安全にゲイでいられる場所を求めて

公開日 : 2016-06-23

故郷での暴力や危険を逃れた後、LGBTI難民がカリフォルニアで、市民やベイエリアのNPO団体の協力により新しい生活を始めています

写真:シリアからアメリカに渡ったサブヒ・ナハスと彼のアメリカ人のパートナー

サブヒ・ナハスは故郷シリアを逃れ、自分らしくいられるサンフランシスコへ

サブヒ・ナハスは故郷であるシリアのイドリブで彼氏と手をつないで歩いていたら、拷問にかけられ、殺されていたかもしれません。シリア北西のイドリブでは強硬派の軍隊がゲイの男性を狙い、処刑すると言われています。

そのため、ナハス(28歳)は2012年9月にシリアから脱出しました。戦闘地域は広がり、戦略的位置にあるイドリブまで戦闘員が侵入していました。

大きな虹の旗がサンフランシスコのカストロ地区にたっています。

「家族は私がゲイであることを認めてくれたことがなく、その時点で家の中でも、町中でも危険にさらされていました。父親がそのうち私がゲイであるのではないかと軍に明かすことを恐れていました」と2015年6月にサンフランシスコに到着したナハスは説明しました。彼はカリフォルニア北部にある、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)、そしてインターセックス(I)(通称LGBTI)難民を危険な環境から救うことを目的とした2つの協会から援助を受け、定住することができました。

 

サンフランシスコに拠点を持つNPO団体「避難、亡命、移住のための協会」(ORAM)は職員をトルコに置き、迫害を逃れるために母国を離れたLGBTI難民に手を差し伸べ、ビザの申請手続きを助けています。

 

ナハスはバークレー付近に拠点を置く「ユダヤ家族と地域サービス(JFCS)イーストベイ」というLGBTI難民の再定住プログラムを行っているNPO団体からも支援を受けました。2011年以降、JFCSイーストベイはベイエリアにいる60人ものLGBTI難民と庇護希望者を支援してきました。再定住プログラムとして、ホストファミリー付きの仮設住宅、カウンセリング、そして法的支援を提供しています。

 

「サンフランシスコは自分らしくいられる場所だと思い、いつか住めることを夢見ていました」とナハスは言いました。現在はカストロというサンフランシスコの象徴的なゲイ地区でアメリカ人のパートナーと暮らしています。シリアをはじめとする中東地域やアフリカの国々では、ゲイであることが違法とされており、懲役や死刑に罰せられることも少なくありません。

「家族は私がゲイであることを認めてくれたことがなく、その時点で家の中でも、町中でも危険にさらされていた」とナハスは語ります。

ORAMサンフランシスコ支部を指揮するピーター・アルトマンによれば、LGBTI難民は世界の中で最も孤立され、冷酷な扱いを受けている集団の1つです。「この問題の範囲は徐々に広がっています。なぜなら、地域によってLGBTI難民の権利を受け入れ始めている場所もあれば、ホモフォビア(同性愛や同性愛者に対して否定的な価値観を持つこと)が激化している場所もあるからです。」

 

3月にORAMはNPO団体の職員がよりLGBTI難民と円滑なコミュニケーションをとれるように多言語用語集を出版しました。用語集はペルシア語、アラビア語、フランス語、そしてトルコ語に訳されています。

 

ナハスがサンフランシスコにたどり着くまでの長い旅

ナハスがベイエリアにたどり着くまでの道のりは決して楽ではありませんでした。彼は車でイドリブからレバノンの首都であるベイルートに移動し、さらに南トルコのアンタキヤに行くという2回の危険な旅をしたのです。

 

「イドリブからベイルートに行く際の検問所で代わりに話してもらうため、運転手に通常の倍の金額を払いました。私が話したら、軍人や見張り人に私がゲイであると疑われるのではないかと思ったのです」とナハスは語りました。

 

レバノンにいる難民や庇護希望者が働くのは以前にも増して厳しくなっています。半年間をベイルートで過ごした後、ナハスのお金は底を尽きました。「シリアに帰国する選択肢はなかったので、最後に残っていたお金をトルコ行きの航空券に使いました」とナハスは言いました。ナハスはトルコとシリアの国境付近で活動している国際機関で翻訳の手伝いをしていたのです。

ナハスはトルコにいた時、LGBTI難民の生活状況や避難の申請状況について調べていたORAMの代理人に出会いました。UNHCRが支援する申請手続きをORAMの代表者と一緒に行った、と言います。ORAMはアメリカの国土安全保障省の面接の流れをナハスに説明し、後にベイエリアのホストファミリーを探すことができました。

