ミャンマーへの帰還には、権利の保証が鍵、と語るロヒンギャ
市民権や人権、賠償がまず明らかにされなければ帰還はありえない、とバングラデシュのキャンプにいる難民は語ります
公開日 : 2018-02-01
クトゥパロン難民キャンプ(バングラデシュ)2018年1月26日 ― ロヒンギャ難民のモハマド* は、バングラデシュには長く滞在したくないが、故郷ミャンマーに家族を連れて帰ることを考える前に、必要とされる保証が明確であることを望んでいる、と語ります。
「私達はミャンマーに戻るでしょうが、それはミャンマーの他の民族グループと同様に安全が保証され、権利が認められる時だけです」と彼は言います。
やわらかい語り口のこの43歳の男性は、5か月前にラカイン州北部マウンドー地域で暴力行為が勃発し、軍隊や暴徒が住民を攻撃・殺害して村々に火を放ったと報道されて以来、バングラデシュに逃れた65万5,00人の難民のうちの1人です。
帰還の見込みに関する話し合いが進むにつれて、世界で最も広大となった難民居住地にいる難民達は、この1週間で数々のデモを展開しました。彼らのメッセージは明白です。“市民権、人権、賠償の問題が保証されない限り、帰還はありえない。”
「私達は意見を示しました。彼らは私達の考えを分かっています」と、抗議集会の主催者の1人であるモハマドは言います。「私達は、帰還に関する私達の要望と共に、2万の署名を集めて当局へ送りました。」
「私達はミャンマーに戻りますが、それは私達の安全が保証され、私達の権利が認められる時だけです」
この危機が始まった最初の数週間よりも新たに到着する人々のペースは緩和されているものの、バングラデシュに人々が流入し続けているにもかかわらず、帰還のあり方についての議論が、バングラデシュとミャンマー政府間で行われています。
UNHCRはこの二国間の調整に関わっていませんが、帰還に関するあらゆる決定は、難民への告知と自主的選択の上になされるべきである、と注意喚起しています。UNHCRは、帰還地域に全く近づくことができない間は、ラカイン州が安全かつ難民が帰還に耐えうる状況ではないと考えています。
難民が関与していないこの議論は、帰還計画への相談もなく全く情報も受けていない難民の間で多大な不安を巻き起こしています。帰還に強く反対する人もいます。
「どうして戻れるのでしょうか?私達は殺されるために送り返されるようなものです」と、マウンドーのアンダング村から逃れた4人の子どもの母であるファティマ* は言います。感情の高まりから言葉を強めて彼女は続けます。「殺された方がましです。もし私達がここバングラデシュで死ぬのなら、少なくとも、宗教上の正式な埋葬をされるのですから ― 故郷ではそれができないのです。」
歴史からの教訓を挙げる人もいます。アブドラ* (52歳)は、故郷からバングラデシュに3回の避難を強いられた時のことを説明します。最初は、幼い少年だった1978年、2度目は1991年でした。
「私はここで3年を過ごしましたが、1993年、自主的にミャンマーへ戻ることを同意しました。私は自分の土地と農場が心配だったのです」と、混雑したクトゥパロン難民キャンプ内の小さな竹のシェルターで、彼は回想しました。
しかし、彼が避難を強いられた根本的原因は解決されませんでした。「2年後、状況が更に悪化した時、より良い生活への私の願いは消え去りました。私達はあらゆる手段の拷問や強制労働、兵役を目にしました。彼らは私達の土地や収穫物、家畜を奪ったのです。私達は脅され、たたかれました。」
かつての帰還への決意を後悔し、根本的な変化が起きない限り今回は故郷への帰還は考えない、とアブドラは断固主張しています。この根本的な変化には、市民権の獲得や、法律上の身分の解決、帰還の際の安全と保護が保証されることも含まれます。そして、状況を監視して安全を提供するため、UNHCRが立ち合う ― 場合によっては国連平和維持軍も ― ことを求める人も多くいます。彼らはまた、故郷を再建して彼らの土地を取り戻し、基本的なサービスにアクセスできるようになるための支援を望んでいます。
「私は移動したり、日々の活動をする自由、そしてあらゆるサービスにアクセスする権利が欲しいのです」
路上にある間に合わせの屋台で野菜を売るマウンドー・ミジャリパラ出身のヌルル(22歳)も同様に、彼の求めていることは明白です。「私達は自らの命を守るために避難しました。私達の家は焼かれたのです」と彼は説明します。「もし戻るなら、他の民族グループと同様にロヒンギャの身分を求めます。私は移動したり、日々の活動をする自由、そしてあらゆるサービスにアクセスする権利が欲しいのです」と彼は言いました。
UNHCRは、状況を把握して再建を支援するため、ミャンマーでの帰還地域において滞りなく人道的な関与ができることを求めています。また、ラカイン諮問委員会の勧告が迅速に実施されることを当局に促しています。ラカイン州の全てのコミュニティで平和と安全が確証され、地域の分断が緩和され、そしてムスリムコミュニティの市民権に関する解決策が見出されることも含まれます。
モハマドは次のようにまとめます。「私達は人間で、彼らも人間です。私達は同じ権利を持たなければなりません。」
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* 保護の目的で名前は変更されています
Caroline Gluck
原文はこちら(英文)
Rohingya say rights guarantees key to Myanmar return
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