テクノロジーで難民の避難生活を支える

公開日 : 2016-11-11

平均で十数年にわたることもある難民の避難生活。長期にわたる厳しい暮らしを支え続けていくには、個人の特定を行い、各々が置かれた状況を把握できる体制を整えたうえで、支援を続けていく必要があります。とりわけ、支援が届きにくいキャンプの外に住む難民の状況を正確に把握できるかどうかが、援助活動のカギを握っています。シリアの紛争以降、約65万のシリア難民が押し寄せ、うち8割以上が都市部で避難生活を送っているヨルダンではまさに、散り散りになって暮らしている膨大な数の難民の状況を把握し、支え続けていくためのシステムが求められていました。

都市難民の支援のカギ「虹彩認証」

ヨルダン・アンマンには都市難民の多くが暮らす

ヨルダンの都市難民の多くは粗末な部屋を借り、蓄えを切り崩しながら暮らしています。紛争下で配偶者や親を失った家庭も多く、長引く避難生活のなかで貧困状態に陥り、生活難を理由に紛争下のシリアに戻ることを検討する人もいます。このように、紛争から逃れてなお厳しい立場に置かれ続けている都市難民へのサポートの一環として、現金給付による支援が行われてきました。

同給付は個人宅への訪問を行い、各家庭の暮らし向きの厳しさを確認したうえで行われます。シリアの紛争前よりイラクから難民を受け入れていた同国では、かねてから都市に住むイラク難民に向けて、住居費や光熱費、食費など、家庭ごとに異なる支援のニーズに応える現金給付が行われていました。そのためノウハウの蓄積もありましたが、一方で大きな課題が残っていました。銀行のカードや暗証番号を付与する従来の給付の形では、難民が他国に移動する際にカードが譲渡されてしまうなど、給付決定後の個人の状況を把握することができませんでした。また、カードの紛失や暗証番号を忘れてしまうことにより、支援が滞ってしまうこともあったのです。

その日の暮らしにさえ困窮する日々に、終わりはまだ見えない

この問題を解決するために導入したのが、難民登録時の個人情報と紐づけて登録する虹彩認証の情報(指紋のように一人ひとり異なる両目の虹彩による生体認証)です。これにより、ATMに備え付けられた専用機で虹彩を撮影するだけで、個人の照合を行うことができ、給付を受けることができるようになりました。また、本人しか持たない虹彩データを利用したシステムだからこそ、難民がその月の暮らしに必要な支援を手にすると、情報がデーターベースに記録され、その人が無事に避難生活を送っていることを把握できるようになったことも特筆すべき点といえるでしょう。

虹彩認証は現在、ヨルダンに避難してきた難民がまずはじめに行う難民登録に導入され、それぞれの難民が置かれている状況を把握したうえで行う、細やかな支援に大きく貢献しています。UNHCRは、今後も援助活動を支えるインフラを整えるために新たな技術を難民支援の現場に導入し、より良い支援の形につなげていく挑戦を続けていきます。

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