 

ORAMは主にトルコで活動しています。「ORAMやその他のアドボカシー団体の仕事は非常に重要です」とナハスは言います。

 

ベイエリアに移住した時、ナハスは翻訳力のおかげでORAMに就職することができました。アラビア語の翻訳、出版デザイン、そしてLGBTI難民の権利についての代弁者を務めたことがあります。さらに、彼は2015年8月にシリアからサンフランシスコに辿り着くまでの体験について国連安全保障理事会でスピーチをしました。

サンフランシスコの友人の食事会でテーブルの準備をするナハス。

「ナハスはあまりにも長い間恐怖の中で過ごしていたので、時々内に閉じこもってしまいます。そういう時は、彼が安全な場所にいることを思い出させています」と9か月間前からナハスのパートナーであるマーク・アバレットは言いました。最近、アバレットは家族にナハスを紹介しました。

 

「LGBT難民を定住させる時は、1人1人の周りにサポートグループを作るため、定住までの過程はゆっくりであり、さまざまな配慮をします」と、JFCSイーストベイの難民移住者サービスディレクターのエイミー・ワイスは述べました。

「サンフランシスコは自分らしくいられる場所だと思い、いつか住めることを夢見ていました。」とナハスは言います。

アメリカで難民の受け入れをしているジューディー・サロモン

バークレー出身の小学校の先生であるジューディー・サロモン(64歳)は1月からウガンダから来た2人のゲイ難民のお世話をしています。「難民の定住で一番必要なのはLGBTの人々を家庭で受け入れることだと初めて聞いた時、私はその状況を理解し、手伝いたいと思いました」とサロモンは話しました。彼女の子どもは独り立ちし、現在は一緒に暮らしていません。

ゲイのウガンダ難民と一緒に図版集を眺めるジューディー・サロモンとその夫。

「最初、ウガンダからのゲストは怯えていました。彼らにとって全てが新しく、母国ですでにたくさんの苦労をしてきました」とサロモンは言いました。「でも緊張が解けたのは私の6歳の孫に会った時でした。子どもにはみんなをリラックスさせる力があるのです。」

 

サロモンによれば、JFCSとの契約では難民と過ごす期間は6か月であり、一緒に暮らし始めて1か月で家族のようになりました。

 

UNHCRはLGBTI難民の権利を守ることを約束しており、職員やパートナーたちの能力向上に努めています。2015年には「多様な性的指向や性同一性の人を守る」資料において、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、そしてインターセックス庇護希望者や難民を守ってきた世界の成果を初めて公表しました。

 

ワイスによれば、JFCSイーストベイには世界中のLGBT難民から連絡が来ますが、UNHCRから難民として認められた人しか支援できません。定住させてきた多くのLGBTI難民は、ウガンダ、コンゴ、ブルンジ、そしてルワンダといったアフリカ諸国出身の人が多く、他にも旧ソビエト連邦や中東地域から来ています。

 

「同性愛者を救う行為を犯罪とみなす国もあるため、直接的に彼らを支援することは大変です」とワイスは述べました。

 

祭司に自分がゲイであることを打ち明けたリチャード・モウアワッド

このような背景もあり、リチャード・モウアワッドはサンフランシスコにあるORAMと最近つながり、中東地域のLGBTI難民や庇護希望者を手伝うボランティアをしています。モウアワッドはレバノン出身で、アメリカで庇護申請をしました。

 

「私はゲイの若者がサンフランシスコの街を歩いているのを見ます。彼らはとても自由で、私が若かった頃にこのような環境がなかったことに悲しくなります」と29歳のモウアワッドは言いました。モウアワッドはベイルートから16キロメートル離れたジョウニエという小さな町で育ちました。彼は庇護希望者として、レバノンに帰国するのは危険すぎると言います。

 

モウアワッドが初めてゲイであることを打ち明けたのは8年前、21歳の時です。彼は自宅から2時間車を運転し、ある町の祭司に告白しました。

 

「私はカトリック教徒として育ち、祭司たちは教養があると常に言われていました。告白の中で、私は男性が好きであることを祭司に伝えました。彼は私の秘密を守ってくれましたが、自分を直しなさい、と言われました。サンフランシスコは私にとって、新しい始まりなのです」とモウアワッドは語りました。

友人の食事会で料理の準備を手伝っているシリア難民のサブヒ・ナハスと、アメリカ人パートナーのマーク・アバレット。

Halima Kazem ― 2016年5月18日

原文はこちら(英文)
Searching for a safe place to be gay


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