気候変動や災害による避難に関するよくある質問

公開日 : 2016-11-28

気候変動と関連付けられる避難は、仮想未来の話ではありません。今の現実の話です。

バングラデシュのクタブディア島で竹の橋を渡る女性。バングラデシュでは、数百万人が海面上昇による危険にさらされている

2016年11月6日 ― マラケシュで開催された第2回締約国会議(COP22)での、気候変動と避難に関するよくある質問に対する回答です。

 

1.どれくらいの人がすでに気候変動によって避難していますか?

気候変動と関連付けられる避難は、仮想未来の話ではありません。今の現実の話です。2008年以来、毎年平均2,150万人が、洪水、嵐、山火事、極端な気温などの突然生じる天候に関わる災害によって避難を強いられてきました。さらに数千人が、干ばつや海面上昇による海岸の浸食などのゆっくりと進行する災害によって彼らの家から逃れています。科学者たちの間では、気候変動と他の要因の組み合わせによって、将来避難する人数が増加するという予想が高い合意を得ています。気候変動は、ダルフールからソマリア、イラクそしてシリアまで今日の多くの紛争において、“脅威の乗数”でもあります。一般的にアラブの春がシリア紛争を導いたと見られていますが、その後の紛争に先行してシリア北東部で生じた5年間の干ばつによって、約150万人が移住を強いられたということは忘れられがちです。気候変動は紛争の種をまきますが、紛争が始まるとさらにひどい人々の移動を引き起こします。

 

2.どの地方が最も危険ですか?

気候変動の恐れがない地域はありませんが、避難を強いられる危険性が最も高いのは、災害が多く、人口密度が高く、十分な準備のための余裕や資源が欠如している国です。アジアでは、他のどの地域よりも自然災害が多く生じます。2015年には、突発的な災害によって避難した人の85%が東南アジアでした。たとえば、インド南部のタミル・ナドゥ州とアンドラ・プラデシュ州の洪水によって、180万人の避難民が発生しました。さらに、サイクロン・コメン台風やモンスーンによる洪水によってミャンマーで160万人、インドでは120万人が避難民になりました。

 
しかし、アジアの人口規模は世界全体で見ると最大です。人口規模を考慮に入れると、バヌアツとツバルは2015年に最大の影響を受けた国です。この2か国では、サイクロン・パムにより、それぞれの国の55%と25%の人口が避難しました。一般的には、気候変動に端を発するものを含め、災害と関連する避難を多く経験しているのは収入が最低またはそれに準じるクラスの国家です。

3.「気候変動難民」とは何ですか?

「気候難民」は紛らわしい言葉です。なぜなら、国際法では「難民」とは戦争や迫害から逃れ、国境を越えた人々のことを指すからです。気候変動は自国で暮らしている人に影響し、一般的には人々が国境を越える前に、国内避難民を生み出します。よって、「気候変動という文脈において避難している人々」と呼んだ方が望ましいと考えられます。

 

4. 今後、どれくらいの人が気候変動によって避難しますか?

何とも言い難いです。わかっているのは、避難の程度や厳しさは、各国が気候変動に向けて進めてきた準備がどれくらい影響を和らげられるかによるということです。準備の強化は、ぜひマラケシュで開催するCOP22の会合で取り上げてほしいテーマです。

 

5. パリ協定において、避難はどのように対処されますか?

パリ協定には避難と人の移動問題に関して、3つの重要な要素が含まれています。

  1. 協定の前文では気候変動は人類共通の問題であることが認識されています。また、移民についても前文中で言及しており、気候変動に対して措置を講じる際にはそれぞれの締約国が、とりわけ移民に対する責任を尊重し、促進し、配慮することを求めています。
  2. パリ協定は人の保護、コミュニティの統合、暮らしの重要性に対して様々に言及しています。これらは、水や食糧、エネルギー源へのアクセスや、家に住み続けられるための生活の条件といった、環境問題と関係する強制避難の根本原因に対処するための重要な入口となります。
  3. 最後に、パリ協定は、損失と被害のためのワルシャワ国際メカニズム下の専門家委員会に、避難に関する作業部会を設けるよう要求しています。この作業部会は「気候変動の悪影響に関連した避難を防ぎ、最小化し、対処するための総合的な取り組みの提言を発展させ」ます。これは避難の危険があることを認識し、気候変動を避難の要因ととらえる待ち望まれた考え方です。

 

6. UNHCRがCOP22に望んでいることは?

マラケシュで以下の事項への対処が協議されることを望みます。

  • ワルシャワ国際メカニズム下の避難に関する作業部会の成果が、うまく最適なタイミングで提供されるように十分なリソースが提供されること。
  • 人の移動が、各国が自主的に決定する草案のように、各国の政策に組み入れられること。
  • 各国家が災害によってすでに避難しているコミュニティのサポートに貢献し、未来の避難のリスクを減らすために行動を起こすこと。
  • 最も危険にさらされている人々の対応力を強化して、今住んでいるところにとどまることができるようにすること。
  • 最終手段として、人々を危険な場所から移動させるために、国々に技術的助言が提供され、対象となる人々との相談が十分になされること。

 
By: UNHCR

 
原文はこちら(英文)
Frequently asked questions on climate change and disaster displacement


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