行動できる力を育んでいます。
市邨 支援各自が持っているタブレット端末を活用してのデジタル新聞購読やニュース検定受験、AIによる生徒集団の意思の可視化は、国際問題に対する理解を深め、難民支援活動に取り組むためのベースとなりました。
文化祭のクラステーマを決める話し合いの中で、難民について考える取り組みをしてみないかと声をかけたところ、是非やりたいとの意志を表明してくれて、支援活動に取り組むことになりました。

~生徒との対話から~
難民難民支援で「何ができるか」の生徒の話し合いを、AIによる匿名の意見集約ソフトを使って可視化したところ、「与える」ことにつながる言葉の使用が目立ちました。その方向で、わたし自身、担任として何ができるかを考え、打診しました。
そして、外務省、国連UNRWA、支援者等のお力添えでヨルダンにある難民キャンプへ支援物資を持参できることとなり、クラス全体が主体的に動き出しました。
学校、生徒、保護者は、サイバーキャンパスというプラットフォームで繋がっており、双方向に連絡をとることができ、保護者の方には、日々の生徒への担任連絡などもスマートフォン等で確認してもらえます。そのため、保護者の方々にも思いを共有していただき、様々なご提案をいただき、また、親子で語り合うことで生徒の思いを深めていただくことができました。
また、中東ヨルダン外務省の一等書記官岡本様から、難民事情や持続可能な支援のあり方についてお話を伺ったり、東京の国連UNHCR協会の天沼様との遠隔授業を8月、9月と実施する中で、難民に対する理解を一層深めることができました。
難民についての生徒からの率直な質問がとても多く出され、天沼様から丁寧にご回答をいただきました。
このように、外部の専門機関と連携できることは生徒に現場の姿をリアルに感じさせることができ、一教師として、とても心強く感じました。
生徒たちは3つのグループに分かれて難民支援を訴える番組制作に取り組みました。資料から考えるグループは、近年のニュースをまとめたニュース検定テキストを活用し世界情勢に注目しました。
映画から考えるグループは、本や資料から難民についての理解を深めた上で、UNHCR難民映画祭2018に参加させていただき、スタッフの方からお話を伺い、現場に注目しました。本から考えるグループは、各自が必要と思う書籍を選び、各ジャーナリストの考えに注目しました。これまでに学んできた事、考えた事、話し合った事、伝えたい事をそれぞれまとめました。
支援物資を届ける報告も含め、パレスチナ、シリア、難民キャンプ、ボランティア活動例など様々な切り口から訴え、45分の映像にまとめました。

~最後に~
「難民支援で自分にできることは」についてのアンケートを再度行いました。授業前の結果は、「与える」ことにつながるものが中心となっていました。
授業後は、寄付や募金、支援物資の他に、「知る」、「考える」、といったキーワードが目立つものと変化しました。支援物資を届ける取り組みから始まり、難民を通して、国際問題を理解し、知ること、考えること、話し合うこと、の大切さを感じたようです。
これからも難民について、生徒とともにどのようなスタンスでいるべきかを考え、行動していきたいと思います。
今回、国連UNHCR協会の天沼様のご指導をいただくことで、生徒たちの活動を深い学びへとつなげ、生徒が社会へ出た後に自ら行動できる力を育むことができたことを心より感謝申し上げます。
※「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で通信技術を活用したコミュニケーションを指す。
おわりに
新たな技術を導入し、多くの方々とかかわって生まれたこの学びを通じて、生徒の皆さんの難民支援の「物資を届ける」「募金する」が、難民のことを「知る」「考える」のことの大切さの気づきを得て、さらに厚みを増しました。また、生徒のみなさんが主体的に活動することで、自分たちにできることがたくさんあるということを発見できたことも大きな成果となっています。
このプログラムは、現在もさらなる進化を遂げながら継続中です。
また後日、その様子をお伝えできればと考えております。
最後になりましたが、学校現場での新たな難民支援の形を模索し、実施してくださっただけでなく、お忙しい中、本記事作成にご協力いただきました松野先生に心より御礼申し上げます。
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