イラクの人びと、戦闘地モスルを逃れて少しでも安全なシリアへ
UNHCRはシリアの遠隔地ハサカへ向け、砂漠を横断する4,000人ほどのイラク人に対し、緊急支援のための空輸機5機を手配
公開日 : 2016-06-08
モスルを逃れたイラク難民
カミシリ/ダマスカス(シリア)、2016年5月27日 ― ISILが支配するモスルとその周辺地域から逃れ、シリアに到着したイラク人4,000人のうち数人が、安全を求めるなかで経験した非常に危険な旅について語りました。
5月のはじめ以来、合計4,266人のイラク難民が、イラクの国境から14キロメートルのところに位置する、シリアの北東部にあるハサカ県のアル・ホル難民キャンプに到着しました。ほとんどの人が、イラク北部の都市を支配している過激派や、支配権をめぐる闘争、都市周辺で続く戦闘から逃げてきたと語りました。
その結果、今後考えられるイラク難民の流入を前に、UNHCRはヨルダンからハサカよりも北に位置するカミシリまで、テントや毛布といった緊急物資を5回空輸する計画をたてました。
最初に配送した毛布1万3,000枚は5月26日に到着しました。救援物資は合計で最大5万人のイラク人難民と、彼らを受け入れている地域のシリア人を支援するのに十分な量です。
モスルからISILの支配地域を抜け、戦闘の最前線を巧妙に避けてクルド人支配地域のハサカに到着するまで、普通2日から1週間かかります。多くの難民が、その旅をするためには密航業者を雇う必要があったといいます。
モスルから家族とともに脱出した30歳のオスマンは、この旅は人生で最も危険なものであったと語りました。彼は砂漠地域を横断する旅の間中、四肢麻痺障害を患っている6歳の息子ムワファックを肩に担がなければなりませんでした。
「過激派に支配された地域で私たちが捕まることなく通り抜け、砂漠の厳しい気候に耐えられたのは、神の奇跡でしょう」とオスマンはシリア到着後、UNHCRの職員に話しました。彼は、てんかんも患っている息子が緊急治療を受けないと死んでしまうかもしれない恐れを、涙ながらに語りました。
国連機関主導で空路を整備

イラク難民1万6,000人以上と同様に、シリア国内で続く内戦により発生した避難民約9万人も受け入れているハサカ県は、現在、治安が悪く、シリア国内からトルコを経由して北部に陸路で運搬する経路では、国連の救援物資を受け取れなくなっています。
食糧とその他の重要な物資を含む人道支援物資を追加で運ぶため、国連のさまざまな機関によって、ダマスカスとカミシリを繋ぐ空路を整備する努力がなされています。
UNHCRは、安全を求めて戦争や紛争から逃げるすべての文民に対し、安全な通行を許可する重要性を強調します
UNHCRの支援

UNHCRは地域のNGOパートナーとともに、新たにやってきた人々に対し、人道的支援を提供しています。そのほとんどは、適切なシェルターや衛生設備、医療ケアへのアクセスがない人たちです。
テントやマットレス、敷布団を配布することに加え、UNHCRは、長旅の間に熱とほこりにさらされて起きる皮膚病や他の健康被害が見られる難民に対し、ヘルスケアを提供しようとしています。
サジャード・マリクUNHCRシリア代表は、UNHCRはシリアで安全を求めるイラク人に対してできる支援をすべて実行していると述べました。
「私たちは多くの人が紛争によって逃れざるをえなくなり、命をかけて遠方の安全な場所にたどり着くためだけに、過度な苦難を体験していることをとても心配しています。私たちは安全を求めて戦争や紛争から逃げるすべての文民に対し、安全な通行を許可する重要性を強調します。」
Mustafa Hasan and Qusai Alazroni
原文はこちら(英文)
Iraqis flee Mosul clashes for relative safety of Syria