開幕直前!「史上初の難民チーム、オリンピックへ!」
公開日 : 2016-06-30
― #TeamRefugees (チーム・レフュジーズ)―
1896年に近代オリンピックが初めて開催されてから、今年で120年。今も世界で紛争がやまず難民が増え続ける中、素晴らしいニュースがもたらされました。8月5日に開幕するブラジル・リオデジャネイロオリンピックに、史上初めて、難民を代表するチームが出場できることになったのです!
紛争や迫害などで国を追われながら、懸命に練習を続け、晴れて選手団に選ばれた10名の選手たち。今回はその中から、4名の選手をご紹介します。
ユスラ・マルディニ選手(18)/ 水泳 /シリア出身
「全ての苦しみと嵐の後には、穏やかな日々が来ると伝えたい」
動画:https://www.youtube.com/watch?v=SEBAAO7EgJw

トルコ沖の海上で、ギリシャへ向かう粗末なボートのエンジンが突然止まった時、競泳選手であるユスラはどうすべきか分かっていました。姉と海の中へ入り、約20名を乗せたボートを泳ぎながら押し始めたのです。「乗客の中には泳げない人もいました。人々を溺れさせるわけにはいかない。ただ座って、“溺れてしまう!”と嘆いているつもりは全くありませんでした」。
何人かの乗客も彼女たちに加わり、ボートは奇跡的にギリシャ沿岸に流れ着きました。ユスラ姉妹の強い意志が、乗客全員の命を守り切ったのです。
その後彼女はドイツに逃れ、ベルリンで練習を再開しました。コーチも驚くほどの上達を見せ、ついにオリンピック出場の夢を叶えたのです。
「私は全ての難民を代表したいのです。そして人々に、全ての苦しみと嵐の後には、穏やかな日々が来るということを伝えたいのです。挑戦は続けるべきです。人生には何があるかわかりません。あなたにも、私のようにチャンスがめぐってくるかもしれないのです」。
ポポル・ミセンガ選手(24) / 柔道/コンゴ民主共和国出身
「全ての難民に、メダルをささげたいのです」
動画:https://www.youtube.com/watch?v=ebys-cuvNFw(英語)

ポポル・ミセンガがコンゴ民主共和国内のキサンガニで紛争を逃れたのは、まだ幼い頃でした。一人で森の中をさまよい続け、8日後に救出されました。そして、保護された首都キンシャサの施設で柔道に出会ったのです。「柔道は、親のない私に穏やかさと規律と献身を教えてくれました。」
しかしコンゴでの練習環境は劣悪でした。彼が試合に負けるたびに、コーチはわずかな食べ物とともに彼を何日も監禁するのです。そして2013年、ブラジルで開催された世界選手権で敗退し同様の仕打ちを受けた彼は、ついに宿泊先からチームメイトと脱出し、助けを求めました。「コンゴでは紛争で多くの人が殺され、混乱状態です。私はブラジルで人生をより良いものにしたいと思ったのです」。
現在ポポルはブラジルで、元オリンピック銅メダリスト、フラビオ・カント氏の道場で指導を受けています。オリンピックへの出場が、母国の親族との再会の糸口となることを願っています。彼は言います。「難民にも大切なことが成し遂げられると示したいのです。私は必ずメダルをとります。そして全ての難民にそれをささげるつもりです」。
アンジェリーナ・ナダイ・ロハリス選手(21) / 陸上 /南スーダン出身
「両親を助けたい」オリンピックにかける思い
動画:https://www.youtube.com/watch?v=rA1fCx-4ON8(英語)

アンジェリーナは、母国南スーダンを追われた6歳の時から両親に会っていません。故郷の村では、紛争で何もかも破壊されました。その後両親が生きていることは伝え聞きましたが、昨年南スーダンは厳しい食糧不足に見舞われました。「良い成績をあげて、その賞金で両親を助けたい」。それが今、避難先のケニアで練習に打ちこむ彼女の最大のモチベーションです。
アンジェリーナは難民キャンプの学校の競技会で勝つたびに、走るのが得意だとは思っていましたが、プロのコーチから選抜されるまでは、その人並み外れた能力には気づきませんでした。彼女は今、オリンピックで良い成績をあげられるよう練習に励んでいます。
「もし今後賞金が手に入ったら?お父さんに家を建ててあげたいです」。
ヨナス・キンド選手(36)/マラソン / エチオピア出身
「オリンピックへの難民の出場は、大きなメッセージになるはずです」
動画:https://www.youtube.com/watch?v=zHiV1E-8ils(英語)

「“難民でもオリンピックに出場できる”と聞いて、絶対に出たいと思ったのです。普段から毎日練習していましたが、そのニュース以来、一日に2回の練習をするようになりました」。ヨナスは笑顔で話します。彼がルクセンブルクに避難して5年。マラソンの練習の傍らフランス語のクラスに通い、タクシーの運転手として働いています。ヨナスにとって、母国から逃れた時の話をすることは未だに痛みを伴います。「エチオピアは厳しい状況でとても生活することはできません。命の危険があるのです」。
彼にとって、オリンピックで世界の一流アスリートと競うことは、他のレースとは全く違った意味を持ちます。「それは大きなメッセージになるはずです。難民という立場でも、ベストを尽くすことができる。もちろん困難はあります― 私たちは難民ですから。でも、難民キャンプでも練習はできます。若い難民の選手たちは向上することが可能なのです」。

フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、喜びとともにメッセージを送ります。
「競技生活を中断されながら、夢を現実にした選手たちに深い感銘を覚えます。難民チームのオリンピックへの参加は、全ての難民が持つ、苦難を乗り越えより良い未来を築こうとする勇気と忍耐への賛辞です。UNHCRは、難民チームと全ての難民と共にあります」。
8月5日の開会式では、難民チームは開催国ブラジルの前に五輪旗を掲げて入場行進しました。表彰式ではそれぞれの出身国の国歌の代わりに五輪賛歌が歌われます。
様々な思いを胸に、オリンピックにのぞむ難民チーム。皆さんもぜひ、その一人ひとりに大きなエールを送ってください!
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