調査報告:難民によるビジネスが地元経済に重要な役割を果たす
調査は、ケニアのカクマ難民キャンプとその隣町に、民間セクターにとって大きなチャンスがあることを明らかにしました
公開日 : 2018-05-21
コンゴ民主共和国からの難民で、服飾デザイナーのエスペランサ・タビシャは、ケニア北西部のカクマ難民キャンプにあるトタン板でできた自分の小さな店で、最新のデザインを考えているところです。
2人のお客さんが商品を見に、店にふらりと立ち寄ります。1人は難民で、もう1人は地元のNGOで働いています。商品のほとんどは、キテンゲという厚みのある、光沢を帯びた、伝統的に鮮やかな色に染められる織布で作られています。
2人の女性はとても気に入った様子です。1人は約18米ドル(約2,000円)のワンピースに決め、もう1人は約20米ドル(約2,200円)でロングスカートと上着をオーダーします。彼女たちは買い物に満足して店を後にし、エスペランサは在庫品の整理を続けます。
「幸せなお客さんがいることは、何物にも代え難い喜びです」

難民と地元住民合わせて25万人近くが暮らすカクマ難民キャンプとその隣町には、数え切れないほど多くの難民の起業家や事業主がおり、この27歳の働く女性はその1人に過ぎません。
エスペランサは、コンゴ民主共和国(DRC)北キヴ州での暴力から逃れてケニアにたどり着き、2011年に、わずか約220米ドル(約2万4,000円)で小さなファッションブランド「Esperanza Fashion & Design」を始めました。
彼女はケニアで難民という立場になっていましたが、それでも洋服のデザインを続けたいと思いました。彼女ならではのデザインは難民コミュニティのお客さんだけでなく、地元の人々の間でも人気を集め、カクマキャンプで活況が続く服飾産業ですぐに、これまでにない独自の市場を切り開きました。彼女は自身のデザインを販売し、ひと月で約20米ドル(約2,200円)を稼ぎます。
「自分の仕事を心から愛しています」と彼女は言います。「幸せなお客さんがいることは、何物にも代え難い喜びです。」
エスペランサは自分が稼いだお金で、仕事の質を高めるために新しいミシンやアイロン用の木炭鉄などの道具を買い、自分の仕事に投資してきました。彼女は順調にビジネスを運営し、自身とその大家族を支えているにもかかわらず、難しい問題があると話します。
「私は自分のしていることに本当に満足しています」と彼女は言います。「デザイナーであること、洋服を作っていることを心から楽しんでいます。でも、私が稼ぐお金は、自分の基本的なニーズの大半を辛うじて賄うくらいしかありません。ビジネスを広げるには、時間をかけて返済することが可能な金銭的支援が必要です。」
国際金融公社(IFC)とUNHCRは5月4日、画期的な調査結果を発表し、「多くの難民は支援の受動的な受け取り手というだけでなく、経済活動にも従事している」と結論づけました。エスペランサはこの調査結果を裏付けています。報告書は、カクマ難民キャンプとその隣町に、民間セクター組織のビジネスチャンスが存在することを明らかにしました。
調査は、カクマ難民キャンプを、民間事業を展開する観点から考察しています。カクマキャンプには2,000を超える会社や小規模店舗があり、地域の経済規模は約5,600万米ドル(約63億円)に上ることが分かりました。調査によれば、世帯収入の半分は食料品などの日用品に使われ、その市場規模は年間2,600万米ドル(約29億円)を上回るといいます。
ビジネスの所有状況、消費水準、金融・情報通信・教育・雇用へのアクセスに関するデータが集められました。調査で明らかになったのは、カクマ経済は活況を呈し、難民コミュニティと受け入れコミュニティのどちらにも、民間セクターが新たな事業に投資する機会が存在すること、そしてそのことが難民の自立心や経済的自立、権利と能力の向上を促し、ひいては人道支援への依存が減り、難民の社会的・経済的な融合につながるということです。
「難民はキャンプに座って、何もせずに支援を受けているだけだという考え方を私たちは改める必要があります」とラオウフ・マゾウUNHCRケニア事務所代表は話します。
「実際に、彼らの多くは会社を経営し、ほかの人のために雇用を創出し、ほかにも自分たちの事業を公式に認めてもらうために必要なことをしています。」
「民間セクターというと、外部からもたらされる、何か高度な技術のようなものと考えがちですが、たいていは、パンを焼く難民のように、自分が一番得意なことをして稼ぎたいと思う個々人の発想に基づいて進められます。」
「私は自分がしていることに心から喜びを感じています」

調査では、カクマ難民キャンプには、そこに暮らすさまざまな人たちにサービスを提供する2,100を超える小規模店舗があることが確認されました。調査対象となった難民の12%は自らを事業主であると名乗りました。
ほとんどの難民が着の身着のままでケニアにたどり着いていることを考えれば、この調査結果は前向きなものであると結論づけています。国内を移動する権利や、登録企業や財産を所有する権利も制限されているのです。
調査は、カクマのほとんどの場所でインターネット接続が良好なことや、携帯電話の普及率が高いことが、潜在的な民間セクターの投資家の機会を広げたと指摘しています。難民のおよそ69%、受け入れコミュニティの85%は携帯電話を利用しています。
ネットワークへの接続は、エスペランサのビジネスの拡大にも一役買いました。お客さんは、インターネットに掲載されたものの中からデザインを選びます。
「インターネット、ソーシャルメディア、とりわけフェイスブックとインスタグラムは、宣伝の場であるため、潜在的なお客さんを呼び込む重要な役割を果たしています」と彼女は話します。
調査では、民間セクターによるカクマへの投資は、難民の事業主が生計を立てられるようにするだけでなく、受け入れコミュニティにも恩恵をもたらすことが明らかになりました。難民は、一緒に働く地元の人を雇うことも多々ありますし、地元のコミュニティから家畜や木材、木炭などの商品を買います。
「紛争、暴力、迫害によってふるさとから追われている人の数は、第二次世界大戦以降、最も多くなっています」とフィリップ・ル・ウェルーIFC長官は言います。

「この課題の取り組みに向けた政府の支援には限界があります。民間セクターによる投資は、難民の雇用と機会を生み出すことで、重要な変化をもたらす可能性があります。しかし、多くの場合、投資家にはこれらの市場に足を踏み入れるのに必要とされる重要な情報が不足しています。今回の調査は、民間投資を未開拓市場に後押しする重要な第一歩です。」
IFCとUNHCRは、この調査によって、情報通信、保健、教育、住宅、電力などの民間セクター分野の市場機会として、カクマ難民キャンプへの関心が高まることを期待しています。
民間セクターや社会的事業をカクマ一帯に呼び込み、地元や難民の起業家を支援することは、雇用機会を拡大し、サービスを向上させ、選択肢を広げ、あらゆるものの価格を下げる可能性があると、共同報告書は結論づけています。
「包括的難民支援枠組み」が掲げる達成すべき3つの重要な目標は以下の通りです:
- 営利企業や社会的事業を含む民間企業を誘致し、市場への参入と、当該地域ですでに活動する事業の拡大機会を提供することを目指す
- 事業拡大の支援や、職業訓練、事業開発サービス、マイクロファイナンスの機会の提供を通じて、若者や女性を中心に、難民コミュニティと受け入れコミュニティ双方の起業家精神の潜在力を引き出す
- ビジネスをしやすい環境づくりや当該地域への民間セクター企業の誘致に重点を置いた政策対話やアドボカシー活動を支援する
Yvonne Ndege
原文はこちら(英文)
Study finds refugee businesses play vital role in local economy
アフリカ 誰も知らない難民危機
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