「難民はなぜスマホを持っているの?」という素朴な疑問の答えから見えてくること

公開日 : 2016-02-29

携帯電話で自分の居場所を確認し、ギリシャに無事到着したことを家族に知らせようとするシリア難民。

トルコの海岸から17キロの場所に位置するリゾート地、ギリシャのレスボス島。毎朝夜が明けると、朝靄の中、頼りなく航路をとる難民を乗せた船が現れます。船上にはスマートフォンで自らの姿を写真におさめる人の姿があり、また島に上陸し、すぐさまwi-fiのネットワークを探す人の姿もおなじみの光景です。

 

スマホを片時も離さないその姿は、私たちの日常とそう変わらない風景なので、不思議な気持ちになる人もいるかもしれません。また、「なぜ難民なのにスマホを持っているの?」そんな疑問を持つ人もいるでしょう。変らぬ日常のなかでスマホを使っていた人が、ある日難民になるということ。そして、それがいま、世界で起きているということ。「難民なのに…」と思うとき、私たちはこのことを思い出す必要があるのではないでしょうか。

 

また、彼らがスマホを持つ理由は、必要な時に必要な情報を手に入れるためであり、その理由は、難民も私たちも同じなのです。

家族が小さなボートで地中海を渡る様子を携帯電話の動画で見せてくれた若者。ボートは途中で故障、彼らはNGOに救助された。

たとえば、死と隣あわせの海の旅の途中で撮った写真は、難民申請を行う際の証明材料のひとつになります。また、スマホのGPS機能は、避難の道のりで大きな役割を果たしてくれることはいうまでもありません。さらに、先に同ルートを辿った仲間と情報交換をしたり、旅の途中ではぐれた家族と、アプリで連絡を取りながら目的地で再会するといったことも、スマホがあるからこそ可能になることなのです。

ドイツ国境付近の一時滞在センターに到着し、スマートフォンをWi-Fi接続して連絡をとろうとする若い女性。

難民とスマホの関係について考えてみることで見えてくるのは、私たちが今世界で起きている問題の本質について考えるうえで、とても重要なことなのかもしれません。たまたま今、戦争に巻き込まれていない国に生まれた人間が、紛争に巻き込まれ、生き延びるために国を離れることになってしまった人たちのことを想像してみること。また、そこで起きていることを表層の向こう側で起きていることまで考えてみること。そうすることで、私たちは世界と、そしてそこに生きる人たちを、より理解できるようになるのかもしれません。


紛争・迫害で故郷を追われた難民は、こうしている今も増え続けています。苦難の旅を強いられる難民に、ご寄付・募金をお願いいたします。

※当協会は認定NPO法人ですので、ご寄付は寄付金控除(税制上の優遇措置)の対象となります。

X

このウェブサイトではサイトの利便性の向上を目的にクッキーを使用します。詳細はプライバシーポリシーをご覧ください。

サイトを閲覧いただく際には、クッキーの使用に同意いただく必要があります。

同意する