中央アメリカで、ギャングに狙われた大家族が避難

エルサルバドルで、ペレス家の4人がストリートギャングに殺されました。生き残った17人はメキシコに避難しました

公開日 : 2017-04-21

メキシコ南部のチアパスにある若くして亡くなった身内の墓を訪れる、エルサルバドル難民のペレス家の3人

タパチュラ(メキシコ)2017年3月27日 ― ペレス家はエルサルバドルの首都郊外で、農産物やパンを売ってつつましく快適な暮らしをしていました。子どもたちは全員高校に通い、何人かは大学にも通学して、71歳のマリア・ルス・ペレスは女家長として家族の歴史が紡がれていくのを見守っていました。

 
「両親も祖父母も曾祖父母もエルサルバドルで一生を過ごしました」と彼女は言い、頭を振りました。「ですが、5,000米ドル(約60万円)の強奪によってすべてが終わってしまいました。」

 
全ては2015年夏に、マリア・ルスの義理の息子がエルサルバドルの野蛮なストリートギャングにいわゆる「戦争税」として現金の支払いを強要されたことに始まります。彼は支払うことができず、彼らに殺されました。

 

「私たちは動物のように、家の中に閉じこもり、食べ物を買いに走って出る時だけ扉を開ける生活を送りました」

マリアはメキシコ南部にある家の彼女の部屋で家族写真を見つめている。壁にかかっているドレスはエルサルバドルでギャングに殺された曾孫のマリア・ルスのもの

次の脅威は彼女の42歳の娘、サンドラ・フェリシタ・ペレスに襲い掛かりました。彼女の家族と仕事を守るための価格は5,000米ドル(約60万円)で、支払い不可能な額でした。サンドラと彼女の夫、10代の子ども3人は恐怖でいっぱいでした。

 

「私たちは動物のように、家の中に閉じこもり、食べ物を買いに走って出る時だけ扉を開ける生活を送りました」と彼女は言います。

 

檻の中のような状況で数週間過ごした後、彼女の19歳の娘、マリア・ルス ―祖母にちなんで名づけられた― は勇敢にも家族が経営する店に行きました。大学1年生でしたが、家族の仕事を手伝いたがっていました。ギャングが待ち構えており、彼女が外に踏み出すや否や、彼らは非情にもかわいくて若い女の子を店の中で撃ち殺しました。

 

「それを聞いた瞬間、私の人生は崩壊しました」とサンドラはマリア・ルスと2人の弟たちがおどけて笑っている写真を携帯電話に表示させながら言います。「2日後、私たちは彼女を埋葬し、逃げ出しました。逃げなければ彼らは私たち全員を殺そうとするだろうことは分かっていました。」

 
2015年7月に、何枚かの服と持てるだけの現金を持って、彼らはメキシコのある北へ向かって、サンドラの妹のカーラとその十代の娘2人と共に出発しました。

 

「2日後、私たちは彼女を埋葬し、逃げ出しました。逃げなければ彼らは私たち全員を殺そうとするだろうことは分かっていました」

27歳でギャングに殺されたサラの写真を握りしめるマリア

この時までに、強奪と脅迫はペレス一家に広がっていました。数週間前に逃げ出したサンドラの甥とその家族4人はすでにメキシコで難民申請をしていました。殺人は依然として続きました。

 
たった14歳で、マリア・ルスのお気に入りの孫だったロドルフォ・アントニオは、彼のプーマのスニーカーを奪おうとしたギャングによって撃ち殺されました。3か月後、その母親であるサラ・デル・カルメンが同じギャングに殺されました。

 
今、ペレス家で生き残った17人はメキシコ南部の小さな町の同じ一角で暮らしています。UNHCRの財政サポートにある程度助けられ、家族はそれぞれが自分たちの小さな家で暮らすことができています。

 
ペレス家のように、麻薬取引、強奪、強盗から性暴力や殺人を仕事として金を稼いでいる国際犯罪組織であるマラスというストリートギャングから逃れるために、中央アメリカからメキシコに逃れる人が増えています。

 
UNHCRはメキシコでの難民申請は2017年内に2倍以上になり、2万件を超えると予想しています。また、ペレス家のように大家族で移動するケースが増えています。

 
「以前にも増して大きな家族がメキシコで難民申請をしています」とマーク・マンリーUNHCRメキシコ事務所代表は述べています。「UNHCRは、こういった家族単位が一緒に暮らし、家を離れざるをえなかったトラウマ体験の中でお互いに支えあえるようにしています。」

 
メキシコへの移動はマリア・ルスにとってはつらいものでした。彼女は多くの病気に悩まされています。目が見えなくなり、ひざは小さなメロンの大きさにまで腫れ、高血圧で、心臓障害があります。

 

「UNHCRは家族単位が一緒に暮らし、お互いを支えあえるようにしています」

孫を学校に連れていくアナ

けれど、生き残っているペレス家は全員一緒にいるので、彼女は生きています。

 

「母の体調が思わしくないので、面倒を見ています」とマリア・ルスのもう一人の娘であるアナ・ルスは言います。「家族がみんな仕事に出ているときは、子どもと孫の面倒も見ます。」

 

彼らはお互いに助け合い、生きるのに必要なお金を稼いでいます。マリア・ルスの娘カーラはトルティーヤ屋で12時間働き、1日に5米ドル(約600円)だけ稼いでいます。サンドラは家の外で小さな店を経営しており、日々の利益は同じくらいの水準です。アナ・ルスの夫パブロは地域の機械工のところで働き、1日に10米ドル(約1,200円)稼いでいます。彼は義理の息子2人と甥に修理屋での仕事を斡旋することができました。

 

「家族と一緒にいることで、より安心できるものです」とサンドラは語ります。彼女は唯一生き残った息子のホセを捕もうと手を伸ばします。彼は修理屋で働いており、いつかメキシコの大学に入ることを望んでいます。

 

「私は他の人たちに私たちが一生懸命、できる限りの努力をしているのだと知ってほしいです」と彼は言い、急に泣き出します。「それが死んだ私たちの家族の名誉のためなのです。」

10代の姪と孫2人と座るアナ

James Fredrick and Daniele Volpe

 
原文はこちら(英文)
As gangs target relatives, a Central American family flees


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