シリア人のレスリングチャンピオンが若い難民の夢を呼び起こす

シリアからヨルダンへの避難

ザータリキャンプ（ヨルダン）、2016年7月26日 ― シリア紛争の最初の2年間は、モハメッドは以前同様に生活していました。彼は学校に通い、近隣で兄弟やいとこたちとサッカーをしたり、ヨルダンとの国境地帯の側にある、近くの村のタルシハブの湖へ暑い週末に泳ぎに行ったりしていました。

2013年2月のある夜、爆弾が降り始めました。モハメッドと彼の家族が身を守るために片隅に縮こまっている間、彼らの家はあちこち壊されましたが、幸運にも彼らは明朝に残骸から無事に出てきました。「あれは僕たちの人生で最悪の夜でした」と、モハメッドは語りました。数日以内に彼と両親と3人の兄弟たちはヨルダン北部のザータリ難民キャンプに到着しました。モハメッドは11歳の時に知っていたすべてから切り離されて感じたテント暮らしの絶望について話しました。「ここには何もないと感じました」と彼は言いました。さらに、「まず、自分と同じような歳の子どもたちの学校がなかったので、最初の6か月は、ただテントに座っているだけか、何かしたくても出来ませんでした。砂ぼこりだらけで、皆いつも病気になっていました」。

レスリングとの出会い

ついにモハメッドは学校に戻ることができ、新しい友達もつくることができました。ですが、ルールもない少年たちのサッカーのゲーム以外にキャンプでやることはありませんでした。10代のうんざりした少年たちはあてもなくうろつき、けんかも珍しくありませんでした。
キャンプに住むある人物に、より良い方向に若者の攻撃性を向ける計画がありました。モハメッド・アレー・アクラドはダラア南部の町出身のシリア難民（34歳）で、かつて中東のレスリングチャンピオンでした。
ユニセフとマーシーコープスがキャンプにフィットネスセンターを開いたとき、彼は交渉して、子どものためのレスリング教室を設けることを提案しました。賛同を得た後、モハメッドは同じ名前のこの少年と話し、このコースに加わるように誘いました。

「私は最高のレスラーたちと戦って自分の強さを知りたいです。たとえ負けても私は彼らから学ぶことができます」

「私は数回、通りでモハメッドがけんかしている様子を見ていました。そこである日私は彼のところに出向き、レスリング教室に来るよう伝えました」。
その少年はレスリングについて何も知りませんでしたが、友達数人が加わった後、レスリング教室に入ることを決めました。
レスリング教師はこのスポーツのルールとともに、規律、対戦相手の尊重、自分の攻撃性をコントロールすることといった価値を教えました。
毎回の教室は、少年たちが心の中にあること、例えばシリアの戦争やキャンプでの生活について話すように促されることから始まりました。

才能の開花

実際に彼らがレスリングを始めたら、モハメッドはこのスポーツを大好きになり、自分にレスリングの才能があることを発見しました。これまでにキャンプで行われた4回の選手権では、モハメッドは自分の重量クラスの全員に勝っています。
この成功によって彼の野望は膨らみ、そして今、14歳になった彼はより強い相手と戦うために海を渡り、彼の指導者のような地域チャンピオンになることを夢見ています。
「私は海外に行き、究極の勝負をしたいんです」と彼は語りました。「私は最高のレスラーたちと戦って自分の強さを知りたいです。たとえ負けても私は彼らから学ぶことができます」。

彼のトレーナーは、弟子の才能に気づき、さらに重要なこととして、彼自身が目標のために献身する意思があると確信しています。「彼は国内だけでなく国際的な舞台で戦うための才能を持っていますが、もしキャンプに居続けるだけなら、その成長には限界があるでしょう。彼はより高いレベルの対戦相手と戦う必要があります」。

さしあたり彼は、モハメッドが夢を見つけたことで十分だと言います。レスリングは彼に野望の種を植えつけました。もし夢があれば、希望も持てます。それはキャンプでの彼の生活に意味を与えます。私はいつか対戦相手と戦っている彼をテレビで見る日が訪れることを願っています。もしかしたらオリンピックかもしれません。私は彼の成功の一端に関わったということです」。

Charlie Dunmore

詳細はこちら（英文）
Syrian wrestling champ inspires young refugee’s dreams