家族とはぐれ、言葉を失ったアフガニスタンの少年

8歳のファーザドは、避難の旅によって健康を害されてしまった数多くの難民の子どもの1人です

公開日 : 2017-05-09

ミティリーニ、レスボス(ギリシャ)2017年4月10日 ― 8歳のアフガン難民ファーザドは、雪の中を山岳地帯のイラン―トルコ国境を越えようとしていた時に、家族とはぐれてしまった後、沈黙の世界に引き込まれてしまいました。
 
彼が家族とはぐれてしまったのは、わずか20~30分でしたが、それ以来、話すことができなくなってしまったのです。「吹雪の国境で母親と離ればなれになってしまった後、ファーザドはひと言も言葉を発することがないのです」と父親のジャリル*は語ります。
 
避難の旅で健康状態を悪化させる難民の子どもは増加しており、ファーザドはそのうちの1人です。
 
子どもたちの症状は多岐にわたり、発達障害や自傷行為、悪夢、うつ病など、さまざまです。UNHCRの勧告にもかかわらず収監された若年者は、特に脆弱性が高くなっています。また、メンタルヘルス(心の健康)の問題は、両親の保護なく1人で旅を強いられ、精神科医やヘルスケアを受診する機会がない子どもに多く見られます。
 
ファーザドと彼の父親、そして22歳の兄アワルミール*は今、ギリシャ・レスボス島カラテペの自治体が運営するキャンプで暮らしています。彼の母親ウズマ*と18歳の兄ラフィク*はドイツにいます。
 
父ジャリルは、かつては農業を営んでいました。ジャリルと彼の妻が、子どもたちの安全のため、戦火の故郷アフガニスタンを離れ、2015年にイラン経由でトルコにたどり着いた時の話をしてくれました。トルコ国境に近づくと、雪が降っていました。他の3名の人々とともに、密航業者の車に押し込められてしまいます。「その密航業者の車は、雪用タイヤチェーンを付けていなかったので、車の走行に困難を極めていました」とジャリルは言いました。
 
「すると突然、その密航業者は、我々に車から出るよう命令しました…なぜなら、イランの警察が我々を追ってきたからです。」その時、標高約2,000~3,000メートルの位置にいました。彼らは全員、荷物を車の外に投げ出しました。そしてこの混乱の中、ウズマとラフィクは、異なる方向へ向かってしまったのです。
「幼稚園では、彼はたった1人で遊びます」

ジャリル、ファーザド、アワルミールは、急な坂道を上りました。心臓病を持つ50代のジャリルには、特に険しい道のりでした。ジャリルは続けます。「雪の中で、アワルミールが引っぱり上げくれるまで、私は座りこんでいました。そんな時に、我々はファーザドを見失ってしまったことに気付いたのです。」
 
ジャリルとアワルミールは道を引き返し、イラン警察に投降しました。そこで、たった1人でいるところを警察に発見されたファーザドに再会し、安堵しました。
 
「その日、ファーザドは完全に言葉を失ってしまいました」とジャリルは言い添えました。「幼稚園では、ファーザドはたった1人で遊びます。」以前の彼には、深刻な問題は何もありませんでした。「ファーザドは基本的な言葉は話しましたし、数も10まで数えられました。そして、他の子どもたちと遊んでいました。」
 
イラン警察のもとで、ジャリルは電話をかけさせてもらいました。親類からウズマとラフィクがまだ密航業者に捕まっていることを知り、ジャリルは、あとの2人の息子であるファーザドとアワルミールと旅を続けることを決意したのです。

 
母親ウズマと兄ラフィクはドイツへたどり着き、ジャリルとその他2人の息子は、イラン―トルコ経由の旅をさらに5回も試み、そして危険な航海にも挑んで、ギリシャを目指しました。
 
数か月をこのキャンプで過ごし、ジャリルはUNHCRのパートナー団体Metadrasi(ギリシャのNGO)による、家族の再会のための努力が実るよう願っています。
「家族と離れ離れになってしまった辛い苦難を思い出してしまうことが、ファーザドの心配の種です」

「家族と離れ離れになってしまった辛い苦難を思い出してしまうことが、ファーザドの心配の種です」と、レスボス島のアストリッド・カステレインUNHCR事務所長は述べました。「彼らの社会心理学的な幸福のために、家族の再会を迅速化することを各政府に重ねて訴えています。」
 
カステレインUNHCR事務所長は続けます。「ファーザドのために小児科も手配しましたし、家族3人はトイレに近いプレハブの新しい家に引っ越しました。」「ファーザドはよくパンツを濡らしてしまいます。私はいつも全て洗濯しなければなりません」とジャリルは言いました。
 
暖房のあるプレハブの家への引っ越しは、欧州委員会の資金援助により可能となり、ジャリルは、息子をきちんとトイレに行かせることができるようになりました。
 
カステレイン事務所長によれば、ファーザドはミティリーニにある特別な小学校へ通うことが可能になりました。この学校は、2か月前、障がいを持つ子どもを支援するために設立されたものです。彼の息子が気に入っているかどうか聞くと、ジャリルは「分かりません、彼は話さないから」と肩をすくめました。

カラテペの遊び場で、グレゴリス・パリスが近づいて手を握ると、ファーザドの顔が輝きました。
 
UNHCRが設立した子どもたちのためのスペースで、パリスはNGOセーブ・ザ・チルドレンで活動をしています。パリスがファーザドを抱きしめてブランコをしてあげると、2分で彼は微笑みました。「出会った最初の日から、ファーザドとの関係は築かれていました」とパリスは言いました。
 
UNHCRは、パートナー団体を通して、家族や子どもたちへ心理的かつ社会的な支援を提供しています。もちろん、家族とはぐれた子どもたちも対象です。
 
また、精神的なケアを必要とする人々を見つけ、適切な専門家を手配するための調整も行っています。
 
*個人情報保護のため、名前を変更しています
 
Roland Schoenbauer
 
原文はこちら(英文)

Afghan boy retreats into silence after separation from family


紛争・迫害の犠牲となる子どもたち

どうぞ、知ってください。紛争の最大の犠牲者である難民の子どもたちが、声もあげることもできず、一人苦しんでいることを。

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