シリア・アレッポの廃墟の中に見える、希望のきざし

UNHCRシリア代表部は26万1,000人が冬用救援物資を受け取っていますが、破壊された建物と一時的避難キャンプのシェルターはまだ足りていません

公開日 : 2017-01-16

アレッポ(シリア)2017年1月4日 ― サジャド・マリクUNHCRシリア事務所代表は、アレッポ市民への緊急支援のため国連機関が駆けつけており、今後に希望が持てそうな兆しがあると述べました。

マリク代表は、市民のニーズを汲んで、的確な援助をするため、2016年12月にアレッポ東部の包囲攻撃が終了して以来アレッポに滞在しています。


「アレッポ市の魂は残っていますし、希望も望みもあります」とマリク代表は述べています。彼はシリアで国連の人道コーディネーターも務めており、4日に開かれた国連による記者会見に出席しました。
「私たちはアレッポ東部の人たちが少なくとも生活を再建しはじめるまでは、支援し続ける必要があります」と彼は付け加えました。

 

「私たちはアレッポ東部の人たちが少なくとも生活を再建しはじめるまでは、支援し続ける必要があります」

アレッポの現状

4年以上続いたアレッポでの武力紛争は、シリア政府軍がアレッポを奪還し、市民の避難に合意が示された2016年12月に終了しました。大規模な内戦を終わらせるため、敵対している双方の勢力が平和的対話に臨む希望は不確かながらも存在しています。

アレッポに住んでいると想定される150万人のうち、国連機関は40万人と連絡が取れており、同じくらいの人数が市内で避難していると推定されています。友人やほかの家族と一緒に住んでいる家族もあります。しかし、破壊された建物や非正規住居に住んでいると考えられる人は数千人に上ります。

UNHCRらの支援

救援物資を受け取るアレッポの住民たち
アレッポ東部に隣接するアル・シャーで、UNHCRと国連パートナー機関が配布する特に必要な救援物資を受け取るアレッポの住民たち

UNHCRとその他の国連機関とパートナー機関は、即時支援に注力してきました。優先してきたのは数年に渡って紛争下におかれていた人たちへのシェルター、食糧、燃料、冬用の衣服、水、公衆衛生、医療支援の提供です。

国連は現在アレッポには100人以上の国連職員が駐在しており、国際赤十字やシリア・アラブ赤新月社(SARC)、シリア国内のNGOや地方自治体といったパートナーと協力して活動しています。

アレッポにあるジブリーン集合シェルターで、家を失った父親とその子どもが火の周りで暖まろうとしています。

アレッポの中にも、主に未使用の軍需品があるために援助を受けられていない地域が少ないながら存在しており、これらの障害を安全に取り除くための緊急支援が必要とされています。

マリク代表は、子どもが通りで遊ぶようになり、人々は恐る恐る、生活を立て直すことについて話すようになってきたと言いました。「私たちはこの希望の光と立ち直りの早いシリア人の望みに対し投資し、平和を取り戻す機会にしなければなりません」と彼は付け加えました。「この4~5日でも、状況は大きく変化してきています。」

2016年12月以来、水貯蔵タンクの導入や水道管の修理により、市民110万人への安全な水の提供が回復しつつあります。

あまり良くない水環境に加え、もう一つの問題は暖かさです。毛布、マットレス、冬用衣服、冬用キット、家族用テント、絨毯、寝袋、燃料缶の配布によって、26万1,000人以上が援助を受けています。ですが、マリク代表によれば、シリアの凍えるような寒さを乗り切るためにはこれだけでは到底足りません。

7つの国連移動クリニックと12の移動チームが医療支援を提供しており、事前備蓄分の医療支援物資70トンが、十分な治療を受けていない地域で提供される治療30万回分として用意されています。加えて、子ども約1万500人がポリオワクチンの予防注射を受け、重篤患者とアレッポ東部の紛争で負傷した人1,381人は公立病院に紹介されました。衛生キットを受け取った人は数万人にのぼります。

食糧供給率は急上昇しており、ひと月で11万9,500人分の食糧が供給されました。集合シェルターに住む2万700人に暖かい食事を提供するための共同キッチンが設置されています。国連は毎日4万人に焼き立てのパンを配っています。

「私たちはこの希望の光と望みに対して投資し、平和を取り戻す機会にしなければなりません」
アル・マシャティヤーの子どもたち
アレッポ東部に隣接するアル・マシャティヤーで、破壊された建物の前に立つ子どもたち

身内がいない、または家族と生き別れた子どもは国連によって特別に保護され、フォローアップケアが行われます。避難生活をおくる子どもたちのためにプレハブの教室が建設され、教材が運び込まれました。最終的に、UNHCRとパートナー機関はアレッポ中の被害を受けたすべての教育施設を修復するための支援をするつもりです。

「私たちがやるべきことは尽きません」とマリク代表は付け加えました。「私たちは取り組みを続ける必要があります。」

地方当局や避難民との連携

国連は地方当局と共にいくつかの地区とポンプ場でがれき清掃をしています。避難民115人が国連のインフラ復旧ワークショップに参加しており、この協力の形態は他の地域でも実施されるでしょう。

さらに、復興のためには包括的アプローチが必要です。ここでは、大規模な紛争は未だ終結していないため、計画は依然として計画のままです。これからは重機や技術者も必要になってくるでしょう。その間にも国連は復興に何が必要かを精査しており、すぐに資金提供者に向けて、現状を共有し、必要な資金を提示する予定です。

一刻も早く解決されるべきシリア紛争

父親とその子ども
アレッポにあるジブリーン集合シェルターで、火の周りで暖まろうとしている家を失った父親とその子ども

「ここ数日間、私はアレッポ支援チームと共にアレッポ東部を出入りし、このプロジェクトによって市の主要道路がきれいになっていく様を目の当たりにしています」とマリク代表は言いました。「人々がアレッポに戻り、『どうやって生活を再建すればいいのでしょう』と言うようになりました。」

アレッポでの紛争は終わったものの、大規模な人道支援が国全体で必要とされている状況だとマリク代表は強調しました。シリア人486万人が紛争によって隣国に避難している一方、国内に残された1350万人は人道支援に頼って生きており、そのうち国内避難民は630万人に達しています。国連機関とNGOは2017年に行う予定の地域支援計画に46億9,000万米ドル(約4,784億円 ※102円/米ドル換算)必要であるとしています。

2016年12月の声明でフィリッポ・グランディ難民高等弁務官は、今回のような人々の強制的な移動や苦しみがアレッポを最後に終わることはなく、他の紛争でも繰り返される「重大な危険」があると述べました。「全ての場所において市民を守るために、シリアの紛争は今すぐ終結するべきです。一国の猶予もなく、今すぐに」と彼は述べました。

Writing by Matthew Saltmarsh in Geneva.

原文はこちら(英文)

Amid the ruins of Aleppo, UNHCR sees signs of hope

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