シリアの心の傷を治すため奮闘する医師たち

公開日 : 2016-04-05

シリア、ダマスカス中心部にある、UNHCRが資金を提供する病院の診察室で、患者の話を聞く34歳のシリア人精神科医ナーラ。
家族を失い、心に大きな傷
ダマスカス(シリア)、2016年3月11日 ― アル‐サヒラの世界は崩れかけています。2年前、アレッポの自宅が爆撃で半壊した際、48歳の彼女は14人の子どものうち3人を亡くしました。避難を余儀なくされた家族はダマスカスで安全を求めましたが、またしても悲劇が襲いました。2月に13歳の息子ザカリヤが榴散弾によって亡くなったのです。

ダマスカス中心部にある病院の精神科医の診察室で、アル‐サヒラは、子ども達との死別で精神的苦痛を受けたと説明しながら、必死に手の震えを止めようとしています。

精神的な影響を受ける人が急増
首都ダマスカスから90km北に位置するカラマウンから来た34歳の精神科医ナーラは、アル‐サヒラの苦しみは、急激に増加している、紛争勃発からの5年間でシリア人たちが受けている精神的トラウマの一部だと言います。

「この危機は人々に深刻な精神的影響を与えています。しかし、異常な状況においてはいたって普通の反応です」とナーラは言います。ナーラは、UNHCRの資金提供を受けて、シリア新月社によって運営されている総合病院の精神医療・社会心理的支援部門を率いています。

紛争勃発後のシリア人の精神障害の増加を実証できる資料はありませんが、ナーラは治療が必要な人々の数はおおよそ3倍になったと推測しています。毎月彼女の病院で治療を受ける患者400~500人のうち、もっとも代表的な症状は、うつ(23%)、不安感(18%)、心的外傷後ストレス障害(PTSD、13%)です。

精神的苦痛のさらなる増加は、シリア国内の精神科医の数の一層の減少とも関係しています。シリア精神科医協会が公表した資料によれば、シリア全体で有資格精神科医は70人しかおらず、その数は危機が始まる前の半分以下にとどまっています。

医療従事者にも精神的負担
ナーラのかつての同僚たちも国を離れました。しかし、彼女を国にとどまらせたのは紛争の勃発でした。「危機以前は、海外に行き児童精神医学を専攻したいと思っていました。けれども、考えを改め、家族と一緒に暮らし自分の国を助けるためにとどまりました。シリアは私に多くのものを与えてくれ、恩返しすることがありました」と彼女は語ります。

ナーラのような残った人々にとって、その決断に犠牲がないわけではありません。多くの同僚のように、彼女も戦闘によって家族を失い、避難を余儀なくされました。仕事も医療従事者自身にも精神的犠牲をもたらします。

現状は正常ではない
アル‐サヒラのような患者には、うつ病のような特別な症状に対処するための治療が必要であると同時に、訓練を受けた専門家と彼女の経験を共有する機会や、回復に向けたプロセスを始めることが重要です。

「子どもを亡くしたアル‐サヒラのような人々の痛みを取り去ることはできません。しかし、私たちは評価することなく話を聞くことができ、彼らを家族や社会的ネットワークに再び結びつけるよう努めています。このような助けなしには、彼らはもっと苦しみ、症状は悪化しかねません」とナーラは言います。

ナーラが見たこの危機の唯一の前向きな影響は、以前は絶対に彼女の元へ来ることもなかった人々が今は助けを求めているため、精神的病気に関する汚名が取り払われたことです。最大の課題は、シリア人たちが彼らを取り巻くものに慣れてしまわないようにすることだとナーラは言います。

「5年間の戦争を経て、人々は慣れ始めています。私は、人々がこの状況に慣れてしまわないように常に働きかけています。シリア国内で紛争の打撃を受けたコミュニティで起きていることは全く正常なことではありません。」

By Charlie Dunmore in Damascus, Syria

※ 保護上の理由から名前は変更されています。

詳細はこちら(英文)
Doctors face uphill task to treat Syria’s mental wounds

 


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