避難した先で難民が、まず始めに、行わなければならないこと。
公開日 : 2017-01-20
何日も荒野を歩き、時として生命の危険にさらされながら、何とか避難先の国にたどり着く難民。しかし、国境を越えたからといって、安全が約束されているわけではありません。到着したばかりの難民は、避難先でもさまざまなリスクに直面しています。たとえば、身支度はおろか、自身を証明する書類さえ持たずに逃げてきた人々は、避難先の国で不法に滞在しているとみなされて強制送還されたり、搾取や暴力にさらされる可能性もあるのです。このようなリスクから難民を守り、安心して避難生活を送るために必要な最初のステップが「難民登録」であり、UNHCRは設立以来、逃れてきた難民の登録を世界中で行ってきました。

UNHCRはキャンプや到着ポイントで難民登録を行い、保護を必要としている難民を把握することで仮設住居や食糧の支援を行います。また、登録時のインタビューでは、途中で家族とはぐれ、一人で国境にたどり着いた子どもや、持病、障がいがある人など、特別なサポートを必要とする人を見つけ出し、難民一人ひとりの置かれた状況を正確に把握するとともに適切な支援を行います。
【難民登録後、難民は主に下記のような支援を受けられるようになります(例)】

▶ 安心して生活できる仮設住居
難民キャンプでの登録後は、プライベートが確保された仮設住居に家族で移ることができます。紛争や迫害によるトラウマを抱えた難民は、このような安心できる空間で生活することにより、日常を取り戻していきます。

▶ 難民の子どもの未来につながる教育
登録時のインタビューを通して、学齢期の子どもは教育の機会を得ることができます。子どもたちは学校に通うことで紛争や迫害により受けたトラウマを乗り越え、また児童労働や徴兵からも身を守ることができます。
▶ はぐれた家族との再会
避難の道中で家族とはぐれてしまった子どもたちは、性暴力や虐待、見知らぬ土地で拘留されるリスクにさらされています。難民登録を済ませることで、子どもたちは安全な場所に保護され、また名前や年齢などの登録データを使って家族の捜索が可能となり、はぐれた家族との再会につながります。

▶ 心と身体に必要な医療ケア
母国の紛争で心身ともに傷を負った人、逃げてくる途中で負傷した人など、難民の多くは医療ケアを必要としています。難民登録を済ませることで、避難先でも医療サービスを受けられるようになります。
「神に感謝せずにはいられません」
夫とともにスーダンに逃れたばかりの南スーダン難民のテレサのお腹の中には、もうすぐ生まれる赤ちゃんがいました。到着後、助産婦から「病院に移って帝王切開をしなければあなたの命が危ない」と告げられたテレサは、夫とともにすぐに病院へ。しかし2人はそこで、手術には莫大な費用がかかることを知りました。一度は途方に暮れた2人でしたが、難民登録時に発行された身分証を見せることで医療費が無料になり、赤ちゃんは無事生まれたのです。テレサは言います。「神に感謝せずにはいられません。ほんの一週間前の難民登録で、私の身分証明書は発行されたのですから」。

故郷で多くのものを失い、命ひとつを持って逃れてきた難民が、安心して避難生活を送れるように、その日々の中で、やがて未来への希望を見つけられるように、今日も世界各地で、UNHCRは難民登録を行っています。
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