ギリシャで足止めされた難民の行方
公開日 : 2016-06-30
安心して暮らせる土地を求めてヨーロッパを目指したシリア難民の多くは、まず海路でギリシャに渡り、バルカン半島を陸路で北上するというルートを辿りました。2015年だけで85万人以上がこのルートを行き、今年に入ってからも昨年を上回るペースで移動する人は増えていました。ところが、2月にギリシャとマケドニアの間の国境が封鎖され、難民がこのルートをたどってヨーロッパを目指すことは事実上できなくなってしまいました。
この封鎖により、このときマケドニアの国境近くまで来ていた人たちは、ギリシャの小さな村イドメニに足止めされ、ぬかるんだ土地に簡易テントを張り、食糧不足や健康被害にさらされながら限界に近い状態で過ごしていました。そして先日、ギリシャ当局の方針で国内の別の場所に避難をすることになったのです。
避難した先にあった、より厳しい現実
避難をした人々の中には、UNHCRとギリシャ当局が協働して管理する避難所など、以前よりもある程度環境が整った場所で暮らせるようになった人たちがいる一方で、より厳しい暮らしに直面している人たちもいます。彼らが現在暮らしているのは倉庫や工場のような場所であり、そこには食べ物や水も十分になく、トイレやシャワーなどの生活に不可欠な設備も整っていません。シリア難民の一人は言います。「イドメニには少なくとも、生活に必要な基本的なものはありました。まさか、あれよりもさらに酷い環境で暮らすことになるとは想像すらしていませんでした」。彼らはこのような厳しい生活に疲れ、またそれがいつまで続くかわからないという不安を抱えながら、自分たちの未来をまったく見通すことができない状況に置かれているのです。
苦しみに終わりが見えないということ
つらいことが起きたとき、そしてそれが自分の力ではどうにもできないものであるとき、私たちがなんとか前進することができるのは、きっと、その苦しみがいつか終わるということを信じられるからでしょう。だからこそ、安全に暮らせる土地を求めてヨーロッパを目指しながら、思い描いた風景とは程遠い現実の前にたたずみ、その状況に依然として終わりが見えないということが、それがどれほど不安なことか、彼らの気持ちを想像することができるのではないでしょうか。
国境付近に留まっていた1万人近くの難民を国内の数か所に移動させ、彼らのために住環境を整えるということ。これをギリシャ一国がすべてを請け負って解決することは困難です。だからこそ、今ますます国際社会、そして一人ひとりの協力や支援が必要になっています。このような厳しい避難生活を続ける人たちが一日も早く、少しでも安心して暮らせるよう、皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
続・ヨーロッパ危機
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